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- 2022/08/16 掲載
コロナ禍でも保険会社が「採用を継続」した理由、そのニーズの変化とは?
【全体概況】顧客獲得は対面からCXへ
保険業界はここ2年ほど、採用意欲が旺盛です。コロナ禍で多くの業界が採用を一時見合わせたにも関わらず、生命保険各社が採用を継続したため、転職希望者の受け皿となっていたたほどです。一体何が起きているのでしょうか。まずは採用側についての視点から見てみましょう。言及した通り保険業界の採用活動は活発で、営業職とDX人材の求人が多いトレンドも、数年前から続いています。しかし採用側が求める「営業」や「DX関連人材」の仕事内容は、以前とはかなり異なっていると感じます。
保険業界はコロナ禍で、対面営業に大きく制約を受けました。特に生保業界は、最前線の営業社員が収益のトップラインを押し上げるという、伝統的な戦略が通用しづらくなっています。
このため、Webサイトの問い合わせ窓口にアクセスしてきた人に、担当者がライフプランを作ってアプローチしたり、しっかりアフターフォローしたりするなど、デジタルツールを活用したCX(顧客体験・カスタマーエクスぺリエンス)へと、営業手法がシフトしつつあるのです。これによってDXやCX企画などの専門人材を確保・育成する必要性が高まり、ジョブ型人事制度を導入するといった動きも出ています。
損保業界では、気候変動や感染症などの社会的なリスクに素早く対応し、現在進行形で保険商品を企画できる人材のニーズが高まっています。商品開発を加速させ、事業の多角化を目指すにあたり、シーズを持つ企業を買収する必要もあるため、M&Aやファイナンス人材にも需要があります。
また損保業界では、たとえばAI導入が進む自動車メーカーと手を組み、データの中からリスクの発生率を算出して商品に生かすなど、業界を超えた連携も必要になっています。このためDX関連の技術者も、データサイエンスなどより専門的・先端的な技術を持つ人材が求められています。
求職者側についてです。保険業界は他業界に比べて、人材の流動性が高い職種と低い職種の差が激しい業界と言えます。
若手の一部には、専門性の獲得を目指した転職もありますが、全体としては仕事と家庭の両立、残業・転勤の有無など、ダイバーシティとワークライフバランスを基準とする求職者が多い印象です。営業社員の割合が多いこと、中でも女性の保険外交員を雇用してきた経緯から、業界全体の女性比率が高いことも背景にあるでしょう。
こうした働き手のニーズを受け、業界側も他の業界に先駆けた環境整備に取り組んできました。ある企業では、社員の望まない転勤をなくす方針を打ち出し、別の企業では、勤務地限定社員であっても配偶者の転勤や介護などが生じた場合、勤務地を変更できる制度を設けています。
では、年代別に求人・求職について見ていきましょう。
【20代】やりがいある部署へ配属、未経験者も採用
採用側についてです。保険業界も銀行・証券などと同様、若手を新規事業や専門性の高い分野など、やりがいのある部署へ意識的に配属し、外部人材の獲得と社員のリテンションを図っています。それに加えて生保業界は、販売・飲食業界などにいた未経験者や、しばらく仕事から離れていた人を採用し、顧客のアフターフォローやコールセンター系の要員を確保しようとしています。エンジニアやセキュリティ分野など、DX関連の専門人材にも高いニーズがあります。
求職者側についてです。一部の若手営業社員の間に将来、営業がデジタルツールへと代替されるのではないかという懸念が広がり、転職を目指す動きが見られます。こうした人々は、異業種や営業以外の仕事で、より専門的なスキルを身につけようとする傾向にあります。金融業界を顧客とするIT系企業や、コンサルティング会社などを目指す人も増えています。
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