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  • 2020/04/27 掲載

クリス・スキナー氏が語るフィンテック、なぜ金融機関は“子供”に勝てないのか

金融テクノロジーの権威

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金融テクノロジーやフィンテック分野の著作や論評活動で世界的に広く知られるクリス・スキナー氏。スキナー氏は世界におけるフィンテックの最新事情についてフィンテックビジネスの担い手が”子供”である点を指摘し、従来型の金融機関が「破壊者」になる必要があると説く。なぜ従来型の金融機関ではイノベーションを起こせないのだろうか。
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ヨーロッパ最大のフィンテック系ユニコーン企業 Revolutの創業者 ニコライ・ストロンスキー氏はまだ30代。なぜフィンテック領域で“大人”は負かされてしまうのか
(出典: FINOLAB CHANNEL)

※本記事は、FINOLABが3月に開催したイベント「『4F(Future Frontier Fes by FINOLAB)』2020~REBOOT」 の中の『4F Keynote Presentation: Doing Digital』」の講演内容をもとに再構成したものです。


金融界の勢力地図を急速に塗り替えつつある新興フィンテック企業

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クリス・スキナー氏
(提供: FINOLAB)
 クリス・スキナー氏は、「Digital Human」「ValueWeb」「Digital Bank」など、金融テクノロジーに関する数々の著作を世に送り出してきたほか、「The Finanser.com」という自身のブログで金融市場やフィンテックに関する論評活動を長年展開している。また「The Financial Services Club」「Nordic Finance Innovation」などのネットワーキング組織の主催者としての顔も持つ。

 同氏は、書籍やブログの執筆を始めた当時はフィンテックという言葉がなかったと説明。リーマンショックが起こり、その危機感を背景に2010年代初頭から新たなアイデアと考え方を持った新興企業が急速に台頭した結果、フィンテックの潮流が形作られるようになったと振り返る。

「現在、世界中で新型コロナウイルスが大きな被害をもたらしていますが、リーマンショックの時と同じく、今回も危機感を背景に世界中から新たなアイデアや考え方を持った企業が出てくるでしょう」(スキナー氏)

 現在、フィンテックは世界中の人々の金融サービスの体験、ひいてはライフスタイルそのものを大きく変えつつある。こうしたイノベーションがそもそも可能になった背景について、スキナー氏はテクノロジーの進化、特に「クラウドコンピューティングとスマートフォンの普及」を挙げる。

 2007年ごろに登場したクラウドとスマートフォンの技術によって、今日でいうところの『オープンバンキング』や『オープンファイナンス』が可能になり、これらの技術を武器に、新たにビジネスチャンスをつかんだフィンテック新興企業が急速な成長を遂げている。

「現在1万2000社を超えるスタートアップ企業がフィンテックに焦点を当てており、世界中から莫大な額の資金が集まっています。2019年まで世界のフィンテック投資額は毎年倍増を続けており、今後はさすがにこれほどの伸びは期待できないものの、引き続き大きな投資が継続すると見られています」(スキナー氏)

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「2019年まで世界のフィンテック投資額は毎年倍増を続けている」
(出典: FINOLAB CHANNEL掲載資料)

10代の若者たちが金融サービスのイノベーションをリードする

 スキナー氏は、現在ヨーロッパで急速に成長しているフィンテック企業の一例として、英国のチャレンジャーバンク(銀行ライセンスを持つモバイル専業銀行)であるモンゾ(Monzo)を挙げる。個人の口座に勤務先から給与が振り込まれ、ローンや光熱費などが引き落とされる旧来型の銀行のユースケースとは異なり、Monzoは主に「ライフスタイルに関する銀行業務」を行う。

 すなわち、日々の地下鉄の運賃やスターバックスコーヒー、ランチなど日々の生活に密着した支払いに使われる。同社のようなチャレンジャーバンクは、顧客の生活に関するさまざまなデータを分析し、その結果を基に顧客のライフスタイルにより寄り添ったバンキングサービスを提供することで顧客数を急速に増やしつつある。スキナー氏によれば、現在ヨーロッパではこうした新たなタイプの銀行と、従来型の銀行サービスの用途が二分化しつつあるという。

 またスキナー氏はもう1つの例として、P2P送金サービス「TransferWise」を挙げる。英国出身で現在はポーランド在住の同氏は日ごろから海外送金の機会が多いが、TransferWiseを活用することで従来の送金サービスにはなかった「リアルタイムで国境を越えた送金」が可能になり、日々の生活に大きな利便性をもたらしているという。

 同氏はこうした新たなフィンテックビジネスの担い手たちが、多くの場合低年齢の若者たちで占められている点に着目する。その代表選手の1人が、イーサリウムの開発者として知られるヴィタリック ブテリン氏だ。

「ブロックチェーンはデジタルアイデンティティや決済サービスなどのプラットフォームとして極めて大きな可能性を持つ技術ですが、その1つであるイーサリウムはブテリン氏がわずか19歳のころに開発したものです。今、彼のように才能ある若者たちが、金融の世界に新たな潮流を形成しつつあります」(スキナー氏)

 子供たちにお金の教育をするための暗号通貨『KIDLetCoin』は、まだ10歳の少女だったカエデ・タケナカさんが設立したものであり、ヨーロッパ最大のフィンテック系ユニコーン企業であるRevolutの創業者であるニコライ・ストロンスキーはまだ30代、そして世界最大のフィンテック系ユニコーン企業であるストライプ(Stripe)は、ジョンコリソンとパトリックコリソンの2人の兄弟が19歳と21歳の時に設立した会社だ。

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ストライプ(Stripe)創業者の、ジョンコリソンとパトリックコリソン
(出典: FINOLAB CHANNEL)

「このように、10代の子どもたちがコードを書いて、金融サービスを作り直しているのです。従来の金融界の人々が金融界隈のビジョンを以って作り直しているのではなく、既存の金融業界の常識に縛られない子どもたちがイノベーションを大胆に推し進めている事実に着目する必要があります」(スキナー氏)

【次ページ】フィンテック企業に対抗すべくデジタル企業への脱皮を図る従来型金融機関
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