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  • 2021/05/11 掲載

bitFlyerやLayerX、JDDが語るブロックチェーン、なぜ「20年前のECと同じ」なのか

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新型コロナウィルス感染症の世界的なパンデミックによって、リモートワークやペーパーレス、オンライン営業などビジネスモデルや働き方を変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが加速している。その中で改めて注目を集めているのがブロックチェーンだ。ブロックチェーンがもたらすビジネスの進化や産業、社会のあり方の変化について、bitFlyer Blockchain 代表取締役の加納裕三氏、LayerX CEOの福島 良典 氏、Japan Digital Design CTOの楠正憲氏(モデレーター)が語った。
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2025年、ブロックチェーン市場はどのようになっているのか
(出典:blockchain conference btokyo ONLINE 2021)

※本記事は、2021年3月のN.Avenue主催イベント「blockchain conference btokyo ONLINE 2021」での講演内容をもとに再構成したものです。

ブロックチェーンの普及は「監査可能なデータベース」から

 「分散型台帳」として改ざん耐性を備えるブロックチェーンは、データの信頼性を高く保てる特性から送金や決済などの金融領域だけでなく、不動産や物流、小売、医療などさまざまなビジネス領域での活用が期待されている。

 福島氏は「グローバルでもブロックチェーンの『トランザクション型DB』としての特性を活用するケースが増えており、プロダクトを開発する際の技術選択の1つにブロックチェーンが挙げられるようになってきた」と述べる。

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LayerX CEOの福島 良典 氏
(出典:blockchain conference btokyo ONLINE 2021)

 さらに、2年ほど前の“過剰な期待”の時期を経て、さまざまな企業でPoC(概念実証)の取り組みが進んだ結果、「技術特性が明らかとなり、今後3~5年で『ブロックチェーン』ということは特に言及されなくなるほど定着するのではないか」と話した。

 加納氏は、ブロックチェーンの進化は、仮想通貨から始まった既存金融、通貨制度に対するチャレンジから始まったとの見解を示した。そして、仮想通貨の中核技術としてのブロックチェーンの最終的な姿は「DAO」(Decentralized Autonomous Organization:自律分散型組織)にあるとする。

 DAOは、意識決定を担う中央集権的な組織や人物の代わりにルールが存在する。このルールに基づいてプロトコルが「自動化された運営」を実行する。「究極的には、ブロックチェーンによって人を介在せずに、コンピューター同士が会話を行い、問題を解決してサービス提供する世界がやってくると思う」と話した。

 こうした話を受け、楠氏は「ブロックチェーンの可能性を感じる一方、普及はどのあたりから進んでいくか」と問いかけた。

 これに対して福島氏は、「監査可能なデータベースがあること」と「その周辺のブロックチェーンによる自律的なプログラム」の組み合わせによって大きな価値観の変化が起きるとした。そして、「監査性のあるデータ」が社会にどんなインパクトを及ぼすかを考えた際、トランザクション型のDBという特性から現実的にユースケースはたくさんあると述べた。

 たとえば「電子投票」である。これまで選挙の投票は、投票所に行って投票用紙に記入していた。この投票行為が正しく選挙結果に反映されたかどうかは「選挙管理委員会が正しく集計したということに対する信用」がベースとなっている。

 電子投票で実現しようとしているのが「投票、集計というプロセスが、正しく行われたことを、ブロックチェーンによる分散台帳によって、誰もが検証可能な状態にすること」だという。ブロックチェーンという仕組みに対する信頼性がベースとなることで、「今まで人を介して時間がかかっていたプロセスが、機械的にチェックできるためスピードアップできる」効果が得られる。そこから大きな変化がもたらされていくのではないかと福島氏は述べた。

普及へは「透明性とプライバシーの確保」がテーマ

 楠氏は「2024年からマイナンバーカードを在外邦人も持つようになる」と述べ、在外邦人向けの行政サービスとして期待されるユースケースが「在外投票」だとして、実現に向けた課題を問いかけた。加納氏は技術的なハードルは高くないとした上で、法整備が課題になるとの見解を示した。

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Japan Digital Design CTOの楠正憲氏(モデレーター)
(出典:blockchain conference btokyo ONLINE 2021)

 また、楠氏は日本の場合、国政選挙はじめ「秘密投票」であるため、透明性を確保しつついかにプライバシーを確保するかが重要なポイントになると述べた。

 これに対して福島氏は「データのトランザクションを公開することで検証可能にする点がブロックチェーンの大きな特性である一方、公開状態になることで、誰が何に投票したかが第三者に見えてしまう課題がある」と述べた。

 こうした課題を暗号学的なアプローチで解決するための研究が進んでいる。

「我々が取り組んでいるのは、スマホなどのデバイスのハードウェア領域を用いるものです。外部からアクセスできないデータ領域で、誰に投票したかを秘匿した状態でデータを格納し、結果の公正さが機械的に検証できる状態を保つことで、透明性とプライバシーを両立するものです」(福島氏)

 このアプローチは投票以外にも保険の支払いや株式の配当、融資の実行などにも応用が可能であることから「データの秘匿性と検証可能性の確保は、ホットな領域の1つだと考える」と福島氏は話した。

 加納氏は、ブロックチェーン技術が社会に広く受容されるために必要なこととして、「エンドユーザーは、アーキテクチャやテクノロジーについては気にしていない」と述べた上で、UXとして何が便利で、何が安全かというところに事業者として応えていきたいと述べた。

 一方、福島氏は、大企業とのアライアンスを成功に導いた経験から「大企業のブロックチェーン技術への理解は意外と進んでいる」と話す。大きな組織はイノベーションに向けたスピーディな動きに欠けるといわれるが、「物事を前に進めるためには実績が必要となる。暗号技術がどういうものかを示すためには、学術論文ではなく実際に動くプロトタイプによって、どのように動き、どのような攻撃にどう耐えたか、その実績を示すことが重要だ」と話した。

【次ページ】「ブロックチェーンを国家戦略に」するにはこの5年が正念場
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