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- 2023/11/13 掲載
iPhoneを追撃するPixelの「爆発的ヒット」、Androidビジネスの勢いに拍車をかけるのか
連載:石野純也のモバイル最前線
iPhoneとAndroid、異なるビジネスモデルとは
ひとくくりにスマートフォンとして語られがちなiPhoneとAndroidだが、それぞれが成り立つためのビジネスモデルは大きく異なる。iPhoneは、アップル自身がOSからチップセット、ハードウェアまでを一気通貫で手がける垂直統合型なのに対し、Androidは水平分業で、OSはグーグル、チップセットはクアルコムやメディアテック、端末メーカーはサムスン、ソニー、OPPOにシャオミといった形で、各社が協力体制を敷いてスマホを開発している。
一方で、Androidにも“例外”がある。それが、グーグルの手がけるPixelだ。10月には8世代目となる「Pixel 8」「Pixel 8 Pro」が発表され、生成AIを取り込んだ機能が話題を集めた。
Pixel 8はキャリア各社も、下取りでの大幅な割引きを展開しており、販売に力を入れていることがうかがえる。日本では、グーグルがスマホ販売でシェアを急速に伸ばしており、世界各国の中でも特に販売は好調。Pixel 8/8 Proも、その勢いに拍車をかける端末として注目されている。
水平分業で成り立っていたAndroidだが、PixelはOSを開発するグーグル自身の端末である。ハードウェアとソフトウェアを同一の会社が開発し、その中心にグーグルのAIを据え、この3つを融合させようとしている。
Pixelに最新のAI機能を実装できた理由
元々、ハードウェアの開発を得意とする企業ではなかったグーグルは、Pixelシリーズやその前身となるNexusシリーズの開発も外注していた。韓国LGエレクトロニクスや中国ファーウェイ、台湾HTCなどのメーカーが、それを担っていた格好だ。ところが、グーグルは18年にHTCのPixel部門を約11億ドルで買収し、ハードウェアの開発部門を、自社に取り込んでいる。
Pixelの開発が加速したのも、その後のことである。21年には、スマホの頭脳とも言えるチップセットの自社設計にも舵を切り、「Pixel 6/6 Pro」に「Tensor」を採用した。
以降のPixelは、いずれもチップセットは自社製のTensorを継続して搭載しており、上記のPixel 8/8 Proでは最新の「Tensor G3」にアップグレードされている。
TensorはAI処理に強いチップセットと言われているが、それを自社設計に切り替えたことで、いち早くPixel上に最新のAI機能を実装できている。
たとえば、Pixel 6/6 Proでは写真の写り込みを自然に消す「消しゴムマジック」に対応。Proモデルで定評のある高倍率ズームも、単にレンズの焦点距離が長いだけでなく、デジタルズームをAIで補正する「超解像ズーム」に対応している。
最新モデルのPixel 8/8 Proでは、編集マジックや、集合写真の顔を複数の写真から合成するベストテイクに対応。動画の音声から、特定の音の音量だけを調整する「音声消しゴムマジック」にも対応している。
暗視カメラのように暗い場所でもクッキリ写真が写る「夜景モード」も健在しており、ハードウェアとしてのカメラ性能が上がり、撮れる映像のクオリティーはさらに上がっている。
さらに、アップデートでの対応になるが、Pixel 8 Proでは「動画ブースト」が利用可能になる。
これは、動画の色や粒度などをAIで補正する機能。暗所でのクオリティーを大幅に上げることも可能になる。
こうした機能の一部はクラウド上で提供されているが、グーグルによると、いずれもTensor G3との連携で実現したものだという。スマホというハードウェアはもちろん、チップセットレベルからソフトウェアと連携をさせることで、ほかのAndroidにはない機能を実現しているというわけだ。 【次ページ】Pixelのヒットが与えるAndroidへの「悪影響」とは
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