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  • 2022/02/02 掲載

オープンハウスが目指す“スーパーアプリ”への道、「PayPay」を目標にしたワケ

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異業種参入が続く金融サービス分野だが、東京、名古屋、福岡を中心に不動産業を展開するオープンハウスの100%子会社おうちリンクは2021年8月、住信SBIネット銀行と銀行代理業委託契約を締結して銀行代理業許可を取得しフィンテック事業を展開すると発表した。オープンハウスグループ 取締役副社長を務め、オープンハウス おうちリンクで代表取締役を務める鎌田和彦氏に不動産事業の今後の展望、金融業参入に対する考えを聞いた。
聞き手・構成:編集部 山田 竜司
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オープンハウスグループ 取締役副社長
オープンハウス 代表取締役
おうちリンク 代表取締役
鎌田 和彦氏


オープンハウスの金融事業がスタート、その手応えは?

──2021年8月にライフラインの電気やガス、インターネット回線をワンストップで申込みできるアプリケーションである「おうちリンク」、その決済を担う「おうちバンク」の事業がスタートしました。現在の手応えをお教えください。

鎌田和彦氏(以下、鎌田氏):「一度売れば終わる」住宅から、お客さまと継続的に関係性を持つために始めたのが「おうちバンク」「おうちリンク」などのサービス業ですが、おうちリンクを通じて当グループとお客さまの関係性が継続することで、お客さま側からご意見をいただくことも可能になった点に手応えを感じています。

画像
おうちバンク、おうちリンク
(出典:オープンハウス 報道発表)

 現在では、苦情や不満点をより伝えてもらうための環境が構築できました。たとえば建物の不具合などをスムーズに伝達してもらい、当社の修繕やメンテナンスを迅速に対応できるようになりました。

 また、建物の経年劣化や不具合は当然起きることがあります。それらについての苦情や不満などがおうちリンクアプリを通じて伝わることで、リフォームの検討にもつながります。リフォームの提案やリフォームに伴うローンも最適な条件で提供可能です。すべての住まいの問題をおうちリンクアプリで解決できる状態が徐々に形成されつつあります。

 もちろんクレームも含めて対応することは増えましたが、それは当社にとっては「負」ではなくむしろお客様のニーズを広げるためにも良いことだと考えています。逆に、どういう解決策を当社のアプリやサービスで実現できるかというヒントをいただいています。こうした関係性は非常に有効だと思います。

 現在、おうちリンクのアプリから得た情報をもとに開発部門やカスタマーサポート部門と連携して対応しています。その多くが建物の不具合やネットの接続に関することです。建物に関するサポート案件は建築部門との連携が圧倒的に多いですが、今後はそれ以外の問題解決を支援する機会も増えると思います。

──他の不動産事業者も銀行代理業の委託契約に参入することも可能ですが、自社の金融事業の差別化ポイントをお聞かせください。

鎌田氏:おうちバンクやおうちリンクは基本的に当社の商品を購入された方に限定して提供しています。現在、年間1万棟超の新しいお客さまがいらっしゃる状態なので、まずはその方々に対してサービスを提供しています。

 第2段階として、過去に当社の住宅を購入されたお客さまに対してサービスを提供し、第3段階では、グループ事業会社の住宅事業のお客さまに提供する予定です。まだ構想の域を出ないのですが、次の第4段階ではプラットフォームを外販することを検討しています。当社がプラットフォームを構築するまで2年の構想時期があり、資源投入の結果、ようやくサービスインできました。

 このプラットフォームの構築においては、それなりの体力が必要になると実感しました。住宅を購入された方にサービスを提供し続けるという仕組みを作ることそのものが大変なことです。たとえば、中堅・中小規模の不動産会社で当社のプラットフォームを使いたい場合に広く開放したいと考えています。

 「おうちリンクのサービスの外販によって、プロフィットはシェアする」という基盤ビジネスを展開したいです。どれくらいのビジネスになるかは未知数で時間がかかると思いますが、プラットフォームを充実させて利用価値を高められれば、必ずニーズはあると踏んでいます。

プラットフォーム提供を見据えた展開

──お客さまとの関係性を継続的に保つため、住宅販売の現場でも「保証年数」を長くするような施策が増えていると感じます。そういった施策とは、本質的に違う点は何でしょうか。

鎌田氏:「毎日見てもらえるサービスの仕組みを作ろうとしているかどうか」だと思います。当社のサービスは「電気やガス、ネットにいくら使ったか」「自分の住宅ローンの支払いはどういう状況か」などを確認することができます。

 また、住宅にまつわるサービスを受けた履歴も把握できます。具体的には「床のコーティングの実施時期」「防蟻の対応時期」「外壁の塗装」「給湯器の更新期」などさまざまなサービスがあると思います。

 当社は住宅を販売することで、家族構成などお客さまの機微な情報にも触れる機会があります。そうしたライフプランに合わせて、お子様がもう間もなく小学校入学などの場合は学資保険や学資ローンなどを提案する機会が考えられます。

 仮にそうしたサービスに加入されると、それ以降も経年的なデータが全部蓄積されるようになります。それらのデータを自分で確認したり、日々見ることができるサービスにしていかなければいけないと思います。要するに「10年後のリフォームを前提に積立をしよう」など、日々の場面でそうした情報と接点を持ち続けることの難易度は高いです。

 電気、ガス、ネットなどの料金は月に一回ぐらい確かめてもらえる可能性が高いので、日々見てもらえるコンテンツをたくさん用意してサービスをどんどん増やしていくことが大事だと思います。

 実際、当社サービスの状況を確認すると、1人当たり週1回程度はアクセスしてくださっています。こうしたサービスの連携例としては、会計アプリが挙げられます。当社がその機能を作りこむのは難しいので、既存のサービスと連携した方が早いですよね。そうしたことも上手にやっていきたいと思います。

「組み込み型金融」に取り組む理由

──「エンベデッドファイナンス(組み込み型金融)」への関心が高まっていますが、こうした潮流をどう捉えられるか、お考えをお聞かせいただけますか。

鎌田氏:ものすごく理解しやすい事柄だと思います。最近の若い人たちはよくデビットカードを使うと聞いたことがあります。「なぜデビットが必要なのか」と最初は理解できなかったのですが、「クレジットカードが嫌だ」ということです。特に若い世代は即時決済の方がよくて、銀行口座にあるお金の範囲の中で生きていくという話を聞いて感心しました。

 一方で、SBI NEOBANKではデビットカードによる後払い方式の構築も進めています。デビットカードでも金利やリボなしで後払いができて、その方がお客さまが使いやすいようだという話を聞きました。その時も「ああ、なるほど」と思いました。自分の口座残高の範囲内で生活することをお客さまが実感できる方法がデビットカードの後払いサービスだということです。

 こうした後払い方式という点で、「BNPL(Buy Now, Pay Later:後払い決済サービス)」の世界的な潮流が生まれています。BNPLを「利用者に支払いを意識させない」エンベデッドファイナンスの一部と定義するならば「なるほど」と思います。我々も結局、デビットカード発行に取り組むことを検討しています。物理的なカードを発行すると大変なこともありますが、顧客ニーズがあるなら検討する価値があります。


【次ページ】不動産会社や住宅会社が簡単に参入できるとは思わない
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