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Web3やメタバース、光電融合技術(IOWN)といった次世代テクノロジーを利用するための環境が徐々に整いつつある。これらのテクノロジーが実装されれば、「よりリアルで没入感のあるデジタル体験」が実現できるといわれている。では、2025~2030年にどのような産業やサービスが産まれるのか? 国際大学GLOCOM 客員研究員の林 雅之氏、NTTドコモ 新事業開発部 担当部長の小田倉 淳氏、FinTech Journal 編集部の山田竜司(モデレーター)が予測した。
Web3の取り組みは町おこしにも波及
冒頭、モデレーターを務めた山田からWeb3・ブロックチェーン領域でのトレンドが紹介された。2023年は6月1日に改正資金決済法が施行され、法定通貨を裏付けとするステーブルコインが発行可能になった。10月には日本発デジタルアセットプラットフォームとして「Progmat」が設立され、同12月には、大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)が、デジタル証券を扱う日本初のセキュリティトークン取引市場「START」を開設している。
このように、リアルワールドでデジタルアセットが環境整備されるのと同時に、メタバースなどデジタル空間におけるWeb3についても総務省を中心に議論が推進されている状況だ。こうした状況を受け、Web3領域で環境の変化について問われた小田倉氏は、山形県西川町における取り組みを紹介した。
山形県西川町は、2023年、デジタル住民票をNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)によって発行した。NFTの保有者は、西川町のデジタル住民として「オンラインコミュニティー・メタバース空間での交流」などのさまざまなサービスを受けることが可能になるものだ。
小田倉氏は「自治体がビジョンを示し、共感する人がそれを応援する仕組みの一例だ」とした上で、「アイドルやキャラクターにとどまらず、地域や地域ブランドまでが“推し”の対象となり、町づくりを推進していく点に大きな期待を持っている」と話した。
小田倉氏が注目事例はもう1つある。それが北海道上川郡上川町だ。大雪山国立公園の北側に位置する上川町は層雲峡温泉を擁し、秋には「日本一早い紅葉」がみられる。小田倉氏は「人口3100人ほどの町に、地域課題の解決を目指した企業が続々とパートナーシップを結んでいる」と話した。
これは、世界的なアウトドアブランドのコロンビアやスノーピーク、上川大雪酒造、経済メディアのNewsPicks、オルタナティブスクールのインフィニティ国際学院、デザインカンパニーのグッドパッチなど、道内・道外の企業が上川町と密接な関係を結んで活動をしているものだ。そして、自身も町が主催する共創プログラムに参加した経験から「町づくりにおける中心が、観光以上に人であり、熱い思いが人から人へと波及し、地域外の人も巻き込んで好循環を生んでいることを実感した」と小田倉氏は話す。
このような町づくりの取り組みにメタバースが機能的に使われることにより、匿名性を生かしたコミュニケーションなどにより、町との接触頻度が増し、関係人口の拡大スピードは加速するということだ。
一方、林氏は、自治体におけるWeb3技術の活用事例として、岩手県紫波町における「ファン向けデジタル会員権」導入に向けた実証実験の事例を紹介した。
これはWeb3技術を活用し、共創におけるファンの貢献度を可視化するトークン発行を検証する取り組みでである。林氏は「スポーツや、いわゆる推し活などマーケティングだけでなく街づくりのファンコミュニティーとしてのWeb3活用の可能性が地方を中心に広がってきていると感じる」と話した。
ドコモと「Web3×メタバース」、NTTグループとIOWN
続いて、「Web3×メタバース関連で、注力している取り組み」について問われた小田倉氏は、ドコモのコミュニケーションサービス「MetaMe」を挙げた。
これは、新規事業創出プログラム「docomo STARTUP」から生まれたコミュニケーション空間で、企業の事業検証の場として提供しているもの。「ゆるい感じ」の見た目で親しみやすい世界観を醸成している。
自分の価値観を表現することで、価値観の近い人との接点を作ることができるのが特徴で「技術的には、メタバースとしては珍しい1万人規模の大規模空間で同時にやり取りが可能だ」と小田倉氏は話す。そして、「いくつかの自治体から、地域創生や、歴史文化の継承といった領域で共創の相談を受け、取り組みを進めているところだ」と話した。
林氏は、NTTグループが推進する「
IOWN構想」(Innovative Optical and Wireless Network)を紹介した。
IOWN構想は、通信ネットワークのすべての区間で光波長を占有することで「大容量」「低遅延」「低消費電力」を実現するAPN(オールフォトニクスネットワーク)や、光電技術などを活用した次世代情報通信基盤で、2023年3月からNTT東西で提供を開始している。
2030年には、低消費電力で電力効率100倍、大容量高品質125倍の実現を目標としており、林氏は、「現在、低遅延1/200をめざして取り組みを進めており、2025年大阪・関西万博では現行の進化版を提供予定だ」と説明した。
IOWNが実現することにより、「たとえば、光電融合デバイスなどで電力効率が100倍となれば、ブロックチェーン運用で消費される電力を軽減することはもちろん、1年間充電しないスマホが実現するかもしれないし、メタバースもより高速で低遅延で利用できるようになることが考えられる」と林氏は話した。
【次ページ】「次世代ライブ」「IOWNのロードマップ」「メタバース×Web3」
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