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- 2023/11/15 掲載
フィンテック企業「PhonePe」が挑む、グーグルによる「アプリストア独占」からの奪還
PhonePe、アプリストアでディスラプション
インドのフィンテックスタートアップPhonePeがグーグルの牙城に挑戦する取り組みを拡大しており、注目が集まっている。日本ではあまり馴染みのない企業だが、評価額は120億ドルに上り、インド最大のフィンテックスタートアップとして、国内だけでなく、米国でも動向が注視されている。
そのPhonePeが2023年9月末、Indus Appstore Developer Platformをリリース、グーグルが支配しているAndroidアプリ市場に変革をもたらすとの期待が高まっているのだ。
現在、インドのスマートフォン市場では、グーグルのAndroid OSが95%以上を占めており、アプリ展開もGoogle Playアプリストアに依存するところが大きい。一方、アプリ内課金に対し、15~30%の手数料が徴収されるなど、インド国内では不満が高まっているといわれている。
そんな中登場したのが、PhonePeによるIndus Appstore Developer Platformだ。
Indus Appstore Developer Platformは、Google Playに対抗するAndroid向けのアプリストア。PhonePeは現時点で、アプリデベロッパーに対するリスティング料金とアプリ内課金に対する手数料を徴収しないと述べている。
リスティング料金に関しては、1年後から少額のコストを徴収するモデルに移行する予定であるという。
PhonePeは、すでに独自の支払いアプリを展開し、インド国内に4億5000万人以上のユーザーを抱えている。今回リリースしたアプリストアは、サードパーティ支払いプロバイダーのサポート、インドで使用されている12の言語対応、インド国内の電話番号に対応したログインシステムなど、インド国内向けの機能が多数備わっており、インドのアプリデベロッパーの利用を促すものとなっている。
グーグルの営業時間が米国タイムゾーンを中心とするもので、Android関連のサポートが遅延するケースが多く、インドのアプリデベロッパーの間では不満と懸念が高まっている。一方、PhonePeは、同プラットフォームの展開にあたり、インド拠点のデベロッパー向けサポートチームを組織しており、国内デベロッパーを多数取り込む計画だ。
モバイル決済でもシェアを奪還するPhonePe
Flipkartの最大株主である米ウォルマートによると、FlipkartとPhonePeの関係は、eBayとPaypalの関係に非常に類似するものであるという。1998年に設立されたPaypalは、2002年のIPO直後にeBayによって買収されたが、2015年にeBayからスピンオフし、独立した法人になっている。
PhonePeのモバイル支払いシステムは、インド国立支払い公社(NPIC)によって開発された即時支払いシステム「統一支払いインターフェース(Unified Payment Interface=UPI)」上で運用されている。UPIは、インドにおけるオンライン取引で最も広く利用されている支払いネットワーク。インド国内における総デジタル取引に占めるUPIの割合は、2018~19年は23%だったが、2020~21年には55%に増加、その後も規模を拡大している。月間トランザクション数は、2023年5月に90億回を記録、さらに7月には99億回、8月には105億回に達したと報告されている。2023年会計年度におけるUPI上の年間取引額は、1兆7,000億ドルだった。
PhonePeは、上記のアプリストアだけでなく、このUPI上でもグーグルに挑戦を続けており、着実に市場シェアを拡大している。
UPI上における市場シェアは、2022年上半期、PhonePeが43%、グーグルが43%と拮抗する状態であったが、2023年4月時点の情報によると、UPI上のトランザクション価値で見た市場シェアは、PhonePeが50.47%、グーグルが34.94%と差が開きつつあることが判明した。 【次ページ】インドにおけるテック大手規制、グーグルに罰金も
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