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- 2020/09/01 掲載
政府も後押しする「バーチャル株主総会」、実施した企業は? 実現への道を解説
コロナ禍で変わった企業決算と株主総会
3月決算企業の株主総会が6月中旬から下旬にかけて各地で開催されたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、大きな変化がみられた。日本経済団体連合会(経団連)は、2020年4月28日、「新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえた定時株主総会の臨時的な招集通知モデルのお知らせ」を公表し、株主の数を一定程度限定することや、株主の来場を原則ご遠慮いただくことを企業に促した。
金融庁では、有価証券報告書などの提出期限について内閣府令を改正し、一律で9月末まで延長することを公表している。経産省でも「株主総会を開催するリアルの場所を設けつつ、オンラインなどでの参加/出席を認める株主総会を実施することは、現行法上可能」との声明を発表している。
一部の企業でも「3密」を避けるために、試行錯誤しながらインターネットを活用して株主がバーチャルで参加可能な「バーチャル株主総会」を実施した。政府も活用に向けたルールなど「バーチャル株主総会」を推進するための後押しを始めている。
With/Afterコロナの時代に、企業の「バーチャル株主総会」の活用は進むのだろうか。
経産省が策定した「ハイブリッド型バーチャル株主総会」の実施ガイド
経済産業省は、2019年8月、株主総会当日の新たな電子的手段の活用のあり方や、近年の内外の制度整備や実務の積み重ねを踏まえた環境整備などについて検討するため、「新時代の株主総会プロセスの在り方に関する研究会」を設置した。本研究会では、2020年2月26日、ハイブリッド型バーチャル株主総会を実施する際の法的・実務的論点や具体的取り扱いを明らかにする「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」を策定し、公表した。
経済産業省では、ハイブリッド型バーチャル株主総会について、次のように定義している。
本実施ガイドでは、ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施を検討する企業のために、その法的・実務的論点ごとの具体的な実施方法や、その根拠となる考え方を示している。
また、本実施ガイドでは、株主総会にインターネットなどの手段を用いて参加する株主が会社法上の出席となるか否かによって「参加型」と「出席型」に分類し、それぞれの取り扱いを提示している。
ハイブリッドバーチャル株主総会の「参加型」と「出席型」の違い
ハイブリッドバーチャル株主総会では、「参加型」と「出席型」に大きな違いがある。ハイブリッド参加型バーチャル株主総会は、遠隔地などリアル株主総会の場に在所しない株主が、会社から通知された固有のIDやパスワードによる株主確認を経て、Webサイトなどで配信される中継動画を傍聴するような形態だ。
参加型においては、基本的にインターネットなどの手段を用いて参加する株主は「出席」していないため、当日の決議に参加することや会社法上の質問や動議はできない。一方、議長の裁量において参加者から受け付けたコメントなどを取り上げるといった対応は可能だ。そのため、あらかじめ招集通知などで傍聴を案内する際には、事前行使を行うよう促すことが必要となる。
一方、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会は、遠隔地などリアル株主総会の場所に在所しない株主が、インターネットなどの手段を用いて、株主総会に会社法上の「出席」ができる形態だ。
現行の会社法の解釈において、「開催場所と株主との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されている」ことを前提に、出席型による開催が許容されている。
本実施ガイドでは、リアル株主総会で一般に行われている実務を応用することを「基本」として考えつつも、インターネットなどの手段を用いた出席は新しい出席形態であることを踏まえ、現在利用可能な技術を前提に、新しい「あるべき実務」とその根拠となる法的考え方を整理している段階だ。
本実施ガイドの策定は、2020年2月に策定されたものであるため、新型コロナウイルス感染拡大について考慮されたものとはなっていない。
経産省が整理したハイブリッド型バーチャル株主総会の活用状況
経済産業省は、2020年7月22日、『「新時代の株主総会プロセスの在り方研究会」報告書』の取りまとめを公表した。本報告書では、ハイブリッド型バーチャル株主総会の活用状況についても整理している。2020年3月以降の株主総会において、ハイブリッド型バーチャル株主総会は新型コロナウイルス感染症の拡大防止策としても検討され、さまざまな形態で実施されている。また、ハイブリッド型バーチャル株主総会の開催例も取り上げている。
「出席型」においては、議決権行使の方法や質問の受け付けにあたって複数の方法が取り組まれている。「参加型」も、株主の双方向のコミュニケーション方法にはいくつかのバリエーションが挙げられている。
ライブや事後の動画配信は行わない場合でも、株主総会プロセスにおける質問受け付けや株主総会当日、もしくは後日の回答という形で、株主総会プロセスにおける双方向のコミュニケーションに取り組んだ企業も挙げている。
「出席型」に求められる「場所」と株主との間の双方向性と即時性の両方を満たすことについては、急な対応が困難だったと考えられる。一方、「参加型」や株主総会プロセスを通じてインターネットを活用した双方向の株主とのコミュニケーションは、企業が株主総会当日のあり方を考える上で取り組みが必要な点であると示唆している。
【次ページ】6月開催の株主総会で、ハイブリッド型バーチャル株主総会を実施した会社は?
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