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- 2023/12/20 掲載
スマホの「修理できる権利」をどう守る? EUのバッテリー規制で変わること
連載:石野純也のモバイル最前線
かつては一般的だった「バッテリー交換」
EUが採択した規制が実施されると、スマホの“形”が大きく変わってしまう恐れがあり、各方面に大きな衝撃を与えている。スマホは、グローバルに展開するのが一般的であるため、いち地域のルールであっても、日本にその影響が及ぶ可能性も高い。直近では、アップルが欧州の規則に準拠するため、iPhoneにUSB-Cを採用したのがその一例だ。かつての携帯電話では、国内外問わず、バッテリーを交換できる仕様が一般的であった。今のデジタルカメラに近い形で、硬い樹脂で覆われたバッテリーパックを取り外しできるのがその仕組みだ。
バッテリー交換が容易だったため、品質劣化時に交換がしやすいのはもちろん、普段から予備のバッテリーパックを持ち歩いておき、電池切れの際に交換するといったことも可能であった。この仕様が変わり始めたのは、スマホが台頭してからだ。
中でも、iPhoneは3G非対応だった初代モデルから、バッテリーを内蔵式にしている。これに対し、黎明期のAndroidはガラケーの仕様を受け継いだ端末も少なくなかったが、徐々にバッテリー内蔵式に切り替わっていった。
現時点で販売されている端末は、iPhone、Android問わず、そのほとんどがバッテリー内蔵式である。そのため、ユーザー自身でバッテリーを交換する難易度は非常に高く、キャリアやメーカーなどに修理を依頼する必要がある。
なぜ、今のスマホのバッテリーは外れないのか
一般的に考えれば、バッテリーそのものを簡単に交換できたほうが、ユーザーにとってメリットは大きいように思える。あえて交換不可にしているのは、バッテリーの劣化による買い替えを促進するため……という見方もあるが、必ずしもそれは正しくない。どちらかと言えば、ユーザー体験を高めるために、このような仕様が採用されている。大きな理由の1つは、デザインやユーザービリティと安全性の両立だ。今のスマホに内蔵されているバッテリーは、リチウムイオンを採用している。柔らかいパックの中に、リチウムイオンの電解液を詰め込んでいるものが一般的だ。
このバッテリーパックは柔軟性が高く、薄いスマホの筐体の中に搭載しやすい。一方で、バッテリーパックは柔らかく、簡単に破損してしまう。ユーザー自身が取り出した際にうっかり傷をつけると、発火してしまう恐れもある。
パックの素材を硬くし、安全性を高めることもできるが、それだと十分な容量を確保するのが難しくなる。iPhoneはバッテリー容量非公開だが、最新モデルのiPhone 15 Proで3650mAhのものを搭載していると言われれている。より大型のiPhone 15 Pro Maxだと、その容量は4422mAhにのぼる。
一般的に、Androidのほうが容量が大きい傾向があり、5000mAhを超える容量の端末も少なくない。こうした大容量が実現できているのは、今のようなバッテリーパックを使っているからだ。 【次ページ】アップルがアピールする「修理のしやすさ」
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