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- 2021/05/13 掲載
改めて直面「オンライン就活の難しさ」、採用支援サービス会社に聞いた新卒採用動向
1979年山形県生まれ。東海大学大学院文学研究科修了。自動車部品メーカー退職後、有料メルマガのライターを経て、コンサルティング会社のライター、マーケティング広報の兼務を10年間継続。その後一部上場企業の広報などを経て、2019年よりシニアジョブ広報部部長。その傍らフリーライターとして活動。IT、ビジネスニュース、労働問題、医療福祉、SDGsなどの分野を扱う。
コロナ禍で「なんとなく」が失われて広告勝負に
コロナ下の2020年、採用現場では、実際にどのような影響が出て、どのような対応が取られたのか、新卒採用サービスを提供する企業の声を聞いてみた。まず、話を聞いたのは、青山学院大学の学生の身でありながら、2021年1月に企業向けの新たな新卒採用サービスの提供を開始したミギナナメウエ 代表取締役社長の古鍜冶 賢氏だ。
古鍜冶氏は学生起業家としてイベント企画などを手掛ける会社を立ち上げたが、同じ学生としてコロナ下における周囲の友人たちの就職活動を見る中で、学生が会社を探しにくくなっていると感じたという。
対面で会社の説明を聞きに行き、大学のOBの声を聞くといったような「場」がコロナによって消えたことで、「学生は企業を探さなければならなくなった」と、古鍜冶氏は言う。「しかし、企業の採用ページの求人情報には、同じようなことしか書いていない」と続ける。
古鍜冶氏の言うように、求人情報では職種、給料、福利厚生、勤務地、選考フロー、応募書類など、テンプレートどおりの項目が並び、内容が違うだけだ。大手求人サイトに出稿した場合は、まさしくテンプレートとなり、同じデザインの項目に内容を埋めていくだけになる。
確かにいくら社風や求める人物像など文章でアピールできる部分に工夫を凝らしても、業種や職種、エリアなどでの検索で、大手の著名企業に混ざった中小ベンチャーはアピールしきれるものではない。
面接ではどの学生もしっかりした志望動機を用意しているが、実際に企業を選ぶにあたっては「なんとなく」の要素も大きいことを古鍜冶氏は指摘する。それだけに企業と学生が「なんとなく」出会う機会である合同企業説明会、「なんとなく」知ってからより詳しくお互いを知るためのインターンやOB訪問などがコロナで失われたことのダメージは大きい。
学生だけでなく採用企業へのマイナスも大きいと古鍜冶氏は指摘する。学生が「なんとなく」目を止めるきっかけが失われたことで「広告勝負」の要素が強まり、結果的に大企業ほど広告費をかけられない中小・ベンチャーが苦しくなっているという。
一方で、コロナ下の状況がチャンスとなっている企業もあるとのこと。これまで、地方の企業は都市部に比べて圧倒的に不利だったが、コロナ禍でオンライン面接やテレワークが一般的になったことで、都市部や他地域の優秀な学生を採用できるチャンスが巡ってきているという。
とはいえ、それでも都市部の大企業の優位性は揺るがないし、それだけ有利な都市部の大企業であっても、少なからぬ企業がコロナ禍によって新卒採用への大きなマイナスを受けている。
地方学生の影響は都市部よりも深刻
もう一人、同じく新卒採用サービスを提供しているスポーツフィールド 体育会事業本部 事業企画室長の久保谷 友哉氏にも話を聞いてみた。久保谷氏も古鍜冶氏と同様、コロナの影響によって2020年の新卒採用市場から、企業と学生のリアルな接点が失われたことを指摘する。
スポーツフィールドは体育会系の学生に特化した人材紹介や就活サイトなどを提供する新卒採用サービスの会社であり、新型コロナウイルスの感染拡大までは全国各地で合同企業説明会などのイベントを開催してきたが、2020年はそれらの説明会も多くがオンラインへと変更を余儀なくされた。
スポーツフィールドでは「説明会を迅速にオンライン化した」といい、それによって学生や企業への影響を最小限に食い止めたそうだが、こうした急な企業説明会の中止やオンライン化に巻き込まれた学生や企業の戸惑いの声は決して少なくなかったともいう。
特に地方の学生への影響は都市部よりも深刻だったと久保谷氏は振り返る。
地方の学生はそもそも企業との接点が都市部より少ない。地方では企業数も少なく企業説明会が開催される機会も少ない上、都市部の企業に応募したり、都市部で開催される説明会に参加したりするハードルも高い。そこにイベントが中止となり、県境を越える移動の制限が呼びかけられるなどしたため、地方の学生は輪をかけて就活が不利になったという。
もっとも、スポーツフィールドではコロナ禍前から地方の学生が就活で不利となっていることを認識していて、地方への拠点展開や説明会の開催を強化していたこともあり、それもあって説明会を中止ではなく、迅速にオンライン化したという。
しかし、コロナ禍に関係なく学生との「アナログな関係性」を重視しているスポーツフィールドとしては、説明会が軒並みオンライン化した2020年は、歯がゆい思いをした1年であったようだ。
ミギナナメウエの古鍜冶氏が、企業の求人情報の文章を「同じようなことしか書いていない」と断じ、学生が今一番難しいと思っていることに「(企業の)情報を探すこと」を挙げたように、スポーツフィールドの久保谷氏もまた、最近の新卒就職サイトを中心に展開される就活では「アナログな関係性」が希薄になり、学生も企業もそれを求めていると考えているそうだ。
久保谷氏とスポーツフィールドが「アナログな関係性」を重要視しているのはコロナ禍以前からであるが、コロナ禍で就活が急速にデジタル化・オンライン化したことで、2020年は過去もっとも「アナログな関係性」を構築しにくかった1年になった。
これもまたミギナナメウエの古鍜冶氏と同様の所感になるが、スポーツフィールドの久保谷氏もコロナ禍によって広告費をふんだんに使える大企業を除いた中小・ベンチャー企業ほど、新卒採用への影響が出やすかったと見ている。両氏ともに、コロナ禍は特に中小・ベンチャー企業と学生との接点を奪ったと考えているわけだ。
【次ページ】新卒一括採用は変わる?企業探しの方法も変革
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