- 会員限定
- 2022/08/03 掲載
米国以外でも強まるテック系スタートアップの「大解雇」、欧州・東南アジアの現状
米国以外でも確認されるスタートアップのレイオフ拡大
米国のテック界隈ではこのところ、新規雇用の抑制・レイオフが急増しており、その動向は米国メディアの注目の的となっている。7月26日にはEコマースプラットフォームの「ショッピファイ」が全従業員の10%にあたる、1000人を削減すると発表した。メディア報道の多さから、このトレンドは米国特有のものという印象が強くなっているが、欧州や東南アジアにも波及するグローバルな性格を帯びたトレンドだ。
たとえば、欧州地元メディアの調査によると、域内で雇用を抑制しているスタートアップの割合は32%、新規雇用を凍結した割合は29%と、半数以上が何らかの雇用抑制対策を実施していることが判明している。
一方、東南アジアでは、シンガポールのEコマーススタートアップSea傘下のShopeeがレイオフを実施しているほか、StashAwayやCrypto.comといったフィンテックスタートアップでもレイオフが進められていると報道されている。さらに東南アジアではマレーシアのiPrice、インドネシアのJD.IDなどでもレイオフが実施されている。
以下では、米国以外の市場ではどれほどの規模で雇用抑制やレイオフが起こっているのか、欧州と東南アジアに注目して、その現状を探ってみたい。
欧州の状況、評価額6兆円超えKlarnaでもレイオフ
まず欧州の現状をみていきたい。欧州最大のスタートアップ、Klarnaの状況が域内のスタートアップ事情を物語っている。
Klarnaは、スウェーデン発のフィンテック企業。昨年6月に、6億3,900万ドル(約868億2,400万円)を調達し、評価額が45億6,000万ドル(約6兆2,109億円)に達したとして話題となった企業だ。CBInsightの世界ユニコーン企業ランキングでは、世界5位に位置している。
今、このKlarnaに対する市場の逆風が強まっており、人材の10%、約700人がレイオフされると報道されている。
レイオフと同時に、不況を乗り切るための資金を確保することが多くのスタートアップに求められるところ。Klarnaでも資金調達計画がなされているが、ブルームバーグなどの報道によると、この状況で資金調達をした場合、評価額は現在の45億6,000万ドルから30億ドルに下がってしまう可能性があるという。
欧州最大のスタートアップが苦境に直面しているが、域内の他のスタートアップを取り巻く状況も厳しくなっている。
欧州のスタートアップ事情に詳しい地元メディアSiftedが域内スタートアップを対象に実施した調査によると、新規雇用を抑制しているとの回答割合は32%以上、また雇用を完全に停止したとの回答割合は29%と2/3ほどの企業が雇用に消極的になっていることが判明した。
テック株の低迷に加え、ベンチャーキャピタル(VC)からの要請により、成長ではなく利益率や生産性を優先するスタートアップが増えたためだという。
Siftedの調査は、レイオフが多い部署に関するデータも抽出している。
【次ページ】東南アジアの注目スタートアップでもレイオフ
PR
PR
PR