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世界的なSDGs(持続可能な開発目標)などの取り組みを背景に、国内の地域における持続可能性の向上や地域循環共生圏の創出につながるESG地域金融への注目が高まりつつある。環境省は7月26日、2021年度の「地域におけるESG金融促進事業委託業務」の支援先金融機関(地域金融機関)として、地方銀行や信用金庫などの12機関の10案件の採択を発表。ESG地域金融の実践に向けての後押ししている。ESG地域金融とは何か、どのように実践していくべきなのか。「ESG地域金融実践ガイド2.0」などの内容を踏まえ、解説する。
ESG地域金融とは何か?その本質とは
ESG地域金融とは、地域の金融機関が環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を重視し、積極的に投資を進めていく新しいファイナンスの仕組みだ(2021年3月30日に環境省が公表した「ESG地域金融実践ガイド2.0」による定義)。具体的には、ESGの要素を考慮した事業性評価と、それに基づく融資・本業支援などがある。
ESG地域金融の本質は、これまでも地域や地域企業の課題解決に向けて地域金融機関が取り組んできた施策に内在しているものであり、「ESG地域金融実践ガイド2.0」では、ESG地域金融は「目新しいものではない」とされる。
ESG地域金融と地域金融機関の役割
ESG地域金融の実践について地域金融機関には、地域の核として地域資源を活用し、インパクトを生み出す取り組みへの資金の流れを太く強くするための役割が求められている。
地域経済は、超少子高齢などの社会課題といった大きな環境変化に直面している。そのため地域金融機関は、地域のESG課題を積極的に掘り起し、ファイナンスに関する豊富なノウハウを生かして、その新たな事業構築に関与・協力することが重要である。
ESG地域金融の実践にあたっては、「ESG地域金融実践ガイド2.0」にまとめられている。
現在、多くの金融機関のESG地域金融の重要性に関する認知は進んでおり、本ガイドでは、今後に向け「金融業務における理解の促進」「取り組む項目の明確化」「ノウハウの構築」「組織体制の整備」という4つを実践することがいかに重要かが示されている。
地域金融機関は、ESG要素に着目して、地域資源と地域課題を活用・解決する事に取り組む企業の価値を見出し、事業性評価により、融資や本業支援を実践する。これらの取り組みを実践することで、地域の持続可能性を高め「地域循環共生圏」の構築に貢献することが、求められている。
なぜESG地域金融が必要なのか
改めて、なぜESG地域金融が必要なのかだろうか。ESG要素に着目し地域企業の価値を発掘・支援を行うことは、地域金融機関にとっても新たなビジネスチャンスをつかむ可能性にもつながるためだ。
地域金融機関では、中長期的な目線で取引先の資金ニーズの背景を深く理解し、取引先の価値向上につながる提案をすることが求められている。地域の持続可能性の向上に向けて、地域金融機関の役割が大きくなっており、ビジネスチャンスをつかむための大きな機会をとらえることもできる。
ESG地域金融の成否は、地域金融機関の経営者のコミットメントがカギとなる。経営者は、ESG地域金融を経営課題として認識し、将来のあるべき姿の実現に向けて経営方針・戦略を策定し、組織への浸透を図ることが求められる。その際、足元の状況を踏まえつつも、中長期目線での戦略構築が重要となる。
たとえば、ESG地域金融の実践を通じて、持続可能な形で脱炭素社会を実現することを目的とした場合、2030年に向けたビジョンを提示し、その実現に向けた戦略を構築するといったイメージだ。その場合、カギを握るのは「最初の10年」だという。
また、地域の多様なステークホルダーとの連携が必要となることを踏まえつつ、地域資源の把握・理解して広い視点から将来像を描くとともに、個別の視点から実施すべき事項のインパクトを考慮して検討していくことが重要となる。
さらに地域金融機関には、地域のさまざまな主体が役割を果たし、相互補完関係を構築するとともに、地域外とも密接な関係を持ちながら、多面的に連携・共創する地域経済のエコシステムに貢献する取り組むことが求められる。
【次ページ】ESG地域金融の実践への3つのアプローチ