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コロナ禍をきっかけに拡大が始まった中国の「ライブコマース」の進化が止まらない。ザリガニから自動車やマンションまで、あらゆるモノがライブコマースで販売されている。配信を支援するライブコマース基地も各地に登場し、24時間配信を可能にするアバターを使ったバーチャルライブコマースの実験も始まっている。新型コロナの感染拡大から、わずか半年足らずで業界環境が整ってきた。
コロナ禍をきっかけに急速に拡大したライブコマース市場
中国は、ピンチをチャンスに変えることで成長をしてきた国だ。2003年にSARSが流行したとき、感染者を出して緊急避難的に全社在宅勤務を実施したアリババは、EC「淘宝網(タオバオ)」の開発を始め、店舗でCD-Rなどのメディアを販売していた京東(ジンドン、JD.com)は、倒産の危機に直面してECに活路を見いだして成功した。ネットで注文して届けてくれるECという新しい購入体験が生まれ、アリババと京東という巨大企業が育った。
そして、2020年の新型コロナ感染拡大では、店舗がこぞってライブコマースに乗り出している。中国でも、個人消費に与えた被害は小さくなかった。2020年1月、2月は2019年同時期よりも20.5%減という大きな落ち込みを見せた。回復の歩みは緩慢で、プラスに転じたのはようやく8月になってからだ。
一方で、ライブコマース市場は2018年、2019年と急成長し、2020年はコロナ禍により、さらに大きく成長すると見込まれている。2019年の個人消費は41兆1,649億元。これに2020年のライブコマース市場の予測額1.1566兆元を当てはめてみると、2.8%がライブコマースによる消費となる。
にぎやかな商店街を歩いているかのよう
ライブコマースは、当初、営業自粛をしなければならない店主たちが苦し紛れに始め、外出できない消費者たちが仕方なく購入していたようなところがあった。しかし、あっという間にライブコマースの娯楽性の高さが認知されるようになった。実際にライブコマースを見てみれば、その楽しさはすぐに理解できる。
現在、ライブコマースプラットフォームとして有力なのは「タオバオ」「抖音(ドウイン、中国版Tik Tok)」「快手(クワイショウ)」の3つだが、いずれもTik Tokが広めたユニークな操作方法(=上下にスワイプすると別の動画に切り替えられる)を採用している。
これにより、ライブコマースの番組を次から次へと切り替えられる。中国のライブコマースでは、店主、店員、生産者自ら出演して販売するというのが基本フォーマットになっている。チャットで配信主にコメントを送ることもでき、「色違いのものを見せて」「安くならないの?」とコメントを送れば、配信主がリアルタイムで応答するため、まるで店頭で買い物をしている雰囲気そのままなのだ。
次から次へとライブコマースを高速で切り替えて見ていくと、にぎやかな商店街を、お店をひやかしながら歩いているかのような錯覚に陥る。
何が売れている?水産・農産物のライブコマースも活発化
ライブコマースの楽しさに最初に気づいたのは、若い女性とオタク層という感度の高い人たちだ。当初、化粧品、服飾品、フィギュア、コスプレ衣装などのライブコマースが人気となり、2018年、2019年のライブコマース市場の成長につながった。
2020年は多くの人がライブコマースを利用するようになり、扱う商品の幅も大きく広がった。現在では、マンション、自動車からスナック菓子までありとあらゆるものが販売されるようになっている。
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