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  • 2021/07/30 掲載

金融庁や広島銀行、東大が語る「地域金融のDX」、データよりも大事なものとは

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新型コロナ禍が広がる中、日本中の企業でDXが迫られており、それは構造不況と言われる地域金融機関にとっても例外ではない。地域金融機関と地方経済にとって再生のきっかけを生み出すチャンスだとも考えられる。その実現のために、どのような点に着目してDXを推進すべきなのか。金融庁の日下 智晴氏、ひろぎんホールディングス社長・広島銀行頭取の部谷 俊雄氏、Global Mobility Serviceの中島 徳至氏、東京大学大学院経済学研究科の柳川 範之教授らが語り合った。モデレーターは日本経済新聞社の滝田 洋一氏。
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地方金融とDXの関係とは
(出典:FIN/SUM 2021)
※本記事は、2021年3月16〜18日に行われた「FIN/SUM 2021」での講演内容をもとに再構成したものです。一部の内容は現在と異なる場合があります。肩書は当時のものです。

コロナショックが規制緩和の効果を増大する

 金融庁の監督局で地域金融企画室長を務める日下 智晴氏は、2020年に世界を襲った“コロナショック”に触れ、「金融庁が20年間にわたって使ってきた金融検査マニュアルが2019年12月をもって廃止になりました。その直後にコロナショックが起きたことは、歴史の偶然ではあるが今後大きな意味を持ってきます」と切り出した。

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金融庁
監督局 地域金融企画室長
日下智晴氏
(出典:FIN/SUM 2021)


 金融庁が2019年に公開した「金融仲介機能の発揮に向けたプログレスレポート」では、地域金融機関が今後、地域経済に対して発揮してほしい機能・役割を論じている。

 人口減少や少子高齢化が進み、地域経済圏における資金需要の減少も懸念される中、融資だけの競争で限られた顧客を奪い合うことは地域金融機関・地域経済のためにならないこと、融資“以外”の顧客ニーズに対して地域金融機関が応えられる持続可能な新しいビジネスモデルの必要性について示唆していた。

 日下氏は、そのヒントの1つとして、石川県でのコロナ融資の手続きにおけるDX事例を紹介した。

「2020年でのコロナ融資は、膨大な数の融資をこなす必要がありました。従来の制度融資では、金融機関の職員が窓口に行き、融資を申請した事業者の売り上げが減少したことを認証してもらい、金融機関へ戻って手続きをした後、今度は書類を信用保証協会に送って保証審査を依頼する、そういう手続きをしていたのです。これを手作業で行うのは、とてもじゃないができません」(日下氏)

 そこで石川県が立ち上がり、県と信用保証協会と地元の各自治体、そして金融機関を巻き込んで、コロナ融資の特別認定保証プロセスを電子化した。

「実際に行ったのはテクノロジーとも呼べないほど本当に簡単なことで、書類をPDF化してファイル共有しただけ。しかしこれによって、地域金融機関職員の生産性がはるかに上がり、極めてスピーディな融資が可能になった。特別認定保証の手続きに120分かけていたのが5分で済むようになり、申請から融資までの全体の時間も半分以下に短縮しました」(日下氏)

 日下氏は、「資金繰り支援が一巡した今、まさに本業をどのように支援していくかというフェーズに入っている」と続ける。

 企業が生産性を向上させるには、「業務効率改善」と「付加価値創出」の2つの道筋がある。これは銀行も同じで、この2つの道筋のどちらにも作用するのがDXである。

 「そのために必要なのが規制緩和であり、金融庁は2016年以降、ものすごい勢いで規制緩和をしてきました。具体的には、地域商社やIT化を支援する会社、銀行業務と高度化等会社を幅広く認めてきましたし、コンサルティング機能、人材派遣、そういったこともどんどんと認めてまいりました」と日下氏はアピールした。

非金融ビジネスへ手を広げる広島銀行のケース

 その規制緩和がもたらす結果の一例として捉えられるのが、広島銀行のケースだ。広島銀行は2020年10月、持株会社体制へと移行した。持株会社としてひろぎんホールディングスを設立し、広島銀行はその傘下の1社となった。同時に、これまで広島銀行の子会社だった4社を、持株会社の直接出資会社として再編した。

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ひろぎんホールディングス社長
広島銀行頭取
部谷 俊雄氏
(出典:FIN/SUM 2021)


 広島銀行の頭取であり、ひろぎんホールディングス代表取締役社長となった部谷 俊雄氏は、その狙いをこう語る

「銀行を中心として140年余り営業してきましたが、従前の銀行法に定められた銀行業務だけでは、今後地域にとって貢献する分野が極めて限られるのではないかという思いがあり、持株会社制へ移行しました。『お客さまに寄り添い、信頼される<地域総合サービスグループ>として、地域社会の豊かな未来の創造に貢献します』という、新たに定めた経営ビジョンは、すなわち金融業から地域総合サービスグループへの転換を意味します」(部谷氏)

 このために、ひろぎんITソリューションズ、ひろぎんエリアデザイン、ひろぎんヒューマンリソースという“非金融”の3社を2021年に入ってから設立し、グループに加えた形だ。中でも、ひろぎんITソリューションズについては、銀行自身のDXを推進するのと同時に、「地方の中小企業の方々に対して、トップラインの向上、新しいビジネスモデルの創出、業務効率化などの観点でDXを支援させていただく」と意欲を示した。

【次ページ】金融包摂型フィンテックと「地域金融DX」のポイントとは?
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