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  • 2022/09/21 掲載

伊予銀行に聞くDX施策、アクセンチュアがもたらした「デザイン力」による劇的効果とは

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愛媛県に本社を構える伊予銀行。同行は、デジタルが得意な部分は徹底的に活用し、行員は人にしかできない価値提供に専念するという業務・システム改革に当たり、「Dagital-Human-Dagital」の頭文字を取った「DHDモデル」というコンセプトを掲げている。具体的には、口座開設などの各種手続きを渉外用タブレットや顧客のスマホから行えるシステム開発などで、取り組みへの成果も出てきているようだ。DHDモデルのもとで進められる改革は単なるデジタル化とどう違うのか。そもそもなぜ、DHDモデルというコンセプトが生まれたのか。伊予銀行総合企画部次長の石川秀典氏に詳しく話を聞いた。
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Digital-Human-Digital(DHD)モデル
(後ほど詳しく解説します)

人とデジタル、それぞれの強みを生かす改革とは何か

 そもそも、伊予銀行が掲げる「DHDモデル」とは具体的にどのようなコンセプトなのだろうか。

 「Digital-Human-Digital」の頭文字を取ったDHDモデルは、「デジタルタッチポイント」「ヒューマンコンサルティング」「デジタルオペレーション」という3つのキーワードを核とするという。

 同社が初めてDHDモデルを提唱したのは、2018年度中期経営計画から。その1つ前の2015年度中期経営計画の段階で、すでに伊予銀行が目指すべきモデルの議論はスタートしていたが、BPR戦略やICT戦略を検討する過程で、DHDモデルのイメージが徐々に固まっていったという。伊予銀行総合企画部次長の石川秀典氏は、DHDモデル誕生の背景と経緯についてこう説明する。

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伊予銀行
総合企画部次長
石川秀典氏

「デジタル化を進めなければならないという認識は、当時から行内全体でありました。しかしデジタルを導入するだけでは、その強みを生かすことはできません。業務フローそのものの抜本的な見直しが必要になります。まず総合企画部内に事業戦略室を設けて、各部署で横断的に議論する体制を構築しました。そしてビジネスフローやチャネルのあり方の見直しを検討する過程で取り組みを始めたのが、DHDモデルです」(石川氏)

 DHDモデルという言葉が生まれた背景には、地方銀行ならではの課題と使命があったと石川氏は語る。

「生産性向上という課題と地域密着のビジネスモデルの構築という使命の2つを、両立しなければならない立場にあるのが地方銀行です。人口減少・来店客減少・デジタル化など、さまざまな時代の変化に対応するのはもちろんのこと、お客さまのライフスタイルの変化にも対応する必要があります。しかし、単にデジタル化するだけでは他行との差別化はできません。ネットバンクにはない『人に優しいデジタル』を目指そうという発想から、DHDモデルという言葉が生まれました」(石川氏)

 石川氏はDHDモデルによって目指す姿を以下のように説明する。

「要は『人とデジタルを融合させて高め合う』ということです。デジタルが得意なところはデジタルが行い、人にしかできないところは人が行うというやり方は、ネットバンクにはできないことだと考えています。当行が目指しているのは人間中心のDXです。デジタルだけでは限界点があります。人が関わっていくことによって、人でできない付加価値をつけるとともに、デジタルの強みも引き出していけるのではないか、差別化を図れるのではないかと考えて、DHDモデルに取り組んでいます」(石川氏)

 人がコンサルティングや提案などのクリエイティブな分野を担い、デジタルが顧客接点での展開とオペレーションを担うことで、デジタルと人との役割の分担や融合が可能になるのである。

各種手続きがどこでもできる新システム

 このDHDモデルによる改革により、伊予銀行は「人に優しいデジタル」と「銀行を、人に合うかたちに変えていく」の2点を実現させるとしている。

 「銀行を、人に合うかたちに変えていく」という理念を具現化する上で象徴的なのが、DHDモデルにおいて誕生したサービスである、「AGENT」だ。同システムは口座開設やキャッシュカード作成といった従来銀行の窓口で行っていた各種手続きを、スマートフォンやタブレット上で行うことができるシステムである。

画像
図表1:DHDブランド戦略の展開
(出典:伊予銀行)

 同社では、AGENTシステムを搭載した店舗受付タブレットの導入を2019年2月より営業店で順次開始。その後、渉外に持ち出せる機能を追加した。さらに21年6月からは同システムのスマートフォンアプリがリリースされ、行員だけでなく、一般のユーザーが自分で使えるようになった。

 システムの普及について、「AGENTタブレットの導入が大きな一歩になった」と石川氏は語る。

「店頭受付のタブレットを例に取ると、お客さまが来店した際に、まず総合受付で要件をうかがいます。総合受付機でキャッシュカードをスワイプしてもらい、二次元バーコードを発行。お客さまが窓口に呼ばれて、行員が二次元バーコードをタブレットのカメラで読み取った時点で、お客さまデータの取得が完了します。『お客さまが記帳する』『印鑑を押す』といった行為が一切不要になるオペレーションを実現しました」(石川氏)

 データがデジタルで入力されるため、事務手続きのミスもなくなった。このほかにもAGENTには多くのメリットがある。フェイス・トゥ・フェイスの対応が可能になったことも、メリットの一つだという。

「紙に記帳してもらう場合には、行員もお客さまも下を向いている状態が長く続いていました。しかし、タブレットを斜め前に置くことで、お互いの顔を見ながら手続きを進めることが可能になりました」(石川氏)

 手続きが簡易化されたことによって、顧客の利便性を高めるとともに、行員の作業の効率化も実現している。

「チャット形式を採用しており、基本的な進め方は一問一答形式です。チャットに応じて手続きを進めると、手続き完了というゴールにたどり着きます。なおかつ、マニュアルレス化できているため、新入行員でも一度使って慣れると、すぐに活用できます。たとえば、相続の手続きに関しても、お客さまにヒアリングしながら進めていくと、画面に家系図や必要な書類のリストが出てきて、手続きの大幅な簡略化が実現しました」(石川氏)

【次ページ】口座開設の時間を3分の1にした改革の全貌
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