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  • 2023/12/20 掲載

スマホの「修理できる権利」をどう守る? EUのバッテリー規制で変わること

連載:石野純也のモバイル最前線

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欧州連合(EU)は、スマートフォン(以下、スマホ)のバッテリーに関する新たな規制を導入する。それは、2027年までに交換可能なバッテリーの搭載を義務化するというものだ。かつての携帯電話(いわゆるガラケー)では、一般的であったバッテリー交換は、スマホの台頭により、非常に難易度の高いものとなった。今回の規制は、「修理する権利」の保障や環境負荷低減のための取り組みだが、この規制は現代のスマホや市場の競争環境にどのような影響を与えるのだろうか。

ケータイジャーナリスト 石野純也

ケータイジャーナリスト 石野純也

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スマホの中には、敷き詰めるようにバッテリーが内蔵されている。写真は筆者が修理事業者のiCrackedを取材したときのもの。同社はPixelなどの正規サービスプロバイダーだ
(出典:著者提供)

かつては一般的だった「バッテリー交換」

 EUが採択した規制が実施されると、スマホの“形”が大きく変わってしまう恐れがあり、各方面に大きな衝撃を与えている。スマホは、グローバルに展開するのが一般的であるため、いち地域のルールであっても、日本にその影響が及ぶ可能性も高い。直近では、アップルが欧州の規則に準拠するため、iPhoneにUSB-Cを採用したのがその一例だ。

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EUは、バッテリーに関する新たな規制を導入する。同域内で販売されるスマホは、バッテリー交換が可能なことが条件になる見込みだ
(出典:欧州理事会プレスリリース

 かつての携帯電話では、国内外問わず、バッテリーを交換できる仕様が一般的であった。今のデジタルカメラに近い形で、硬い樹脂で覆われたバッテリーパックを取り外しできるのがその仕組みだ。

 バッテリー交換が容易だったため、品質劣化時に交換がしやすいのはもちろん、普段から予備のバッテリーパックを持ち歩いておき、電池切れの際に交換するといったことも可能であった。この仕様が変わり始めたのは、スマホが台頭してからだ。

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フィーチャーフォンは、バッテリーパックが交換可能なモデルが主流だった
(出典:著者提供)

 中でも、iPhoneは3G非対応だった初代モデルから、バッテリーを内蔵式にしている。これに対し、黎明期のAndroidはガラケーの仕様を受け継いだ端末も少なくなかったが、徐々にバッテリー内蔵式に切り替わっていった。

 現時点で販売されている端末は、iPhone、Android問わず、そのほとんどがバッテリー内蔵式である。そのため、ユーザー自身でバッテリーを交換する難易度は非常に高く、キャリアやメーカーなどに修理を依頼する必要がある。

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iPhoneは、初代モデルからディスプレイとケースが一体化しており、分解しなければバッテリーを取り出せない仕様になっている。写真は現行モデルのiPhone 15 Pro
(出典:著者提供)

なぜ、今のスマホのバッテリーは外れないのか

 一般的に考えれば、バッテリーそのものを簡単に交換できたほうが、ユーザーにとってメリットは大きいように思える。あえて交換不可にしているのは、バッテリーの劣化による買い替えを促進するため……という見方もあるが、必ずしもそれは正しくない。どちらかと言えば、ユーザー体験を高めるために、このような仕様が採用されている。

 大きな理由の1つは、デザインやユーザービリティと安全性の両立だ。今のスマホに内蔵されているバッテリーは、リチウムイオンを採用している。柔らかいパックの中に、リチウムイオンの電解液を詰め込んでいるものが一般的だ。

 このバッテリーパックは柔軟性が高く、薄いスマホの筐体の中に搭載しやすい。一方で、バッテリーパックは柔らかく、簡単に破損してしまう。ユーザー自身が取り出した際にうっかり傷をつけると、発火してしまう恐れもある。

 パックの素材を硬くし、安全性を高めることもできるが、それだと十分な容量を確保するのが難しくなる。iPhoneはバッテリー容量非公開だが、最新モデルのiPhone 15 Proで3650mAhのものを搭載していると言われれている。より大型のiPhone 15 Pro Maxだと、その容量は4422mAhにのぼる。

 一般的に、Androidのほうが容量が大きい傾向があり、5000mAhを超える容量の端末も少なくない。こうした大容量が実現できているのは、今のようなバッテリーパックを使っているからだ。 【次ページ】アップルがアピールする「修理のしやすさ」

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