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- 2020/03/02 掲載
金融機関が「GAFAに負けない」ための具体策とは?
押し寄せるテクノロジーの波、求められる自己変革
従来の金融機関にとって、テクノロジーを活用してビジネスモデルを変革していく「デジタルトランスフォーメーション」(DX)への取り組みは大きなチャレンジです。フィンテックやイノベーション、DXなどの言葉が金融業界に押し寄せた数年前、「そんなことをしなくても銀行はつぶれないよ」と言う人もいたものです。
しかし、「HENRY(High Earners, Not Rich Yet:高所得でこれから裕福になる層)」が、デジタルに慣れ親しんだミレニアル世代にシフトしてきたこともあり、金融機関も自己変革を進めなければ生き残れない時代となりました。
ただ、日本の金融機関に長く従事してきた人の中で、デジタルビジネスの仕組みと動向を理解し、正しく戦略に落としこんで実行できる人はそう多くは存在しないでしょう。
アマゾンやアップル、グーグルなど「ビッグテック」と呼ばれる巨大テック企業がこぞって金融に進出する中で、従来の金融機関はどのように対応していけばよいのでしょうか。
外部人材の積極採用が難しい? 日本特有の事情
デジタルの時代は、ドッグイヤー(普通の1年が7年分に相当)と呼ばれるくらい日進月歩で物事が進みます。数カ月判断が遅れるだけで、取り返しのつかない差がつくことも少なくありません。金融業界のビジネスモデルはデジタルによって大きく変化しており、既存の領域変化だけでなく、新しい領域も生まれてきます。そのため、多くの企業が自社の戦局を正しく理解して、あるべきDX戦略に落とし込むスキルを持った人材を獲得する必要があります。
外部人材を招き入れる際は、DXを進めるために必要な権限や予算、人的資源を与えて、戦略策定の骨子を含めてリードを任せることが理想的です。
マネジメント層は既存施策や既存ビジネスの活用、カニバリゼーション(共食い現象)を気にして口を出したくなるかもしれません。しかし、少なくとも戦略の原型は外部人材によるニュートラルな視点で構築しなければ、自社に都合の良い(=競争力に欠ける)ものになりかねません。
日本の金融機関の場合は、生え抜き人材とのバランスが難しく、事業部長レベルで外部人材を招聘している事例は多くはないかもしれません。
しかし、海外の金融機関では、テック企業から事業部長あるいは部門長レベルの人を連れてきてチームを組成し、プロダクトを短期間で作り変えるようなダイナミックな動きをしているところもあります。日本の金融機関でも同様のことをやるのは不可能な話ではありません。
デジタルテクノロジーを使いこなすために必要なこと
DXにおいては、デジタルテクノロジーを活用することは当たり前であり、それが前提となる事業実行体制を築いていかなければなりません。先ほど指摘した通り、デジタルビジネスの世界は日進月歩であるとともに、顧客はより良いサービスを求めて頻繁に乗換えたりします。そのため、サービスを常に改善し続ける必要があります。サービスをリリースした途端に担当者がローテーション異動で居なくなり改善が止まる、ということはあってはならないのです。
加えて、1つのサービスをリリースするまでに時間をかけすぎるのも問題です。既存の金融機関だけに限らない話ですが、ROI(投資対効果)を重視するあまり、「宝くじを当ててから買う」ことを目指すくらい慎重に検討しすぎることもあります。
対して、テック企業では正反対のアプローチが取られることが多くあります。社内では常に数多くのアイデアが試行されています。
時には、まったく同じアイデアを別々の部署で個別に試行することもあります。そうして社内で競い合い最終的に生き残ったサービスが大きな利益を生み出すのです。これは、テクノロジーの「ファネル」とも呼ばれます。
デジタルテクノロジーを使いこなすには、研究開発(R&D)を担うエンジニア集団、顧客体験(UX)を考えるデザイン集団、プロジェクトを取りまとめるプロダクトマネージャなど専門領域を得意とする人材が必要です。
テック企業には、既存の金融機関がこれまで育ててきた「ジェネラリスト」のような人はあまり存在しないと言ってもよいでしょう。また、専門人材が働くために必要十分な機能を持つオフィスやITインフラを整備することも必要です。
【次ページ】ビッグテックに飲み込まれないために
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