- 2024/10/24 掲載
優良企業を見抜く指標「ESGリスク」とは?今注目すべき、競争力があって信頼できる5社(2/2)
1社ずつ概要・強み・今後の成長可能性をアナリストが解説
担当アナリスト:セス・ゴールドスタイン氏(CFA:米国証券アナリスト)
- 推定公正価値:225.00ドル
- スター評価(注4):5つ星
- 2024年9月17日時点の株価:89.82ドル
- 株価は60%割安
アルベマールは、世界最大級のリチウム生産企業である。リチウム業界では、需要の大半は電池によるもので、リチウムはエネルギー貯蔵材料として、特に電気自動車に使用されている。アルベマールは完全統合型のリチウム生産企業だ。同社の上流資源には、チリと米国の塩水かん水鉱床とオーストラリアの2つの硬岩採掘場があり、ともに合弁事業である。
アルベマールの財務状態は良好である。3月31日時点で経営陣が報告した純有利子負債/調整後EBITDA倍率は2.1倍で、経営陣の長期目標である2.5倍未満をやや下回っている。
リチウム価格の下落により、2024年のEBITDAは減少すると予測される。アルベマールは現在のリチウム生産能力拡大プロジェクトを完了させるため、2024年初めに23億ドルの転換優先株式を発行した。
この資金によって、アルベマールは現在の一連のリチウム成長プロジェクトを完了し、健全なバランスシートを維持することができるだろう。結果としてリチウム価格の下落が長期化しても、アルベマールは健全な財務状況を維持できるだろう。その結果、アルベマールは今後、配当金を含むすべての財務上の義務を果たすことができるはずだ。
最大のESGリスクは新たな規制の可能性である。規制によって臭素事業で排出量制限が行われることも考えられ、同社はコスト増を転嫁できないかもしれない。このリスクの確率と重要性は中程度である。
もう1つのリスクは、アルベマールの製品が環境への影響を理由に禁止される可能性で、これはかつて臭素事業で起きた事態でもある。このリスクの確率は中程度だが重要性は低いと見られる。アルベマールは単一の製品に依存しているわけではなく、かつて製品が禁止されたときの対処と同じく、新たな規制を満たすために製品を改変することも考えられるからだ。
リチウム事業の顧客がアルベマールに排出量削減を要求することも考えられる。この確率は中程度だが重要性は低いと見られる。すべてのリチウム生産企業が同じ要求の対象となるため、アルベマールはこのコストを転嫁できる可能性が高いからだ。──セス・ゴールドスタイン氏
担当アナリスト:マシュー・ドルギン氏(CFA)
- 推定公正価値:50.00ドル
- スター評価:5つ星
- 2024年9月17日時点の株価:23.27ドル
- 株価は53%割安
シリウスXMホールディングスは、2つの事業で構成されている。シリウスXMとパンドラだ。
シリウスXMは衛星ラジオネットワークを通じて、音楽やトーク番組、スポーツ、ニュースなどを、主に受信料を支払う消費者に対して配信しており、自動車と連携しているケースが多い。シリウスXMのラジオは米国でさまざまな車やトラックにプリインストールされている。シリウスXMのネットワークにある放送局のほとんどは独自のもので、ストリーミング音楽や地上波ラジオとの差別化を図っている。
私たちはシリウスXMホールディングスに対し、その衛星ラジオサービスのコスト優位性を根拠とし、無形資産と効率的な規模という要素の恩恵も含め、Narrowモート評価を与えている。
シリウスXMホールディングスは現在、シリウスXMとパンドラという2つの企業で構成されている。シリウスXMは2つの衛星ラジオネットワークを通じて、音楽やトーク番組、スポーツ、ニュースなどを、主に受信料を支払う自動車利用の消費者に配信している。同社のラジオは米国とカナダでさまざまなライトビークルにあらかじめインストールされている。
シリウスXMはまた、モバイル機器やコンピューターからアクセスできる、より広範なストリーミング版サービスも提供している。シリウスXMは2023年末時点で受信料を自己負担する顧客を約3400万人抱えていた。
同社にとってのESGのリスクは、コンテンツ制作とライセンス供与にある。メディア業界の同業他社と同様、シリウスも電波を通じて放送されるオリジナル番組やライセンス番組に関わるあらゆる問題に対して責任を問われる可能性がある。
さらに、シリウスXMとパンドラはともにリスナーへの音楽配信に依存しており、音楽レーベルやアーティストにロイヤリティを支払わなければならない。両サービスは比較的標準化されたロイヤリティ体系のもとで運営されているが、支払い不足の問題が、実際そうであるケースとそう認識されるケースともに発生することが考えられる。──マシュー・ドルギン氏
担当アナリスト:ブレット・ホーン氏(CFA)
- 推定公正価値:179.00ドル
- スター評価:5つ星
- 2024年9月17日時点の株価:112.07ドル
- 株価は37%割安
グローバル・ペイメンツは、決済処理およびソフトウェアソリューションの大手プロバイダーで、中小規模の加盟店へのサービス提供に注力している。同社は30カ国で事業を展開しており、収益の約1/4を北米以外、主に欧州とアジアから得ている。
2019年、グローバル・ペイメンツはトータル・システム・サービシズと全額株式交換により合併、トータル・システム・サービシズの株主は合併会社の株式の48%を取得した。この合併によってカード発行会社対応業務が加わった。
グローバル・ペイメンツのレバレッジは長期的に上昇傾向にあり、ハートランドとの合併後に急上昇した。経営陣は引き続きM&Aに力を注いでおり、レバレッジは非常に高い水準に保たれている。
