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現在海外では、次々に“グリーンフィンテック”系のデジタルバンクが生まれている。なぜこうしたデジタルバンクが生まれ、どのようなサービスを提供しているのか。イタリアのグリーンデジタルバンク「フロウェ(Flowe)」やグリーンフィンテックのサービスを裏で支えているスウェーデンを拠点とするテック企業「ドコノミー(Doconomy)」、そしてグリーンフィンテックの課題と展望について解説する。
次々に生まれる“グリーンフィンテック”系デジタルバンク
近年、企業活動における環境、社会、ガバナンス(ESG)への取り組み優先度が非常に高まっていることは言うまでもありません。
ほとんどの金融機関がESGを模索していますが、デジタルトランスフォーメーション(DX)戦略の一部としてESGを組み込んでいる金融機関はまだ少数です。
多くの金融機関は、ESGイニシアチブをビジネス慣行よりもCSR(企業の社会的責任)活動に近いと見なしています。レポート「Banking on Climate Change: Fossil Fuel Finance Report 2020」によると、米国最大の銀行は化石燃料に数千億ドルを投資しています。
実際には、ESGをDX戦略に統合することで、金融機関は顧客と自分自身の新しいビジネスチャンスを生み出すことができると考えられています。
このトレンドに呼応し、“グリーンフィンテック”とも呼ばれる新しいデジタルバンクが次々に生まれています。
イタリアのグリーンデジタルバンク「フロウェ」とは
イタリアの銀行グループであるメディオラヌム銀行(Banca Mediolanum)は、2020年にグリーンデジタルバンクであるフロウェ(Flowe)を設立しました。
チャレンジャーバンクでもある同社は、銀行スマホアプリ、無料でのATM引き出し、バーチャルカード、ApplePay / Google Pay対応、グループ口座などに加えて、同社の顧客に対して地球環境に貢献するためのさまざまな機能を提供しています。
その象徴ともいえるのが、顧客のリクエストに応じて同社が提供する木製の物理デビットカードです(発行手数料:15ユーロ)。このデビットカードは人口植林で作られたチェリー材を使用しており、FSC認証(適切な森林管理を認証する国際制度)を取得しています。
また、顧客が望めばグアテマラに植樹するオプションも用意されています。顧客はFloweアプリを通じて、植樹された木の成長を確認することも可能です。
その他には、顧客が買い物をするたびにどれだけCO2を排出しているかをリアルタイムで表示する機能、あるいは、ある店と別の店で買い物をした場合の CO2排出量を比較する機能など、顧客がよりサステナビリティの意識を持てるようなナッジ(行動科学の観点から、人が望ましい行動を後押しするためのアプローチ)を活用したサービス 「Flowe ECO Balance」を提供することで他のチャレンジャーバンクとの差異化を図っています。
企業としてのFloweは、排出するCO2を相殺する企業であると認められる「カーボン・ニュートラル認定」を受けるとともに、「B Corp認定(一定基準をクリアしたサステナブルな会社に与えられる認証制度)」も申請しています。
また、基幹系システムにはカーボンニュートラルなMicrosoft Azureを用いることで、カーボンフットプリントにも透明性を持たせています。
Floweの主なターゲット顧客層は、ミレニアル世代以下の比較的若い世代です。こうした世代は自らがサステナブルな生活を営むことに大きな関心を持っており、環境問題に積極的に取り組む企業を評価するようになってきています。
Floweの親会社であるメディオラヌム銀行は、ESG取組みの一環としてFloweを設立し、自社をサステナブル銘柄としてアピールすると共に、若い世代を積極的に取り込む戦略を実行していると言えるでしょう。
【次ページ】グリーンフィンテックのサービス提供の裏側