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  • 2024/09/24 掲載

始まった「歩道」争奪戦、Uberら「自動配送ロボ」で国交省が“仕様変更”のワケ

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歩道で食事宅配サービス「Uber Eats(ウーバーイーツ)」の自動配送ロボットが宅配をしているのを見たことがあるだろうか?実は、すでに今年3月から日本の一部エリアで始まっている取り組みだ。このような自動配送ロボットの普及を受けて、国土交通省(国交省)が7月末に実施したのが「歩行空間ネットワークデータ整備仕様」の改定だ。今後、歩道は人間とロボットが共有しあうのか、あるいは空間を奪い合う争奪戦となるのか。
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ウーバーの自動配送ロボサービスは東京・日本橋周辺から開始し、今後は対応エリアを拡大していくという
(写真:AP/アフロ)

「歩行空間ネットワーク」とは

 歩行空間ネットワークデータとは、歩道などの位置関係だけでなく道幅、段差、傾斜などの情報を一体化したデータ集のこと。具体的には、歩行空間の形に合わせてノード(結節点)とリンク(経路)を配置し、そこに属性としてノードの緯度や経度、階層数や、リンクの幅員や段差などの情報を含んでいる。

 国交省設置の検討委員会による2015年の提言をきっかけにデータ整備が動き出し、仕様策定のみならず、自治体向けガイドラインの作成や、各地での実証実験が進められた。2018年度のバリアフリー法改正により、各地でのバリアフリーマップ作成が進んだことにあわせ、歩行空間ネットワークデータも整備。実証実験などで集めたデータは「歩行者移動支援サービスに関するデータサイト」に登録され、オープンデータとして誰でも利用できるようになった経緯がある。

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歩行空間ネットワークデータのイメージ
(出典:国交省資料)

 また、歩行空間ネットワークデータの作成で実施する現地調査は、自治体などにおけるバリアフリーマップの作成作業で必要な調査と重複が多い。これを踏まえて国は2018年から、歩行空間ネットワークデータなどをベースに、施設や経路のバリアフリー情報を可視化する「バリアフリーマップ作成ツール」(作成ツール)を自治体に提供している。

 ただ、現状で公開されているデータは多くない。官公庁の施設や、実証実験が行われた地域、そして連携する一部民間事業者のバリアフリー情報にとどまっている。

すでに始まっている、ロボットの公道利用

 今回の仕様改定では、この歩行空間ネットワークデータの情報収集範囲を改めて拡大する方針が打ち出された。背景にあるのは、自動走行ロボットの普及だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大を機に非対面・非接触による宅配需要増が加速する一方で、物流業界の人手不足が深刻化し、自動配送ロボットの研究開発や実証実験が急ピッチで進められている。

 2022年には東京・赤羽エリアで自動配送実験が行われた。自動配送ロボットは従来、あらかじめ路面状況などを調査し、試験走行などで経路を決めた上で運行していた。しかしこの実験によって、出発前に目的地へのバリアフリー経路を自動的に導き出し、その経路を運行できる可能性が確認された。

 制度整備も急務だ。2023年4月の改正道路交通法の施行によって、一定の条件を満たすロボットが事前の届け出など条件つきで歩道を走行可能となった。そうした政策的な後押しもあり、2024年4月には、ウーバーイーツが、東京・日本橋周辺でAIによる自律走行型のデリバリーロボットを投入した。このほか、新たなビジネス参入を目指すスタートアップ企業も現れている。

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国は歩行空間ネットワークデータの利用拡大を目指している
(出典:国交省資料)

 とはいえ、ロボットの公道利用には課題が残る。ロボットがいざ走ろうとしても、その途中に予期しない段差や障害物があったり、肝心のデータが断片的だったりすれば、改めてルート策定する必要が出てくる。ただ、データがある程度新しいものであれば、仮にロボットが想定外の段差に出くわした際にも、目的地に到達するための別の経路を検索することができるはずだ。要するに効率的な運用を目指すためには、必要な最新の情報をできるだけたくさん、効率的に収集する必要がある。

 人間からも、ロボットからも、バリアフリー情報が求められつつある一方、それに応えられるデータ整備は進んでいない。そうした現状を打開する一手として国が打ち出したのが、2024年7月30日に実施した歩行空間ネットワークデータ整備仕様の改定だ。

 改定のポイントは3つある。 【次ページ】仕様変更の狙いは? 3つのポイント

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