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  • 2020/04/20 掲載

AIで金融はどう変わる? 金融社会とはどんな社会? 国士館大 加藤将貴准教授に聞く

連載:キャスター鈴木ともみの日本橋・兜町レポート

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AI(人工知能)が本格的に活用される時代になり、金融機関のシステムにおいても、AIの活用が急速に広まっています。特に新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される昨今においては、さまざまな場面でAIが必要不可欠な状況となってきました。そこで、今回はテクノロジーと社会について研究をされている国士館大学政経学部准教授 加藤将貴先生に「AIとはいったい何なのか」「AIで変わる金融社会」「AIで変わる未来」という3つの視点で、お話を伺いました(インタビューはテレカンで実施)。
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加藤将貴氏
国士舘大学政経学部准教授。情報セキュリティ大学院大学客員研究員、中央大学大学院理工学研究科兼任講師等を経て現職
(写真:Tokyo Financial Street 114より提供)

人工知能の研究は2つのアプローチがある

鈴木(筆者):加藤先生は、テクノロジーと社会との関係性を紐解くために、学術と実践の両面から研究されていらっしゃいます。私たちはここ数年で急速に「人工知能(AI)」の存在に注目し始めていますが、実際のところ、AIとは何なのか、ということについて理解しきれていません。色々なことが言われてますが、AIとはズバリ何なのですか?

加藤氏:AIとは、端的に言えばプログラムの一種ですが、実は厳密な定義というものは定まっていません。従来のプログラムとの違いは?と聞かれれば、「知能が感じられるプログラムである」と答えれば良いのかもしれませんが、専門家によっても解釈が異なります。ここでいう「知能」が何なのかそもそもよくわかっていないのです。

 AIという言葉は、1956年にダートマス大学で開催された研究会(ダートマス会議)において、ジョン・マッカーシーにより用いられたとされています。

 議論の余地はあるものの、AIの研究は概ね2つのアプローチがあり、ひとつは「人間の知能そのものを作ろうとするアプローチ」、もうひとつは「人間が知能を用いて行うことを、コンピューターに行わせようとするアプローチ」です。

 前者は「強いAI」「汎用AI」などと呼ばれ、後者は「弱いAI」「特化型AI」などと呼ばれています。現在の研究や事例の多くは「弱いAI」「特化型AI」のもので、囲碁の世界でトップ棋士を次々と打ち破ったAlphaGoや、金融業界でいえばロボアドバイザーのように特定領域に絞ってAIを活用するものとなります。

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AIによって金融業界はどう変わるのか?
(Photo/Getty Images)

AIによって金融はどう変化するのか?

鈴木:AIによって金融業界、また金融社会はどのように変化するのでしょうか?

加藤氏:たとえば、各金融機関のコールセンターにおいて、問い合わせの内容をリアルタイム音声認識で分析し、必要と推測される情報をオペレータに提示するシステムに利用すると、問い合わせに対して、調べる時間や労力の大幅な削減と回答精度の向上につながります。

 また、金融取引における不正対策では、AIに不正取引のパターンを大量に学習させることにより、高精度で早い不正検知を可能にします。

 AIに限らずコンピューターや機械を業務に導入する場合、従来の業務の効率化や低コスト化につなげる業務改善の目的と、新たな価値やサービスを生み出して収益を増加させる目的とに分けられますが、これまで金融におけるAI活用事例や実証実験は、どちらかと言えば業務改善を目的としたものが多かったように感じます。

 今後は、収益増加につながるAIの利用が期待されており、より進展していくものと考えられます。具体的にはAIによるマーケティングに基づいた、金融商品・サービスの提供などです。顧客の属性、資産状況や投資の傾向などのデータを分析し、顧客に応じた金融商品の提案や、需要予測が可能になれば、効果的な収益の増加につながると考えられます。

 しかし、精度の高い提案や予測には、AIに学習させるデータが大量に必要になります。金融という性質上、秘匿性の高い情報が多く、データ収集には相当の労力がかかり、同時にセキュリティ対策も進めていかなければいけません。

 このインターネット時代に、ひとたび情報漏えいがあれば、完全な回収は不可能と言って良いでしょう。加えて、それらを実現可能にする金融AI人材の確保も必要となります。

 ですから、経営層が「AIを導入する」と舵を切っても、すぐに実現し大きな効果を発揮するものではないということです。現在のAIは万能ではありませんから、むしろ慎重に、その目的や費用対効果などを見極めることが重要でしょう。

【次ページ】AIが奪う「雇用」はおよそ何パーセントなのか?
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