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  • 2022/09/01 掲載

「2022年資金決済法等改正」のポイントとは? 弁護士が分かりやすく解説

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2022年6月3日に改正資金決済法(正式には「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」)が成立しました。本改正は、資金決済法や犯罪収益移転防止法、銀行法などの改正を含むものですが、大きな柱になるのが、(1)電子決済手段等(いわゆる「ステーブルコイン」)への対応、(2)高額電子移転可能型前払式支払手段への対応、(3)銀行等による取引モニタリング等の共同化への対応の3点です。本記事では、そもそも資金決済法とは何かについて概説した上で、本改正のポイントを解説します。お聞きしたのは、金融庁での業務経験も持つ、弁護士の小宮俊氏です。
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2022年資金決済法等改正とは?改正のポイントをわかりやすく解説します

2022年資金決済法等改正とは

 2022年6月3日に改正資金決済法(正式には「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」)が成立し、同月10日に公布されました。施行期日は「公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日」とされています。

 本改正は、資金決済に関する法律(以下「資金決済法」)や犯罪による収益の移転防止法(以下「犯収法」)、銀行法等の改正と多岐にわたりますが、本改正のポイントは大きく分けて下記の3点となります。

(1)電子決済手段等(いわゆる「ステーブルコイン」)への対応(電子決済手段等取扱業等の創設)
(2)高額電子移転可能型前払式支払手段への対応
(3)銀行等による取引モニタリング等の共同化への対応(為替取引分析業の創設)

 ここからは、そもそも資金決済法とは何かを概説したうえで、今回の改正のポイントを解説していきます。


そもそも「資金決済法」とは?

 本改正の内容を理解するためには、そもそも資金決済法とは何かを知っておく必要があるでしょう。資金決済法が施行されたのは2010年4月。資金決済法が施行された背景について、小宮氏は次のように解説します。

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中央総合法律事務所
弁護士
小宮俊氏
「背景としては、情報通信技術の革新やインターネットの普及などにより、銀行が提供する従来のサービスとは異なる新たなサービスが金融業のリテール分野を中心に普及、発達してきたことが挙げられます」(小宮氏)

 具体的には、利用者保護と資金決済システムの安全性・効率性・利便性の向上のために、さまざまな規制が設けられました。

 その後、累次の改正を経て、現在、資金決済法の主な規制対象とされているサービスは、「前払式支払手段の発行業務」、「資金移動業」、「暗号資産交換業」及び「資金清算業」の4つです。

 ここからは、それぞれが具体的にどのような事業なのか、またどのような規制があるのかを解説していきます。

資金決済法の対象事業(1):前払式支払手段

 前払式支払手段とは、商品・サービスの代価の弁済等に使用されるものであって、発行者に対してあらかじめ対価を支払うことによって発行される支払手段をいい、発行形態は、「紙型(商品券、ギフトカード等)」、「磁気型(テレホンカード)」、「IC型(交通系ICカードなど)」、「サーバ型(Amazonギフト券など)」があります。

 資金決済法上、前払式支払手段は、発行者と商品・サービスを提供する主体との関係性よって、自家型前払式支払手段と第三者型前払式支払手段に区分されており、どちらに該当するかによって、参入規制を含めた規制態様が異なります。

 『自家型前払式支払手段』は、商品・サービスの提供者と前払式支払手段の発行者または発行者の密接関係者が同一の場合に限って、当該商品等の提供者によって提供される商品・サービスの代価の支払等に使用できるものをいいます。

 一方、『第三者型前払式支払手段』は、自家型以外の前払式支払手段をいう。具体的には、商品・サービスの提供者が前払式支払手段の発行者と資本関係等のない第三者(加盟店)の場合に、当該加盟店の提供する商品・サービスの代価の支払いに利用することができる前払式支払手段をいいます。

 このように、「自家型前払式支払手段」と「第三者型前払式支払手段」に分類されている理由は、それぞれの影響力の違いにあります。

「第三者型は、その発行者が、商品・サービスの提供者である加盟店に対して代金を支払うことになるため、 発行者の信用力がより強く求められます。そのため、第三者型のほうがより厳しい規制が課されています。具体的には、発行額の多寡に関わらず、財務局長・支局長からの登録を受ける必要があります。一方、自家型は、特に登録などを受けず発行することができ、発行後、基準日(毎年3月31日、9月30日)における未使用残高が一定の額(1,000万円)を超えた場合に、財務局長・支局長へ届出すれば足ります」(小宮氏)

