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  • 2022/09/15 掲載

ネットゼロへマッキンゼーが語る「成長戦略」、銀行の前に広がる6つの成長機会とは

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マッキンゼー・アンド・カンパニーは、日本の銀行業界の成長戦略に関する調査レポート「銀行の進化:日本の未来の繁栄に向けて」を発表した。これは、日本政府の「成長戦略実行計画」を踏まえて取りまとめられたもので、同レポートでは銀行セクターがこの計画に基づいて重要事項への取り組みを拡大することで、銀行業界の総収益が2021年を基準として2030年までに450億米ドル増加する可能性があると指摘している。ここでは、その概要を同ファーム東京オフィス 金融グループのパートナー 竹村 和昭 氏が解説する。
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マッキンゼー・アンド・カンパニー 金融グループのパートナー 竹村 和昭 氏も執筆する
「銀行の進化」に関するレポートの内容とは
(出典:マッキンゼー 報道発表)

※本記事は、マッキンゼー・アンド・カンパニーが2022年8月に開催した報道発表会の内容を再構成したものです。

レポートにおける3つのキーメッセージ

 マッキンゼー・アンド・カンパニーが発表したレポート「銀行の進化:日本の未来の繁栄に向けて」は、日本の銀行業界の今後10年の成長機会、成長にテーマにしています。日本の経済成長の大きな機会がどこにあるのかという分析から始まり、6つの成長機会を取り上げ、これに対して銀行が貢献することで、結果として自行の増収・成長にもつながることを示しています。国の経済成長への貢献と自行の成長の双方の実現を目指す「デュアルミッション(二重の使命)」をコンセプトの中核に掲げて分析している点が特徴です。

 「デュアルミッション」を踏まえていただいた上で、このレポートのキーメッセージは3つあります。1つ目が、国の経済成長と銀行の成長共に、まだまだ日本国内に大きな成長の機会があるということです。これは日本国内においても、非常に大きい成長機会、先ほど申し上げた6つの成長機会があるのではないかという点です。

 2つ目が、6つの成長機会に全力で銀行が取り組んだと仮定した場合、銀行にとっての増収のポテンシャルが、今後10年で450億米ドル程度に達する可能性があるという予測です。現状の日本の銀行における収益プールの約25%程度の規模ですので、相当大きな成長機会です。

 3つ目は、この成長機会を実績にしていくのは簡単ではなく、非常に険しい道のりであるという点です。実現するためには、新たな「ケーパビリティ(実行能力)」の構築・強化が必要です。この部分で大きな投資を成し遂げた銀行が、この競争において優勢を築いていくことになるでしょう。

日本のマクロ経済情勢

 日本の経済成長の機会を捉える上で、現在の日本のマクロ経済環境を整理します。

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日本のマクロ経済情勢
(出典:マッキンゼー 報道発表)

 1つ目は日本国のバランスシートについてです。日本はGDPに対する総資産比率が最も高く、他国に比べてバランスシートは非常に大きいのが特徴です。今後10年の国としての経済成長、銀行としての成長を考えると、まだまだこの大きいバランスシートを使って潜在的にGDPを伸ばして増収につなげる機会があると考えられます。

 また、GDPに対する家計の預金高が他国に比べて高いのも特徴です。家計の現預金にとどまっている資産を銀行が主導して解き放つことに成功すれば、経済成長につながる非常に大きな後押しになるといえます。

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日本の純資産はGDPの約23倍。比較対象10カ国の平均18倍を上回る
(出典:マッキンゼー 報道発表)

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日本はGDPに対する家計の預金高が非常に高い
(出典:マッキンゼー 報道発表)

 次に、サステナビリティについてです。日本政府は「ネットゼロ」を2050年の目標に掲げています。各企業、各業界がエネルギートランジション(エネルギー転換)へ計画的に投資することによってネットゼロを目指します。その投資規模をマッキンゼーのサステナビリティ研究グループが分析したところ、2050年までに年間平均3,300億ドル規模と推定されています。

 非常に大きい金額なのは確かですが、その金額は日本のGDPの5%を切る水準です。他国でまったく同じ分析をすると、軒並み5%を超えます。日本のGDPの大きさ、強さを鑑みると、毎年平均して3,300億ドル程度、エネルギー転換へ投資することは、ある程度吸収可能な水準にあると考えています。

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日本は他の市場と比較して、脱炭素化の実現に必要な金額の対GDP比率は低い
(出典:マッキンゼー 報道発表)

 したがって、各業界、各会社がこの3,300億ドル規模の投資を正しい領域に実行することが、国の経済としての成長力につながります。ただし、投資の仕方によってはエネルギーコストにも影響を及ぼしますので、この投資を正しく行っていくガイドの役割を誰かが果たすことが重要となってきます。

GDPを年率0.3%押し上げ、邦銀に450億米ドルの増収をもたらす6つの成長機会

 次に6つの成長機会の中身を見ていきましょう。まずは、前提としての規模感を確認します。仮に国として6つの成長機会に全力で取り組んだとすると、大きい試算としては30ベーシス(0.3ポイント)ほど名目GDPの年間成長率を引き上げるインパクトが潜在的にあります。

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重要な日本のテーマと進化する銀行の役割
(出典:マッキンゼー 報道発表)

 この経済成長を実現して、かつそこに対して銀行、金融機関が意味のある重要な役割、貢献をしたと仮定すると、450億米ドルぐらいの銀行としての収益プールの向上効果があると思います。

 これは足元、成り行きで予測されている成長の約2.7倍が、6つの成長機会に取り組むことによって期待できるということです。

 ここからは、次の6つの成長機会について見ていきたいと思います。

【次ページ】日本の銀行が「サステナビリティ」において貢献できること
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