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- 2022/01/28 掲載
オープンハウス代表 鎌田和彦氏に聞く「不動産業とDX」、“難しい”フィンテックに挑むワケ
コロナ禍で不動産業界はどう変わった?
──コロナ禍での不動産ビジネスの現状をどう捉えていますか。鎌田和彦氏(以下、鎌田氏):多くの方が「ステイホーム」していたことで、あらためて「家」について考えることが増えていると思います。また、低金利が続いているので、財政状況的には住宅を買いやすい環境にあると捉えています。住宅ローンの借り入れがしやすいこともあり、住宅産業は大変好調に推移しています。産業全体が非常に好調で、当社も直近期の2021年9月期決算は良好です。その要因の1つが、主に戸建ての販売が非常に好調であることですね。
私が考える顧客インサイトは、コロナの影響を受けて自宅で過ごす時間が増え、より過ごしやすいご自宅環境を求められている点です。
当社の主力商品は戸建て販売です。国内では少し落ち着きを見せていますが、ウイルス感染がよりセンシティブであった時期は、マンションの場合は特定多数の方が出入りすることについて、自分の家族以外との接触機会が増えてしまうことを考慮して、戸建てを選好されることもあるようです。
また、戸建てがマンションに比較してお求めやすい状況もあったと思います。ただ、マンションが売れていないというわけではなく、当社ではマンション事業を含めて売れ行きは良好な状況です。
今までとは違う環境にあるからこそ、より安定を求めるための基盤として住宅を購入することもありそうです。賃貸でお住まいであれば、「このままの賃貸でいいのか」とか「居をしっかりと定めたい」「根を下ろしたい」と考えられた方も多いでしょう。
不動産業界で「DX」より大事なもの
──御社は純粋に家を提供する戸建てやマンションなど以外にも幅広く事業を展開されています。多くの業界がDX(デジタル変革)を進める中、不動産産業ではどのようなDXが必要だとお考えですか。鎌田氏:消費者向け不動産業界におけるDXの第一歩は「細部についてどれだけデジタル化が進むか」という話だと認識しています。そのため、DXに取り組むことで、画期的で今までとまったくビジネスモデルが違うことが実現するというのはあまりイメージが沸いていません。むしろ小さな改善、デジタル技術を使った細かい改善をどれだけ積み上げられるかが大事だと考えています。
そういった意味で、まず当社では実際に成果を上げやすい領域からデジタライズにしっかり取り組んでいます。現状でもたとえば、事務工程の簡素化や、今まで二度手間、三度手間だったことを一度で済ませられるほか、お客さまとのコミュニケーションをスムーズに完結できるなど、非常に細かい要素でのデジタル活用が特に進んでいると感じます。
また「マイソク(物件概要・間取り・契約情報が入った広告)」と呼ばれるチラシをごく簡素な方法でお客さま用に仕上げ直すことや、お客さまとのメールでの情報交換を非常にスムーズかつ妥当なものに切り替えることなどに注力しようとしています。お客さまのニーズや属性に合わせた情報を自動的に提供し、もしお客さまの関心があれば、「面会予約」をすぐにできるようにすることも考えられます。
さらに家を建てる仕事を同時並行で進める際にお世話になる職人の方々の労務管理や工程管理のデジタル化についてはアンテナを張っています。職人の皆さんのITリテラシーはさまざまですが、スマホ上で現状の進捗状態を確認し、近隣の方への留意事項や配慮点などの情報連携がスムーズにできるかということも重要です。
IT活用という点で、従来、多層構造において中間にあったものを取り除くようなプラットフォームを手掛け、直接職人の方々とつながる役割を担うことも部分的には生じるかと思います。
ただ、やはり不動産業からすると建築業が多階層的であるということは変わりません。その多階層構造を前提として、施主である当社、あるいはお客さまと、現場の職人の皆さんが一気通貫で個別具体的に結び付くかというと、なじまない部分もあると思います。IT活用によって、業界構造がドラスティックに変わることは今のところ想定していません。
【次ページ】オープンハウスが「難しい」金融事業を開始した理由
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