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- 2021/08/12 掲載
【独占】GMO熊谷正寿 社長を直撃、NFTがなぜ「ブロックチェーンに続く衝撃」なのか?
NFTはインターネットやブロックチェーンに続く「第3の衝撃」
インターネット事業を立ち上げてからの26年で、僕は3つの衝撃を受けました。1つ目はインターネットの台頭。2つ目がブロックチェーンの普及。そして3つ目がNFTの登場です。今は会う人に「NFTの登場は革命的」と言っています。なぜ、NFTが革命的なのか。それは、モノの販売における課金形態を一変させる仕組みを、NFTが持っているからです。
書籍を例にしてみます。Amazonや紀伊国屋書店などの1次流通の書店で購入された書籍については、当然ながら収益が著者や出版社に入ります。
しかし、ヤフオクやブックオフなどの2次流通になると、たとえ書籍が購入されても、今のところ著者や出版社に収益は入りません。2次流通以降では、著者など書籍を創る立場の人たちは蚊帳の外に置かれ、収益機会を逃しているのです。
これがNFTを利用することによって、2次流通以降の書籍購入に対しても、著者や出版社に収益が入るような設計が自由にできるようになります。NFTは、「この書籍がまさにいま購入された」ということを、2次流通以降も証明するものだからです。
もちろん、この仕組みは書籍に限ったことではありません。NFTを利用すれば、アート作品、音楽、ゲーム、アイドル画像をはじめ、あらゆるモノについて、2次流通以降でも知的財産所有者(IPホルダー)たちに課金がなされ、収益が入る設計にすることができます。しかも、モノがデジタルかリアルかは問いません。
NFTは、よく「偽造不可能な所有証明書」と説明されます。僕もそう表現することはあるし、このことを強調する人は多くいます。
けれども、それよりも、IPホルダーたちに正当な収益が入るような課金形態を実現できることのほうが、僕はNFTでは重要だと思います。これまでの社会では難しかったことがNFTで簡単にできてしまう。いわば、デジタルコンテンツ流通革命です。だから「NFTの登場は革命的」と捉えているのです。
なぜGMOがNFTマーケットプレイスを手がけるのか
NFTのこうした特徴を生かすためには、モノの売買でIPホルダー向けにも課金がされるような場、つまり「NFTマーケットプレイス」の存在が必要です。そこで、僕たちは、「Adam byGMO」というNFTマーケットプレイスをこの8月に開設しようと、準備を進めているところです。NFTの存在自体は、2020年にはすでに認識していました。NFTマーケットプレイスを開設しようと思ったのは2021年に入ってからです。3月に、ジャック・ドーシー氏が2006年に投稿した「世界初のツイート」のNFTが約3億円で落札され、話題になりましたよね。そうしたできごともあり、一気に世界中でNFTが認知され、利用されるようになりました。
急速にNFTが普及しはじめた背景には、「カジノ効果」があると思います。つまり、カジノで儲けた人たちが財布の紐を緩めて、カジノ周辺の高級ブティックで服を次々買うのとおなじように、仮想資産の取り引きで儲けた「億り人」たちが財布の紐を緩めて、デジタルオークションなどでNFTを次々購入するようになったわけです。
なぜGMOがNFTマーケットプレイスをやるのかですが、僕たちが新事業の立ち上げを検討するときは、「自分たちの事業ドメインに含まれるか」で判断します。
たとえば、僕はブロックチェーンで3つのことしかやらないと言いました。それはエクスチェンジ、マイニング、ペイメントの3つです。エクスチェンジはGMOコインで、マイニングを欧米でやり、ペイメントはステーブルコインをやっています。GYENを世界で最初の日本円連動ステーブルコインとしてリリースしました。
一方、NFTはブロックチェーン技術を使っているものの、まったく新しいマーケットとして立ち上がったとみています。中でもNFTマーケットプレイスはネット上のインフラであり、このインフラを提供するのは僕たちのすべき事業だと判断しました。また、僕たちのこれまでの知見を生かせると思ったのも参入を決めた理由です。
インターネットの黎明期からさまざまな事業が出てきましたが、「僕らがやるべきか」「僕らがやるべきことではないのか」を常に見極めてきており、たとえば僕らはコンテンツには手を出してきませんでした。
【次ページ】火付け役は音楽やゲームなどのファンたち、転売問題も解決へ
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