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- 2024/02/27 掲載
戦後最大の重大局面、2024年春闘「賃上げ率7%」以下だと…未来は「絶望的」のワケ
加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。
賃上げはベアで議論しないと意味がない
春闘で議論される賃上げ率というのは定期昇給分を含んだ数字である。定期昇給というのは、年次が上がると自動的に賃金が上昇する分のことであり、これは当初から決まっていた数字であり、労働者にとって本当の意味での賃上げとはならない。昨年より賃金が上がったと労働者が実感するためには、賃金全体の底上げを行うベースアップ(ベア)が何%なのかが重要となる。今回、労働側は5%の賃上げを求めているわけだが、定期昇給分を除くとベアはおそらく3%程度にとどまると予想される。
去年の春闘の実績などから考え合わせると、この数字では労働者の生活は良くならない。少なくとも物価に賃金が追いつくためには、定期昇給分込みで7%程度の賃上げが必要となる。一部の優良企業はこうした現実を踏まえ、7%以上の賃上げを表明しているが、まだ少数にとどまっている状況であり、中小企業も含め大胆な賃上げが社会全体に広がるという状況ではない。
戦後の日本経済を通じても、今回ほど交渉結果が日本経済に大きな影響を及ぼす春闘はないと思われる。結果次第で、国内の個人消費はもちろんのこと、日銀の金融政策も大きく変わることになるだろう。7%賃上げのハードルが高いことは重々承知の上だが、それでも岸田政権は大企業に対して7%の賃上げを要請すべきと筆者は考える。
説明するまでもないことだが、賃上げの原資は企業が生み出した付加価値(財務会計ベースでは売上総利益、いわゆる粗利益)なので、理屈上、企業が儲からないと賃上げはできない。だが、利益が上がらないので賃上げを実施しないというロジックが30年も続き、日本人の賃金は著しく下がってしまった。
先日、日本とドイツのGDP(国内総生産)が逆転したことが話題となったが、このままの状態が続けば、人口が多いインドはもちろんのこと、ブラジルやインドネシアなどにも追いつかれる可能性が否定できなくなってくる。今回、大幅な賃上げを実現し、国内消費を拡大できるのかは、今後の日本経済における重大な岐路と言えるのだ。 【次ページ】日本の大企業は甘やかされている
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