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- 2022/10/10 掲載
24年ぶり為替介入でどうなる? 利益を得るのは「日本人ではない」という残念な現実
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
「政府の為替介入」「日銀の金融緩和」が矛盾であるワケ
日本政府は、9月22日にドル売り・円買いで為替市場に介入した。他方で日本銀行は同日、介入に先立つ政策決定会合で、金融緩和政策の継続を決定した。以下で詳しく説明するように、日銀が金融緩和政策を継続する以上、政府が為替介入を行っても、その効果は限定的なものにならざるを得ない。あるいは、効果がまったくなくなってしまう。
政府と日銀の政策方向が矛盾しているのではないかとの批判があるが、まさにその通りなのである。こうした事態は、これまでなかったことだ。日本経済が大きな危機に直面する今、経済政策に関して前代未聞の混乱が生じている。
円高にするのが本当に望ましいのであれば、政府は日銀に対して金融政策の変更を求めなければならない。そうしたことを行わず、いたずらに円高介入を繰り返しても、国民や企業を混乱させるだけだ。
この問題はかなり専門的な内容を含んでいて、分かりにくいところが多い。しかし、日本にとって最も重要なことの1つなので、一部の専門家に任せるわけにはいかない。多くの国民が理解している必要がある問題だ。そこで以下では、介入の効果について、できるだけ分かりやすく説明することにしよう。
ドル売り・円買いの為替介入とは?
日本政府は外貨準備として、ドルを保有している。ドル売り・円買いの為替介入とは、これを売却し、そして円に替える(なお、この操作は、財務大臣の決定と指示にしたがって、日本銀行が実行する)。この取引の決済は、政府と民間銀行が日銀に保有する当座預金を通じて行われる。すなわち、銀行の日銀当座預金の残高が減少し、政府預金の残高が増加する。
銀行は日銀当座預金が減るので、その減少分を埋めるために、無担保コール市場などで資金調達を行う。それによって、短期金利に上昇圧力がかかる。つまり、日銀が金融緩和政策をやめて、引き締め政策に転じたのと同じ効果が発生する。
【次ページ】政府と日銀の矛盾した政策で“利益”を得るのは誰か?
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