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- 2024/06/17 掲載
相次ぐ「賃上げ実施!」は本当か嘘か? 円安で儲けた大企業の「不都合な真実」
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
分析の中心的概念は「粗利益」
以下の分析における中心的な概念は、粗利益だ。これは売上から原価を差し引いたものである。ほぼ付加価値と同一の概念だ。これが賃金と利益に分配される。円安による輸出、輸入の変化が粗利益にどのような影響を与え、それがどれだけ賃金に分配されるかを以下に見ることとする。
ここでは、企業を次のように分類する。資本金10億円以上を「大企業」とする。そして資本金2,000万円以上、1億円以下を「中小企業」とする。なお、ここで用いるデータには、金融機関は含まれていない。
輸入価格と物価の変動が「ほぼ一致」も…
円安によって輸入価格が高騰した。輸入はGDPの計算で控除項目なので、これによってGDPデフレーターは大きく引き下げられる。しかし実際には、GDPデフレーターの伸び率はほぼゼロだった。これは、企業が原価の上昇を売上価格に転嫁し、最終的には最終財の価格まで転換したからだ。
GDPデフレーターの伸びがほぼゼロであることは、原価の上昇はほぼ完全に最終支出に転嫁されたことを意味する。したがって、その負担は消費者などが負うことになった。
図1では、最終支出のうち家計消費のデフレーターの上昇率(これは、ほぼ消費者物価の上昇率に等しい)を10倍したものと、輸入デフレーターの上昇率を示している。両者の動きはほぼ一致している。これは、輸入物価の変化が、同一四半期中に消費財価格に反映されたことを示している。
ただし、2022年7-9月期から2023年1-3月期には、輸入物価が下落したにもかかわらず、家計消費デフレーターが低下していない。これは、企業が原価の低下を売上価格に還元せず、その利益を享受したことを示している。
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