しかし、トータル・システム・サービシズとの合併とその取引の全株式対象構造によってグローバル・ペイメンツのバランスシートはリセットされ、2023年末時点の有利子負債/調整後EBITDA倍率は4.1倍となった。
私たちは現在のレバレッジの水準を好感しているが、時間の経過とともにレバレッジは低下するだろう。今後もさらなる買収があると私たちは見ている。
会社の規模は大きくなっており、もしグローバル・ペイメンツが自社ソフトウェア製品の具体化をさらに進める必要があると判断するなら、合併後の会社がM&Aを続行する能力も大幅に高まるはずだ。
同社にとって最大のESGリスクはデータセキュリティだ。決済処理に携わるすべての企業がシステム侵害の可能性にさらされている。──ブレット・ホーン氏
担当アナリスト:ジュリー・アッターバック氏(CFA)
- 推定公正価値:93.00ドル
- スター評価:5つ星
- 2024年9月17日時点の株価:57.83ドル
- 株価は38%割安
CVSヘルスは多様なヘルスケアサービスを提供している。そのルーツは小売薬局事業であり、主に米国で9000以上の店舗を運営している。CVSは大規模な薬剤給付管理会社(ケアマークを通じて買収)でもあり、年間約20億の調整後請求を処理している。
また、トップクラスの医療保険会社(エトナを通じて買収)も運営しており、約2600万人の医療保険加入者にサービスを提供している。最近のオーク・ストリートの買収によってプライマリーケアサービスが加わり、既存事業との大きな相乗効果が期待される。
CVSの財務状態は2023年の買収後に高騰したが、同社はとりわけ堅実な投資適格の信用格付けを維持する意向であることから、今後も管理可能な範囲にあると私たちは考えている。
しかし、買収によって負債比率が定期的に上昇するため、投資家は経営陣の資本優先順位を注意深く見守る必要がある。たとえば、2018年後半にエトナとの取引が完了した後、同社の試算上の負債比率は約4.7倍となり、増配や自社株買いを控えたとはいえ、同社が目標とする3倍台前半から中盤まで負債比率を下げるのに数年を要した。
また、目標比率に到達後、CVSは医療サービスの買収(最も注目すべきはオーク・ストリート)を進め、負債比率は再び上昇した。負債比率を上昇させる買収を行い、他の資本配分活動を抑制することで比率を下げ、目標比率に到達後また最初からやり直す、というパターンをCVSが継続しても私たちは驚かないだろう。
CVSの主なESGリスクは、米国がいかにして誰もが利用できる安価な医療保険を実現しようと努めるかである。
今後10年間は、CVSが雇用者や政府支援によるプログラム(メディケア・アドバンテージやメディケイドMCOなど(注5))を通じて医療および医薬品給付を提供するというシナリオがそれ以外のシナリオよりもはるかに可能性が高いと私たちは見ている。
注5:メディケアとは、米国の高齢者向け公的医療保険。メディケイド・アドバンテージとは、財源によって4つに分類されるメディケアのプログラムのうちの1つ。メディケイドとは、低所得者向け公的医療保険。メディケイドMCOとは、メディケイドの運営を民間保険会社に委託したものを指す。
概して、2020年の選挙以降、起こり得る政策変更の影響は限られたもので、薬剤給付管理に対する規制強化など、短期的な変更はCVSにとって対処可能なものだと考えられる。──ジュリー・アッターバック氏
担当アナリスト:ハイメ・M・カッツ氏(CFA)
- 推定公正価値:28.00ドル
- スター評価:4つ星
- 2024年9月17日時点の株価:18.03ドル
- 株価は36%割安
カーニバルは世界最大のクルーズ会社で、2023年度末時点で92隻の客船を運航している。同社のブランドポートフォリオには、北米のカーニバル・クルーズ・ライン、ホーランド・アメリカ、プリンセス・クルーズ、シーボーン、英国のP&Oクルーズ、キュナード・ライン、ドイツのアイーダ、南欧のコスタ・クルーズなどがある。現在、P&Oオーストラリアのブランドをカーニバルに統合している。
同社はまた、アラスカとカナダのユーコンでホーランド・アメリカ・プリンセス・アラスカ・ツアーズを所有している。カーニバルのブランド群はコロナ禍以前の2019年に1300万人近くのゲストを集め、2023年に再びそのレベルに達した。
カーニバルは2024年5月末時点で現金と投資で約16億ドル、総流動性で約46億ドルを確保しており、マクロ経済の不確実性の結果として需要が軟化したとしても支障なく運営できる十分な流動性を確保していると私たちは見ている。
これは現在配備されている船団の現金需要に対応できるものである。パンデミック初期、カーニバルの現金消費は月5億ドル以上あった。パンデミックの発生以来、同社では多額の負債による資金調達で負債総額が約290億ドルとなり、2019年末時点の約120億ドルから大幅に増加した。
カーニバルの不確実性については、事業の循環的な性質を考慮しHighとしている。
カーニバルはコロナ禍を受けて改善された品質と安全管理を維持しているため、製品管理コスト上昇の可能性があり、私たちはこれを予測に織り込んでいる。
海事規則の変更もカーニバルの事業に影響を与える可能性がある。クルーズ運航会社は以前から硫黄排出量の削減を迫られていた。
発注済みの新造船の中には硫黄排出規制に適したLNG(液化天然ガス)を動力源とするものもあるが、世界的な規制が再び変更された場合、カーニバルは高コストの環境コンプライアンスの影響を受ける可能性がある。──ジェイミー・M・カッツ氏
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