資金決済法の対象事業(2):資金移動業

 資金移動業とは、銀行等預金取扱金融機関以外の者が為替取引を業として行うことです。資金移動業は資金移動の形態によって、下記のような形態に分かれます。

  • 営業店型
    営業店型は店舗で送金し、別の店舗で受け取る形態です。

  • インターネット・モバイル型
    インターネット・モバイル型はPayPayやLINE Payなど、インターネット上のアカウントを通じて入金と受取をする形態です。

  • カード・証書型
    カード型はアカウントに送金して、カードで引き出す形態です。

 キャッシュレス時代に対応した、利便性が高く安心・安全な決済サービスに対するニーズに応えるべく、資金移動業は2021年施行の改正資金決済法で、さらに第一種資金移動業者、第二種資金移動業者、第三種資金移動業者に類型化されました。

 2021年施行の改正資金決済法のポイントについて小宮氏は、「第一種は認可制で送金額の上限がありません。第二種は従来どおり、登録制で100万円以下の送金を行えます。第三種は登録制で、5万円以下の送金を行うことができます。第三種は、第一種や第二種と異なり、利用者資金について、分別した預貯金等で管理することをもって、供託等に代わる手続きとすることができます。さらに、いわゆる収納代行のうち、『割り勘アプリ』のように実質的に個人間送金を行う行為について、資金移動業の規制対象であることが明確化されました」と話します。
■小宮氏のワンポイント解説
ちなみに…法令上「為替取引」の定義が規定されていないこともあり、為替取引の意義については長い間、議論が行われています。そのため、過去の判例などから、「為替取引」の定義を考える必要があります。

平成13年3月12日の最高裁での判例によると、「顧客から隔地者間で直接現金を輸送せずに、資金を移動する仕組みを利用して、資金を移動とすることを内容とする依頼を受け、これを引き受けること、またはこれを引き受けて遂行すること」と判示されています。つまり、この定義に当てはまるかどうかで、資金移動業の登録が必要かどうかを判断することができる、というわけです。

資金決済法の対象事業(3):暗号資産交換業

 暗号資産交換業とは何かを理解するためには、まず暗号資産と暗号資産交換業を理解する必要があります。

 暗号資産は、資金決済法ができた2010年の時点では「仮想通貨」という名称で呼ばれていましたが、2020年に施行された改正資金決済法では「暗号資産」に名称が変わっています。詳しい定義について、小宮氏は次のように解説します。

「暗号資産とは、物品の購入やサービスの提供を受けた弁済のための支払い手段として活用できる財産的価値のうち、日本の通貨、外国の通貨、ならびに通貨建て資産は除くものと定義されています」(小宮氏)

 その上で、暗号資産交換業は、以下のとおり定義されています。

「暗号資産交換業とは、暗号資産の売買、ほかの暗号資産との交換、売買交換の媒介取次代替、暗号資産の管理などを行う事業です。暗号資産交換業に係るAML/CFT及び利用者保護のルールを整備するため、2017年に施行された改正資金決済法により登録制が導入されたほか、犯罪収益移転防止法改正により口座開設時における本人確認義務が課されるようになりました」(小宮氏)

 その後、顧客の仮想通貨の流出事案の複数発生や、価格が乱高下し、仮想通貨が投機の対象になっているとの指摘等を受け、2020年に施行された改正資金決済法では、仮想通貨の呼称を暗号資産に改めるとともに、利用者資産の原則オフライン管理(コールドウォレット等)など、仮想通貨流出リスクへの対応に係る義務が盛り込まれました。また同じタイミングで、金融商品取引法の改正も行われ、暗号資産を用いた証拠金取引やICO等の新たな取引に金商法の規制対象になることが明確化されました。

資金決済法の対象事業(4):資金清算業

「資金清算業とは、為替取引に関わる債権債務を精算するために、銀行等の間で生じた為替取引に基づく債務を精算する業務を言います。免許制ですが、現在では全国銀行資金決済ネットワーク、いわゆる全銀ネットが唯一の資金精算機関です」(小宮氏)

 ここからは、今回の改正の3本柱である、「ステーブルコインの規制」「電子ギフト券等のマネロン対策の強化」「マネロンの共同監視システムの規制」について、関係する事業者と、規制の内容について解説していきます。

【次ページ】改正のポイント(1):ステーブルコインの規制
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