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- 2024/08/29 掲載
堂島取引所「コメ指数先物」取引が始動、なぜ米の価格はこれほど上がったのか?
連載:山口亮子が斬る、インフレ時代の農業ビジネス
政治に大きく左右される米価の決まり方
買い占めが激化し、スーパーでは普通のコメより早く流通する早場米を入荷しても、すぐさま売り切れてしまう。棚がガラ空きになるのはまずいと、パックライスや切り餅を目立つ場所に置くのは当たり前。米びつに入れるトウガラシはまだ分かるが、苦肉の策で竹炭まで並べる店舗が出ている。ごはんと一緒に炊くとおいしくなるという説明書きがあったが、肝心のコメがないのだから何とも苦しい。
これだけ目に見える形でコメの需要が高まっては、価格は当然上がる。JAが生産者の出荷に際して支払う「生産者概算金」は、全国でつり上がっている。出荷の早い鹿児島の概算金は1万9,000円台で、前年に比べて6,000円高い。
あまりに高いので、米業界では農水省が概算金が上がり過ぎないよう介入するのではとの臆測が7月に飛び交っていた。現実はそうならず、農水省は静観を決め込んでいる。坂本 哲志農水大臣は7月19日の定例会見で次の発言をしている。
各産地における令和6年産米の概算金の設定状況等について、引き続き報道等を注視してまいります。私自身は、需給が引き締まっているということで、特段、これによってさまざまな対応をするというような状況にはないと思っています全国の産地が参考にするのが、関東の大産地で、早場米地帯である千葉の概算金だ。JA全農ちばは7月末、概算金を前年比60キロ当たり4,000円台の値上げと決めた。続いて発表されている米どころの概算金は、60キロ当たり3,000円台くらいの値上げとなっている。
この価格設定に、米業界の関係者からは「高いけれど、このくらいの値上がりで収まって良かった」とか「高くしないと、今年は農家がコメを売ってくれない」、「米価が上がる分、反動で消費が減るのが心配」といった声が聞かれる。
ここまで読んでお気づきかもしれないが、米価の決まり方は手探りで、その年の夏の雰囲気に左右される上、しばしば政治が介入する。今年の概算金にしても、なぜこの上げ幅なのか、正確に説明できる人はいないはずだ。
プライスメーカーは、コメの集荷率が全国平均で54%(2023年産米)にのぼるJA。その価格の決め方は不透明だと長年指摘されている。
コメ価格の指標がないという問題
米価が乱高下するたび問題視されるのが、価格の指標がないことだ。相場からしてはっきりしない。概算金は分かっても、JA以外の卸売業者や集荷業者による取引価格は明らかではない。JAが卸や小売にいくらで売っているかも分からない。
国産米には、青果や花卉(かき)のように自由に取引できる市場がない。集荷業者やJA全農などと卸売業者らとの相対(あいたい)取引がかなりの割合を占める。そのため、相場の把握に使われるのが、概算金や米穀業界紙が卸や集荷業者などに取材して作る相場情報のコーナー。ほかに農水省がJAや出荷業者などに聞き取り、公表している「相対取引価格」がある。ただ、公表されるのはリアルタイムではなく、半月以上の遅れがある。
繰り返しになるが、国内にはコメの相場を大きく映し出すような指標がない。このため、農家や業界関係者は、相対取引における米価を把握することに頭を悩ませてきた。 【次ページ】コメ先物復活の経緯とは…?
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