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- 2021/03/23 掲載
マネックス代表に聞く“次世代”パートナー戦略、「金融仲介業」のとらえ方
前編はこちら(この記事は後編です)
「暗号資産投資」を進める米国の金融機関
デジタル通貨が存在感を増す中、日本と米国との温度差に危機感を覚えています。直近1年間の資産のリターンの状況を見ると、「ボラティリティー(Volatility価格変動)」の高いものほどリターンが高くなっています。これは典型的な流動性相場の動きです。中央銀行によって大量に供給されて余った資金が株式市場などに投資資金として流入することで、株価上昇などが引き起こされています。
大量の金融緩和が実施された時は大体こういう傾向となります。顕著なものが暗号資産のビットコインです。ビットコインはボラティリティーが高く、この1年間で価格が値上がりしています。
米国では機関投資家がビットコインを購入しています。年金基金や大学の基金、あるいはプロのアセットマネジャーなどが買っているのです。また最近では、世界最大の資産運用会社であるブラックロック(BlackRock)がビットコインを投資対象にすると発表しました。
現在、米国ではプロの投資家が運用成績を上げるためにビットコインを保有せざるを得なくなっているのです。"破壊的イノベーション"への投資に特化している米国の運用会社アーク・インベストメント・マネジメントのキャシー・ウッド最高経営責任者(CEO)も、先日のセミナーで「今後は個人も基金も仮想通貨(暗号資産)をある程度買っていくだろう」と語っています。
また、米国では機関投資家や基金、年金がビットコインに投資できるように安全を確保するため、銀行・準銀行にカストディー(証券の保管、管理)業務を担当させる方向で動いています。2021年2月12日、バンク・オブ・ニューヨーク・メロンも同年中に仮想通貨のカストディー業務の開始を発表しています。また、JPモルガン・チェースも暗号資産の取り扱いを検討するため2020年10月にカストディ―の情報提供要請書(RFI)を発行しています。
日本の金融市場で「ドライバーが使えない」現状とは
そうした米国の動向に引き換え、日本ではまったくその動きがありません。私は「個人は資金決済法で規制すればいいが、機関投資家はビットコインに投資できる環境を整えるべきだ」と金融庁に提案しています。日本は経済では世界3位の地位ですが、世界2位の規模である2,000兆円という個人金融資産を保有しています。このお金をどのように働かせるかはとても大切です。個人にボラティリティーの高い金融商品を運用させないというのは理解できます。しかし、「プロはプロ」です。「米国のプロ投資家はドライバーを使ってゴルフをやっているのに、日本のプロはドライバーが使えない」という状況になっているのです。
今、最もリターンが高い投資を日本のプロはできないわけです。信託法上でも、信託銀行は仮想通貨のカストディーになれません。一方、米国ではせっせと銀行にカストディー業務をやらせてプロが参入しています。そもそも日本はそれすらできません。
金融のデジタル化という観点では、ブロックチェーンを用いた資金調達方法であるSTO(Security Token Offering)やトークンに関する議論よりもこうした事態が大きな問題だと思います。当社のビジネスにはあまり関係ありませんが、日本の金融市場のことを考えると、とても心配な状況です。
「デジタル円」を推進すべき理由
日本は世界に冠たる「現金国家」です。しかし、感染症を考慮すると電子マネーが普及する方がいいですし、普通に考えると進んでいくことになるでしょう。世界の主流は電子マネーに移行しています。また、日本も中国だけにやらせておかないで「中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)」を早く導入するべきです。中国は2022年の北京オリンピックに合わせて、デジタル人民元を普及させる計画です。世界中から中国に来た人がデジタル人民元を使う、そうやって世界に広めようとしています。できれば日本もデジタル円を発行して、対抗することが望ましいです。デジタル円が出れば、リテラシーが高くなったユーザーにより、STOなどの活用は自ずと進展するはずです。
「暗号資産投資をプロの投資化」や「CBDCの導入」について言及しましたが、現時点での“ないものねだり”もしていられません。日本での未来への投資を活性化すべくマネックス証券では2020年6月に「マネックス・アクティビスト・ファンド(愛称:日本の未来)」という取り組みを開始しました。
このファンドは個人向けに変革に前向きな日本企業を主な投資対象とし、投資家の意見を反映させながら、対話や提案を通じて包括的なエンゲージメントを実施しています。この新しい形のアクティビスト活動を通じて、日本の資本市場を活性化させ、個人投資家の皆様とともに日本の未来を創造することを狙っています。積極的なアクティビズムによって日本企業を変えていくことで投資リターンを上げることを視野に入れています。
【次ページ】「金融仲介業」に対し、どうふるまうのか
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