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- 2023/03/09 掲載
金融機関が「メタバース参入に大苦戦する」といえる、ある「納得理由」とは
Web3.0が次の経済成長のエンジンと言えるワケ
2021年後半から「Web3.0」というキーワードが急速に広まり、社会や経済の構造そのものに大きな影響を与える概念として注目を集めている。2022年7月には経済産業省に「大臣官房Web3.0政策推進室」が設置されるなど、各省庁でもWeb3.0推進の動きが顕著になってきた。そんなWeb3.0について、KPMGジャパンWeb3.0推進支援部部長であり、有限責任あずさ監査法人の金融統轄事業部ディレクターである保木健次氏は、こう説明する。
「Web3.0は、基本的に定義できないものだと考えています。なぜならば、外縁が定まらないからです。構成要素から見て、パブリック型のブロックチェーンを基盤においた一連の機能群という言い方はできるでしょう。NFT・ステーブルコイン・暗号資産・セキュリティコインなどのトークンと、スマートコントラクトを活用したDeFi(分散型金融)・DAO(分散型自律組織)がWeb3.0の主な構成要素です。ただ、GameFiのようにこれらを活用したビジネスまで含めると外縁はどこまでも広がります。」(保木氏)
Web3.0が近年注目されるようになった背景には、ブロックチェーンの技術を活用することによって、分散化された情報移転システムが比較的容易に構築できるようになったことが挙げられる。ブロックチェーン上でスマートコントラクトを活用することによって、管理者を必要としない分散型の価値情報移転システムが可能になったのだ。
そして現在、経済成長のエンジンとして、Web3.0が政治の世界でも取り上げられるようになった理由を保木氏は以下のように分析する。
「パブリック型ブロックチェーン基盤の機能群にWeb3.0という名前がつけられ、ビットコインやイーサリアム以外にもトークンに資産を紐づける形でステーブルコインやセキュリティコインが登場しました。さらに、ノンファンジブルな機能を使って、NFTを商品として提供するなど、実際のユースケースが広がってきたことが大きいと言えるでしょう。経済成長の観点や地方創生の観点などから、政治の世界でも注目をされるようになったのだと考えています」(保木氏)
メタバースはまだまだ課題が山積み?
そんなWeb3.0とともに、現在注目を集めているのがメタバースだ。Web3.0とメタバースは同じ文脈の中で使われることも多いキーワードと言えるだろう。この2つの言葉の関係性について、保木氏はこう説明する。「Web3.0とメタバースとは別の概念ですが、親和性が高いと言えます。デジタルで完結している空間に人が集まり、経済活動が行われることを発展と呼ぶのであれば、メタバースは、パブリック型ブロックチェーンのトークンを活用する、あるいはスマートコントラクトを活用することによって、発展していくことになるでしょう。そしてその発展の過程で、メタバースはWeb3.0に近づいていく関係にあると考えます」(保木氏)
下の図はWeb3.0とメタバースの関係性を図で表したものである。
現時点では、日本国内においてメタバースが発展し、Web3.0に近づいたケースはそう多くはない。ゲームでの成功例はあるものの、まだ工夫の余地があるのが現状だ。「バーチャル渋谷」「バーチャル大阪」「バーチャルOKINAWA」など、現実の都市や地域に模したメタバースも登場しているが、まだサービスが本格化しているところまでは至っていない。
「メタバースは集客しないと、魅力的なサービスが出てきません。しかし、魅力的なサービスがないと集客ができないという、『ニワトリと卵の状態』になっているのが現状です。集客力では従来型のオンラインゲームにまだ分があります。ただ、自由な経済活動が行える空間ではないので、何かしらのブレイクスルーが次々と起こるような動きがメタバース側で必要だと考えています」(保木氏)
将来的には大きく発展することが予想されているメタバースだが、保木氏は、現時点ではまだ課題がたくさんあると話す。
「現実世界を模したメタバースは、新しく出てきたばかりで物珍しさはありますが、今は関心が高まって訪れる人がいる状態で、継続的に人が訪れるかは別問題です。ご当地を見るだけでなく、ご当地グッズが買えるなど、なんらかの経済活動が必要です。しかし、経済活動を持ち込もうとすると、規制との関連で課題が出てくるでしょう。法規制が整理されていない状態では、経済活動を行う仕組みを作るのが難しくなるため、現状では大きな壁があると考えます」(保木氏)
【次ページ】メタバースでのビジネス、金融機関が背負う大きな「ハンデ」とは?
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