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  • 2020/02/21 掲載

日立に聞く、金融業の「AI導入」はどこで“つまずく”のか

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デジタルテクノロジーの進展や新たな競合の参入など、従来の業界の垣根がなくなり、金融ビジネスを取り巻く環境は混沌としつつある。日立製作所の金融イノベーション推進センタでは、金融ビジネス領域におけるデジタルソリューションの企画、開発を手がけている。同センタ長の仲田智将氏に、金融ビジネスにおけるAI活用の課題や現状、最新事例について聞いた。
聞き手、構成:編集部 山田竜司、執筆:阿部 欽一

聞き手、構成:編集部 山田竜司、執筆:阿部 欽一

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日立製作所
金融システム営業統括本部 事業企画本部
金融イノベーション推進センタ長
仲田智将氏

AIという道具を使って最高の“料理”を作るのが役目

 日立製作所は金融イノベーション推進センタにおいて、金融ビジネスにおけるデジタルソリューションの企画、開発を手がける。仲田氏は「金融機関との窓口である営業やSEと連携しながら、お客さまの課題を解決するソリューションを仕立てていくのが役割だ」と述べる。

 つまり、顧客との対話を通じて課題を整理してテクノロジー活用のユースケースを考え、PoCを実施、検証結果を元にシステム実装のための設計を担っているという。仲田氏がフォーカスしている領域は「ビッグデータやAI活用」であり、関連する相談が多いことを明かした。

 相談内容について、一時期のような「AIありきの相談」が減ってきた一方、さまざまなAI活用のユースケースが蓄積されてきたことにより、「ある程度、課題解決までのアプローチが共通化できるケースが出てきた」という。

 特に、業務効率化や業務プロセス改革などのテーマで、「どの要素技術を用いれば課題を解決できるか」というのが、ある程度パッケージ化されてきた。そうした状況下で、仲田氏は「我々の役割は『料理店』にたとえられる」と話す。

「お客さまの好み(課題)に対し、食材(ビッグデータ)を組み合わせて、いいツール(AI)を使って最高の一品を提供していくのが我々の役割。食べたい料理はお客さまによって違うので、我々は、課題に応じて統計や画像認識、自然言語処理など、さまざまな領域のテクノロジーを適材適所で組み合わせていくことが大事です」(仲田氏)

 AI開発の拠点として、日本(国分寺)や北米にラボを構えており、インドにも拠点を構える予定だ。

業務効率化、業務改革などの領域で成功事例が出てきた

 仲田氏は、金融機関のAI活用の現状について「特に、業務効率化、業務改革といった領域で成果を挙げている事例が出てきた」と話す。

 たとえば、日立製作所でも、金融機関を中心としたペーパーレス化の取り組みとして、AIとOCRを組み合わせた「帳票認識サービス」をメニュー化している。

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認識エンジンの得意分野のいいとこどり
(出典:日立製作所提供資料)

 これまで、紙の帳票上のデータをシステムに入力、確認することには多くの手間と時間がかかっていた。そこで、AI技術をもとに高精度に文字認識を行うOCRエンジンを複数搭載するサービスプラットフォームを構成し、定型帳票や非定型帳票、また活字や手書き文字、二次元コードなどを認識。業務の特性や各種条件に合わせデータ入力、確認の作業を省力化し、ペーパーレス化を実現していくのがこのサービスだ。

 こうした「成果を出す事例」が増えてきている理由として、積極的に取り組んでいるという「オープンイノベーションの効果」を挙げた。

 たとえば、上述した「帳票認識サービス」では、画像認識エンジンに、「手書きに強い、色ズレ、カスミの認識に強い」など、他社のAIエンジンを採用、顧客企業の課題に応じて認識エンジンの強みを生かして使い分けている。

 日立ではオープンイノベーションを推進するためさまざまな取り組みを推進しており、2018年4月には、米国シリコンバレーに本部があるPlug and Playの日本法人とのパートナーシップを締結。米国にある日立の「金融イノベーションラボ」を中心に、国内外で新たな金融サービスの開発を進めてきたという。こうした取り組みが確実な成果を生んだ格好だ。

 協業先選定の考え方として、仲田氏は「目的ベースで『これが実現したいから、こういう強みがある会社がないか』というアプローチで提携したパートナーとは、関係が長期にわたることが多い」と述べる。

 フィンテックスタートアップの中には、技術が確立されているところもあれば、ビジネスモデルまで確立されている企業もある。仲田氏は、「我々が持っていないような技術を補完するような特長を持つ企業であれば、積極的にパートナーシップを結んでいきたい」との考えを示した。


【次ページ】金融機関が「つまずく」理由
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