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日本の4輪モータースポーツのトップカテゴリーとなる「スーパーフォーミュラ(全日本スーパーフォーミュラ選手権)」。1973年にスタートした「全日本F2000選手権」をルーツに持ち、これまで中嶋悟氏をはじめ、鈴木亜久里氏、片山右京氏、小林可夢偉氏など、数多くの日本人F1ドライバーを輩出してきたほか、ミハエル・シューマッハ氏など、世界のトップドライバーたちも数多く参戦してきた。そんな伝統あるスーパーフォーミュラが今、さまざまな危機に直面しているという。国内有数の自動車レースの運営に何が起きているのか。
「スーパーフォーミュラ」が抱える大問題
現在、スーパーフォーミュラは大きな危機に直面している。モータースポーツ人気の低迷やスポンサー依存などの脆弱な財務体質、関わるスタッフの高齢化などだ。また、コロナ禍もイベント運営そのものに大きな打撃となっていた。
生成AIで1分にまとめた動画
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そうした中、スーパーフォーミュラを主催する日本レースプロモーション(JRP)では、2021年より
「SUPER FORMULA NEXT50」(ネクストゴー) というプロジェクトをスタートさせた。これは、1973年にスタートした日本のトップフォーミュラカテゴリーが、2023年に50年を迎えるにあたり、現状の問題点を打破し、「次の50年」の発展を目指す取り組みだ。
スーパーフォーミュラでメディアオフィサー(広報)をつとめるJRPの上坂勝美氏は、次のように語る。
「モータースポーツ業界は、なかなか世代交代ができていませんでした。それは、チームも観客もすべてです。お客さまは、40~60代のいわゆるセナプロ対決の世代の方々が、ずっと支えてきてくれました。しかし、その下の層が、非常に薄かった。それはチーム側も同様です。ですから、自分たちできちんとビジネスできる環境を整え、若い人にもどんどん入ってきていただきたい。次の世代につなげるということが、次の50年に非常に重要で、ネクストゴーに込めた思いです」(上坂氏)
なお、ネクストゴーの取り組みは、中嶋悟前会長の下、2021年にスタート。ある程度の枠組みが整ってきたタイミングで、2023年に近藤真彦新会長による体制で推進されることになった。
スーパーフォーミュラが挑戦する「3つの課題」
ネクストゴーの取り組みの柱となっているのが、「カーボンニュートラルへの挑戦」「デジタルシフト・エンターテイメント性の強化」「競技人口の増加・業界人材の育成」の3つだ。
このうち、「競技人口の増加・業界人材の育成」は、時代に関係のない普遍的なテーマと言えるものである。
やや遠回しの話になるが、近藤真彦氏が真っ先に打ち出したのは「家族で楽しめるイベント」にすること。
富士スピードウェイで7月15日~16日に行われたシリーズ第6戦は、『
スーパーフォーミュラ夏祭りin FUJI MOTORSPORTS FOREST 』と銘打ち、夏祭りらしく、ストライダー、ラジコン、ゴーカートなどのアトラクションを提供したほか、ファミリー向けの優待券を販売する、15歳以下を入場無料にする、などの観客動員施策を導入した。
その結果、この第6戦は前年比1.5倍となる3万3000人が来場し、15歳以下は前年比3倍以上となる6800人が来場するなど、「観客が一気に若返った」ことになる。子どもたちに生のレースを見せて、将来、モータースポーツに興味を持ってもらいたいという意向は明らかだ。
一方、残りの2つは、まさにこの時代ならではの課題と言える。
まず「カーボンニュートラルへの挑戦」としては、たとえばレーシングカーの車体やタイヤへの天然由来かつリサイクル素材の活用、カーボンニュートラル燃料の採用などが実施されている。
これはハードウェア中心の開発となるため、地道なテストを繰り返した上で着実に採用を進めているという。2023年シーズンより導入された新型車両「
SF23 」が、その成果の1つとなる。
【次ページ】観客を増やす“ある打開策”とは
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