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- 2021/12/08 掲載
なぜ日本では所得が上がらない? 政府方針と調査から考察する「賃上げ」への道
国内企業は、自社の賃上げに前向き?
政府は2021年11月19日の臨時閣議で「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を決定した。過去最大となる55兆7,000億円の財政支出となり、実質国内総生産(GDP)の押し上げ効果の5.6%程度を見込んでいる。また、政府は2022年度の税制改正で賃上げを実施した企業を対象とする税制優遇について、控除率の大胆な引き上げなど制度を強化すると表明している。日本国内における賃金の状況はどうなっているのか? 帝国データバンクでは、2021年11月16日に「2022年度の賃上げに関する企業の意識アンケート」を公表している。自社において2022年度(2022年4月~2023年3月)の賃上げをどのように考えているかの問いに対して、「税制優遇幅に関わらず賃上げを行う」と回答した企業は48.6%。さらに税制優遇が大きければ79.4%の企業が賃上げに前向きな回答となった。
また、「税制優遇幅に関わらず賃上げを行う」と回答した企業を規模別にみると、大企業では53.6%、中小企業では47.9%とそれぞれ約半数となった。一方で、財務力が比較的弱い小規模企業では、37.6%と全体(48.6%)より10ポイント以上低い。さらに小規模企業においては「賃上げできない」と考えている企業が13.5%と、全体(8.1%)を大幅に上回っている。
厚生労働省が2021年11月19日に公表した令和3年「賃金引上げ等の実態に関する調査」では、「1人当たりの平均賃金を引き上げた・引き上げる」の企業割合は80.7%と前年の81.5%を下回った。また、1人平均賃金の改定額(予定を含む)は4,694円で、同じく前年4,940円を下回っている。「1人当たりの平均賃金を引き上げた・引き上げる」と答えた割合が最も多かったのは「学術研究、専門・技術サービス業」で93.7%。「不動産業、物品賃貸業」93.2%、「製造業」が90.7%と続く。
日本経済団体連合会(経団連)は2021年11月17日、2021年3月卒業見込みに対する「新規学卒者決定初任給調査結果」を公表した。初任給の推移をみると、2014~2019年は業績の回復・拡大によって増加傾向にあった。しかし、2020年から減少に転じた。2021年調査では、対前年引上げ率について、8年ぶりにすべての学歴で0.5%を下回る水準となっている。
先進国で賃金が伸びない日本、その理由
世界の先進国と比べると、日本の平均賃金の下落が突出している。その一例として、全労連によるOECD(経済協力開発機構)加盟国の実質賃金指数の推移の国際比較を見てみよう。それによると、1997年を100とした場合の実質賃金指数の推移を比較すると、スウェーデンは138.4、オーストラリアは131.8など、先進国が100を上回っている。対して、日本は89.7と100を割っている状況だ。
【次ページ】政府は、分配戦略で賃上げに積極的な企業を支援する方針
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