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- 2023/03/15 掲載
100年に1度の“異常事態”、もはやいつでも「景気後退の可能性アリ」と言える根拠
過去100年で1度も起きたことがない“異常事態”とは
2022年の異常さを表す事例として、株・債券の値動きが挙げられます。教科書的な株・債券の関係で言えば、「株が下がれば、債券が上がる」というのが、通常のパターンでした。だからこそ、これまで私は投資家の皆さんに「(どちらか一方の値動きに左右されないよう)株式と債券を一緒に持ちましょう」という話をすることがありました。
ところが、2022年には、米国の株式と債券の両方ともが下落するような異例の状況がありました。米国のS&P500が18%下がり、債券も同じ程度の下落幅を記録しています。
図表1を見てください。過去に両方が下がった年は、1969年まで遡ります。また、株・債券ともに10%以上下がった年は、過去100年間で1度もありません。また、2022年の債券の下げ幅は、この100年間で過去最大でした。
100年間一度も起きていないようなことが起きる2022年の環境で、投資益を獲得するのがどれだけ難しいことだったかが分かるはずです。
異常事態の原因は?米国経済に起きている異変
それでは、なぜこのような異常事態が起きたのでしょうか。それは、コロナ禍からの経済活動の再開やインフレ率上昇などを受け、各国の中央銀行が政策金利を引き上げはじめたことが関係しています。実際に、米国・カナダ・英国・欧州では、金利は加速的に上がっています。米国に限れば、たった1年で政策金利は0.5%から4.5%へと9倍上昇しました。米国長期金利の利上げの始まりが2022年3月で、1年経たない間にこれだけ金利を上げると、当然のように景気後退が起こります。FEDもある程度の痛みを伴わなければ、インフレの鎮静化はできないと考えているということです。
ただし、ここで不思議なのが、政策金利を引き上げてもなお、米国の雇用が強いということです。
2022年度米国雇用統計における失業率を見ると、3.5~3.7%の範囲内で収まっています。米国の完全雇用とされる水準は失業率3.5%とされており、失業率上昇を覚悟で利上げを進めたにも関わらず、完全雇用が達成されている、という状況なのです。つまり、ここから考えられるのは、米国は景気が良く人手不足にあるということです。
米国の失業率の低さは、コロナの3年間の影響です。米国では財政を刺激するために、国民1人あたり毎月約1,000ドル支給する政策を取ってきました。その結果、しばらく働かなくてもいいだろうという感覚を持つ国民が増えたため、労働参加率が上がってきませんでした。景気後退するのではないかといわれる状況がありながら、雇用が強いことも、見通しを立てにくい要因の1つです。 【次ページ】破綻寸前?「景気後退」の直前に必ず起きる”ある現状”とは
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