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  • 2023/05/29 掲載

実はG7の重要トピック「暗号資産と北朝鮮」「CBDC」、“踏み込んだ”内容になったワケ

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G7財務大臣・中央銀行総裁会議の財務トラックの重要トピックは、金融システム安定化とインフレ抑制、ロシア・中国への対抗でした。議論を受けて5月13日に取りまとまとめた共同声明では、日本の支援を受けて国際通貨基金(IMF)が作成中の「CBDCハンドブック」の作業加速、暗号資産のマネー・ロンダリングおよびテロ資金供与対策(AML/CFT)強化に関する記載が盛り込まれました。それぞれどのような狙いがあるのか、現地取材を踏まえて解説します。
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報道陣向けの記念撮影に臨む植田総裁、鈴木大臣ら
(出典:筆者撮影)

「CBDCハンドブック」は作業加速

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記念撮影の場で言葉を交わす米国イエレン財務長官とFRBパウエル議長
(出典:筆者撮影)
 先進7か国かならるG7財務トラックは5月11日から13日にかけて新潟市で開催されました。鈴木俊一財務大臣、植田和男日銀総裁、米国のイエレン財務長官、FRBのパウエル議長らが出席し、ウクライナ支援策や、金融システムの安定化について意見を交わしました。

 会合は基本的に非公開で行われましたが、報道陣向けの記念撮影の場では各国の参加者が言葉を交わす場面もみられました(写真)。

 最終日に公表された共同声明では、ウクライナ支援、新興国・途上国支援に紙幅を割く一方、金融デジタル化への対応についても項目が盛り込まれています。これまでの共同声明から基本的な方向性を踏襲しつつ、最近の情勢変化に合わせていくつかの要素が新たに追加されました。

G7財務トラックで言及された「金融デジタル化への対応」

 金融デジタル化への対応の中で、中央銀行デジタル通貨(CBDC)については次の通りです。
「我々は、通貨・金融システムの安定性、強靱性及び健全性に対する潜在的なリスクに対処しつつ、決済の効率性及び金融包摂のようなイノベーションの恩恵を活用するためのデジタル・マネーに関する政策検討を継続する。信頼できる、安定した、透明性の高いグローバルな決済システムは、我々の経済・金融活動の重要な基盤であり、中央銀行デジタル通貨(CBDC)は、この文脈で大きな役割を果たしうる。我々は、いかなるCBDCも、とりわけ透明性、法の支配、健全な経済ガバナンス、サイバーセキュリティ、データ保護に基づくべきであると強調する、2021年10月に合意された、「リテールCBDCに関する公共政策上の原則」を想起する。我々は、政策ガイダンスと能力開発に対する新興・開発途上国からの需要の高まりに照らし、他の国際機関や基準設定主体、各国当局を含む専門家や関係者との緊密な協力の下、こうした主体からのインプットを活用しつつ進められる「CBDCハンドブック」に関するIMFの作業を歓迎し、2023年の世銀・IMF年次総会までに公表される最初の一連の成果物に期待する」
※運営側公表の仮訳より。下線は筆者。

 後半部分で言及している「CBDCハンドブック」は、新興国・途上国を含む各国中央銀行がCBDCを検討する際、主要国における研究の知見を活かすためのツールとなるよう、IMFが作成作業を進めています。当初は公表までになお数年間がかかる見通しでしたが、今回の共同声明の記載ぶりはスケジュールの前倒しを示唆するものとなっています。

 日本の財務省幹部は「(CBDCの項目における)今回の目玉はCBDCハンドブック」と強調。「(共同声明は)日本が支援してIMFに作業してもらっているCBDCハンドブックの作業を歓迎して、いよいよ(今年開催予定の)次のIMF年次総会、マラケシュまでに公表をということで、作業が大きく進むことになる」と説明しています。

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閉会後、記者会見に臨む鈴木大臣と植田総裁
(出典:筆者撮影)

 共同声明において直接的な言及はないものの、共同声明で打ち出したハンドブック作成作業の加速は、CBDCの実証実験の分野で大幅なリードを広げている中国の動きを念頭に置いていると考えられます。

 デジタル人民元既に個人の決済だけでなく納税業務、補助金交付にも応用され、地理的にも徐々にその経済圏を広げつつあります。一方、日本を含むG7加盟国は現状、CBDC発行の正式な判断を保留しています。

 ハンドブックの作成と交付に向けたスケジュール前倒しには、仮に将来、CBDC領域における国家間の通貨覇権争いに発展した場合への「備え」として、新興国・途上国を先回りで囲い込みたいG7参加国の狙いも透けて見えます。 【次ページ】財務省が「暗号資産によって生じる具体的なリスク」を踏み込んで提示したワケ
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