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  • 2024/04/26 掲載

働き方改革で「板挟み状態」…“働いてなんぼ”の建設作業員を待ち受ける厳しい現実

連載:2024年問題を迎えた建設業の“いま”

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建設業の2024年問題の期限を迎え、「工期設定」が厳格化された。しかし、工期や品質の順守が求められる現場にとって、適切な工期の見直しは容易ではない。さらに、時間外労働の上限規制によって、これまでのように作業時間の自由が利かなくなり、かえって働き方は難しくなっているという。こうした板挟み状態の中で、現場ではどのような問題が生じているのだろうか。発注者、元請業者、下請業者視点から建設業の現状に迫る。
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2024年問題を迎えた建設業界の今とは…
(Photo/Shutterstock.com)

2024年問題で厳格化された「工期設定」

 2024年4月1日、建設業界では時間外労働の上限規制が適用された。いわゆる「建設業の2024年問題」である。

 これにより、時間外労働については、原則「月45時間以内・年360時間以内」が限度となり、この規則を破った事業者は、罰則として「6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金」が科せられることになった。

 国は、これらについて「働き方を良くするための改革だ」と謳っているにも関わらず、建設業界では皮肉にも「問題」として取り上げられている。

 では、何が問題視されているのだろうか。その最大の懸念が「工期設定」だ。1人あたりの労働時間が短くなるということは、今までその日にできた作業が、翌日以降にまたがってしまう。そうなれば、必然的に工期を延長せざるを得ない。

 この対応において受注者は、建設工事従事者の長時間労働とならないように工事契約を締結する必要が迫られている。

 また、発注者側においても、施工条件の明確化を図り、週休2日の確保や長時間労働を前提としない適正な工期設定が必要となる。具体的には、時間外労働の上限規制や週休2日・4週8閉所を加味した工期設定だ。これらの変化は現場にどのような影響をもたらすのだろうか。

「見積り作成」が発注者の悩みの種に

 発注者の立場では、まず見積書の作成に頭を悩ませることになりそうだ。

 国土交通省は2024年3月29日に工期に関する新たな基準を公表した。内容としては、受注者側・発注者側の双方に、適切な人員や工程を踏まえた工期設定を行うように求めるというものだ。

 つまり、これまでより詳細な工事数量・施工数量の明示が必要になるのだ。その結果、従来に比べ見積り作成に手間と時間がかかり、事務作業が増加すると考えられる。

 また、見積り作成において、高度な専門知識を要求される場面が多くなるため、経験豊富な従業員に作成やチェックの負担が集中するだろう。

 さらに、契約後であっても安心はできない。複雑化した見積書を確認した際に、双方の意見がまとまらず工事の着手が長引く可能性もある。この状況を打開するには、時間をかけて社内教育を実施し、統一した見積書の作成や作成方法のマニュアル化を推進していくことが求められる。

工期設定を見誤ると「失注」の可能性も

 発注者は、積算書を基に設計するのに対し、元請業者は現場の視点も加味して見積書を検討する。現場によっては、見積り条件が複雑化し、工期設定が難航する可能性もある。

 また、実際の現場の状況は刻々と変化するため、見積り条件と現場の実情にズレが生じてくるはずだ。その結果、工事の手戻りや設計変更による契約などが発生し、コストと工期に影響を与えかねない。

 このように、限られた労働時間の中で見積りを基に適正な工期を設定しなければならないとなると、現場の作業員にも大きな負担を強いることになる。

 コンクリート打設を例に挙げると、この作業は、強度の関係から一気に打設することが望ましい。しかし、時間外労働に制限がかかると、従来のように深夜にわたって打設することが困難になる。そのため、何としても人員を確保し、短時間で打ってしまう工程を考えなければならない。

 とはいえ、コンクリートミキサー車の運転手の確保には特別な免許が必要なため、誰でもいいわけではない。人員確保に奔走している間に時間は刻一刻と過ぎていく。最悪の場合、人員が確保できず、施工できないといった可能性も否めない。

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時間外労働の規制や人手不足により施工ができない状況が生まれる場合も

 必要な作業の際に人手が確保できず、仕事を断らざるを得ない状況が多発すると、発注者から「この業者に頼んでも断られるな」といったレッテルを貼られ、今後の信用問題につながりかねない。信頼を失い仕事が来ないのではといった恐れもある。 【次ページ】“働いてなんぼ”の作業員には厳しい現実
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