- 2024/09/25 掲載
iPhone16で方針転換、アップルが生産拠点を「インド→中国回帰」させた根深すぎる理由(2/3)
一致したインド政府とアップルの思惑
2)インドの関税を回避する必要性インドは、スマートフォンなどの通信機器の輸入に対して20%の関税をかけている(2024年7月に15%程度に引き下げられた)。そのため、中国でiPhoneを生産してインドに輸出をすると輸入関税分高くなってしまう。
たとえば、今回発売されたiPhone 16のインドでの価格を、発表日の9月10日の為替レートでドル換算し、米国価格と比較をしてみると、iPhone 16は1.19倍にすぎないのにiPhone 16 Proでは1.43倍にもなる。
これは、iPhone 16はインド国内で製造できている(輸入関税が不要)が、Proは輸入せざるを得ないからだ。インド政府は関税を高くすることで国内製造拠点を作らせ、雇用を確保し、インド経済を発展させ、技術を学び取ろうとしている。
アップルは脱中国化を図り、インドに製造拠点を作ることで輸入関税を回避し、インドでの販売を拡大したいと考えている。その思惑が一致したのだ。
「サプライヤー一覧表」でわかる、アップルの「新・生産網」
3)地政学的なリスクの回避米中のデカップリング(分断)が進んでいる中、中国企業はいつ米国政府の制裁対象になるかわからなくなっている。サプライチェーンや製造を中国企業に過度に依存することがリスクになりつつある。
そのため、アップルの製造パートナーであるフォックスコンは2014年にインドに製造拠点を作り、2017年には同じく製造パートナーである「創維」(ウィストロン)、2018年にはフォックスコンも再度インドに製造拠点を作っている。この2社は、中国での生産も行っているが、台湾企業である点がポイントだ。
また、さまざまな部品を製造するサプライヤーも中国企業が多い。これもリスクになり得る。特にインドと中国は政治的な対立があり、インド政府はしばしば中国製品の輸入を停止したり、中国製アプリを使用禁止にすることがある。
このため、部品サプライヤーも脱中国化を図り、ベトナムへの移転を進めている。また、ベトナムに製造拠点があれば、今後経済成長をしてくる東南アジア各国への供給もしやすくなる。
つまり、アップルは、台湾系企業を中心にして、ベトナムで部品生産を行い、それをインドに持ち込んで製造し、中国の比重を徐々に下げていくという計画を進めている。
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