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- 2024/04/30 掲載
なぜ米国で半導体工場が「新設ラッシュ」なのか?同時に活発化する製造スタートアップ
米国で半導体製造の国内回帰と外資誘致が本格化
米国では2016年のトランプ政権発足を機に、製造業の国内回帰・外資誘致の動きが活発化している。これは2022年8月のCHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)以降、特に加速している状況だ。CHIPSは、補助金を通じて半導体製造業の国内投資や海外企業誘致を目指すもので、国内外企業の米国投資意欲を駆り立てている。CHIPS成立の前となる2022年1月には、インテルが200億ドル超を投じ、オハイオ州に先端チップ工場を2カ所建設すると公表。今後10年間で最大1,000億ドル規模に拡大する可能性があり、北米最大の半導体製造拠点の1つになると期待されている。
また同年12月には、台湾の大手半導体メーカーTSMCがアリゾナ州の新工場に対する投資額を従来の計画から3倍以上に引き上げ、400億ドル規模に拡大すると発表した。同社は2026年から3nmプロセス技術での生産を開始する計画で、完成時には年間60万枚以上のウエハーを製造。製品の価値は年間400億ドルに上ると見込まれている。
さらに2024年2月、GlobalFoundriesはニューヨーク州マルタの工場拡張とバーモント州エセックスジャンクションの工場近代化に、国防総省から最大15億ドルの資金提供を受けることで合意。自動車や航空宇宙、防衛などの重要分野向けに、安全なチップ製造能力を強化する。
さらにさらに2024年3月にはインテルが4州での新工場の建設計画に最大85億ドルの補助金を獲得、4月には台湾のTSMCがアリゾナ州で3つ目の工場を建設することにより、新たに最大66億ドル、同月に韓国サムスン電子がテキサス州に建設する半導体工場に対して64億ドルの補助金を獲得している。
このように、巨額の政府支援を背景に、TSMCやインテルだけでなくGlobalFoundriesなどの動きも活発化。今後数年間で米国の半導体サプライチェーンは劇的に様変わりする見込みで、半導体製造の米国回帰・海外企業誘致に向け、連邦政府と民間企業の協調が一層進むことになると予想される。
前置きが長くなったが、このように巨額の政府支援によるトリクルダウン効果やサプライチェーンの変革が期待される米製造業では、スタートアップの取り組みやベンチャーキャピタルの活動も活発化の様相だ。 【次ページ】3Dプリンティングで安価な通信衛星を製造
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