- 2024/09/24 掲載
タワマンが今後「普通のマンション」に負けるワケ、住民を待つ「自業自得」の未来とは(2/3)
実はプレハブ住宅と「同じ構造」?
しかしその一方で、柱や壁を厚くすれば居住空間を圧迫する。タワマンの内部をご存じの方は、柱型が大きなことに気付いたはずだ。建物の強度のために、それはある意味仕方のないことと言える。
しかし、壁まで厚いと住空間は息苦しくなってしまう。そこで登場したのが「軽い素材」である。
タワマンの場合、外壁には軽量気泡コンクリート素材である「ALCパネル」というものが使用されている。ALCパネルは耐久性が高く地震に強いほか、断熱性や耐火性にも優れている軽量の素材だ。そして、住戸と住戸の間には石膏ボードを用いる「乾式壁」と呼ばれるこちらも軽量の素材が採用されている。これらを使用することで建物全体の荷重を軽減しているのだ。
通常タイプのマンションの場合、外壁や戸境壁にもRC構造が採用されている。鉄筋を配した周りに型枠を組み、コンクリートを流し込んで固める。だから頑丈であり、隣戸の生活音などは聞こえにくい。
一方、ALCパネルや乾式壁は工場で大量生産された軽い素材であり、現場で嵌めこむ方式だ。施工方法としては、いわばプレハブ住宅にも近い作られ方をしている。
通常型のマンションの場合、柱型や外壁、床、そして戸境壁にはRC構造でアナログ的につながっている。
タワマンの場合、柱型と床はRCでつながっているが、外壁と戸境壁は現場で嵌め込む構造だ。
ちなみに多くの場合、床は荷重を軽減する「ボイドスラブ工法」と呼ばれる手法が採用されている。この手法を簡単に説明すれば、優れた剛性や強度を実現しつつ、鉄筋コンクリートの内側に空間を多く設けて荷重を低くするのである。
普通のマンションにはない「決定的すぎる」弱点
つまり、タワマンは、躯体構造を軽くすることで超高層な集合住宅の建築を可能にしたが、居住性能や耐久性を一部犠牲にした構造を採用せざるをえない構造物なのだ。そのことにより生じ得る具体的な障害としてはまず、騒音問題が挙がる。戸境壁をRCではない軽い乾式壁にしたことで、通常型マンションではあり得ない隣戸との騒音問題が生じることがある。
たとえば、超一流の財閥系デベロッパーが都心で分譲したタワマンでも、隣戸のくしゃみや掃除機の音が聞こえてしまう、という事案を筆者は聞いている。コロナ禍によるリモートワークでは、隣人がYouTubeのヘビーユーザーであることが分かってしまった、もちろん、タワーマンションは高層なので暗騒音(生活音のようなもの)が少なく、物音が大きく聞こえてしまう面があるかもしれない。ただ、高層ゆえに風は強いので、少し空けた窓や通気口からの風切り音に悩む人もいる。
そしてもう1つの致命的な「欠陥」は、長期的な視点での建物修繕で生じやすい問題だ。
前述したように、タワマンの外壁に使用されているALCパネルは、軽量で耐久性、耐火性、遮音性にも優れているが課題もある。それはタワマンが通常のマンションに比べて継ぎ目が多すぎることによる。通常型なら継ぎ目はRC躯体とサッシュなどの間に限られる。しかし、タワマンはALCパネル同士の継ぎ目やサッシュとの間に生じる。
そこには必ずコーキング剤という防水と接着の機能を果たす液体が使われる。白くて粘り気のあるとした材料で、建築現場ではよく使用されるので、見かけたことのある方もいるだろう。
コーキング剤は便利な材料だ。隙間をきれいに埋めてくれる上に防水機能にも優れている。しかし寿命があり、15年程度で劣化して隙間ができる。すると、そこから雨水などが浸透する可能性が生じてしまう。
したがって、築15年程度でこのコーキング剤をほじりだして新しいものを注入し直す必要がある。
つまり、すべてのタワマンは築15年程度で外壁のALCパネルの継ぎ目に、コーキング剤を注入し直す修繕工事が必要なのだ。潮風にさらされる湾岸のタワマンは、この15年という目安がもう少し短くなるかもしれない。 【次ページ】今後到来するタワマン民「自業自得」の時代とは
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