- 会員限定
- 2023/10/21 掲載
オフショア拠点からハイテク製造拠点を目指すインド、半導体分野の投資は
インド首相とNVIDIAが会談、インドでGPU製造の臆測も
製造分野における脱中国の流れが加速する中、スマートフォン、半導体、GPUなどハイテク製造分野における世界の潮流が大きく変化している。その結果、台風の目となっているのがインドだ。インドは、米テック企業のソフトウェア開発オフショア拠点として発展してきた歴史を持つが、インフラや人材基盤が脆弱だったため、ハードウェア製造分野では他国に大きく遅れを取っていた。
しかし、この数年ハイテク製造分野の海外投資が増加、特にモディ首相の米国訪問やG20サミットを契機として、この動きがさらに加速しているのだ。
象徴的な動きの1つが2023年9月に実施されたモディ首相と半導体大手NVIDIAのジェンセン・ファンCEOの会談だろう。
インド首相府の発表によると、両者はインドにおけるAI分野の潜在力について話し合ったとされる。詳細については明らかにされていないが、この会談に関して市場関係者らの間では、両者がインドにおけるAIチップ製造の可能性についても議論したのではないかとの臆測も流れているのだ。
NVIDIAは、最近話題となっている生成AIの開発・運用に必要なチップ(GPU)を開発しており、その市場シェアはほぼ独占的なものといわれている。チップ需要が爆発的に高まっており、供給不足問題が深刻化している。こうした状況がインドでのチップ製造の臆測につながったものと思われる。
報道によると、ファンCEOは、インド科学研究所とインド工科大学の研究者数人と非公式の夕食会を開催。出席者の中には、大規模言語モデル、自然言語処理、量子コンピューティングに取り組む専門家が含まれていた。
マイクロン、ホンハイ、AMDが数億ドル規模の投資
NVIDIAは、インドのグルガオン、ハイデラバード、プネ、ベンガルールに4つのエンジニアリング開発センターを有しているが、チップの製造には至っていない。一方、同社に先駆けインドでのハイテク製造投資を拡大する企業は少なくない。たとえば、米半導体大手マイクロンは2023年6月22日、インド・グジャラート州でアッセンブリと試験施設を新設する計画を発表。2段階で施設を建設する計画で、投資額は最大で8億2,500万ドルに上るという。この投資により、5000人の直接雇用、1万5000人の間接雇用が生まれる見込みだ。
また台湾の大手ホンハイも8月2日、インド・カルナータカ州で計6億ドルを投じて、2つの製造プロジェクトを開始する計画を発表している。プロジェクトの1つはiPhoneの部品製造で、もう1つは半導体製造装置に関するものだ。
Techcrunchなどの報道によると、ホンハイは、カルナータカ州政府との意向書に署名、6億ドルのうち、約3億5,000万ドルを州内でのiPhoneケース部品の製造プラント設立に、また約2億5,000万ドルを半導体製造装置のプロジェクトに投資するという。これらの投資により、州内で1万3000人の雇用が創出される見込みだ。半導体製造プロジェクトにおいては、米アプライド・マテリアルズと提携する。
ホンハイは、この発表の数日前に、タミル・ナードゥ州で電子部品製造投資施設の新設に向け1億9,400万ドルを投じる計画を発表したばかり。
また、シンガポールメディアChannel News Asiaが2023年9月17日に報じたところでは、同社のインド事業責任者ヴィー・リー氏はインド・モディ首相73歳の誕生日に、リンクトインの投稿で、来年までにインドにおける投資と雇用を倍増する計画を発表したとされる。
また、米半導体メーカーのAMDも今後5年間で4億ドルを投資し、インドのベンガルールに大規模なデザインセンターを設立する計画を明らかにしている。この発表は、グジャラート州で開催された「SemiconIndia2023」で、AMDのCTO、マーク・ペーパーマスター氏によって行われた。AMDは2001年からインドに進出しており、新たなデザインセンターを通じて、2028年までにさらに3000人のエンジニアの雇用を計画している。 【次ページ】サービス投資からハイテク製造にシフトする対インド海外直接投資
関連コンテンツ
PR
PR
PR