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- 2023/08/28 掲載
Unityが目指す「産業のデジタルツイン」化、リアルタイム3DとAIで何ができるのか?
ゲーム業界以外の産業分野のDX支援を進めるUnity
2004年にコペンハーゲンで設立されたUnityは、リアルタイム3Dコンテンツの開発・運用プラットフォームを提供してきた。同プラットフォームはゲームエンジンとして広く普及し、世界トップ1000のモバイルゲームの70%以上の開発に携わっているという。また近年はリアルタイム3D技術とAI技術を組み合わせたソリューションを提供。現実世界の物体や環境から収集したデータを使い、仮想空間上に同じ環境をあたかも双子のように再現する技術「デジタルツイン」を高度なレベルで提供してきた。
2023年4月には、産業向けリアルタイム3Dアプリケーションの開発基盤「Unity Industry」をリリースするなど、産業分野における事業展開を強化している。
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン 執行役員 産業営業本部長の松本 靖麿氏は「リアルタイム3D技術は、ゲームエンターテインメントだけでなく建築業界や製造分野、自動車など、あらゆる産業の中で日々革命を起こしている」と胸を張る。
日本における産業別のDX推進の現状と課題
さらに松本氏は、デジタルツインによって企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進できると語り、日本における産業分野の事業戦略として「建設」「インフラ(鉄道・道路・電気・通信)」「製造分野」「自動車」「小売」の5つの領域における現状と課題を指摘した。まず、建設分野について、松本氏は「BIM(Building Information Modeling)モデルをリファレンスとし、3D化や4D/5Dの導入が推進されている。また労働人口の不足についても直面している」と現状を捉えているという。そして、「建設現場でのBIM利用は発展途上。作業効率の向上や手戻り等の減少に向けたデジタル導入が急務で現場効率の向上が期待される」との見解を示す。
2つ目のインフラ分野では「インフラ・設備におけるメンテナンス業務が各企業の負担となり、さらに技術継承と人材の高齢化が進んでいる。通信分野では5G活用などの新たな分野への投資が行われている」と現状を分析。課題と今後の期待として「ドローン、AIなどの導入によるメンテナンス効率の向上」「通信分野におけるスマートシティでの人・物流管理等での5G/IoTの利活用」が期待されると説明する。
3つ目の製造分野の現状として、松本氏は「製造工程における自動化が加速しており、ロボティクス産業の成長が見込まれる。また、大企業だけでなく中小企業でのオートメーション化やタクトタイム(1つの製品の製造にかける時間)の短縮が期待される」とコメント。その一方で「産業機械には、より複雑なラインのシミュレーションやロボット制御、導入プロセスの迅速化が必要」と分析する。
4つ目の自動車分野では「CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)を代表とした100年に一度の変革期にあり、エレクトロニクス・デジタル技術を用いた革新が必要だ」と説明。同分野の課題として「自動運転開発におけるシミュレーション、電気自動車・次世代燃料車の生産拡大に向けた製造設備の更改」「次世代HMI(運転席のメーターパネルに置き換わるデジタル情報パネル)、IVI(情報や娯楽を提供するシステム)の開発導入の加速と販売におけるイマーシブな体験の提供」の2点を挙げた。
最後5つ目の小売業界では「オンラインショッピングへの遷移が加速しつつある中、労働人口の減少による就業者対策も必要」との見方を示す。その上で「EC事業の倉庫・ロジスティクスの構築、店舗レス販売における顧客体験の向上」「衣料分野におけるバーチャル試着などのデジタル化」が期待されると説明した。 【次ページ】Unityが定義する「デジタルツイン成熟度モデル」とは?
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