- 2024/10/08 掲載
金融行政方針でも言及「生成AI」、金融庁やFISC調査での「見解と示唆」とは?(3/3)
金融庁が示した「汎用的AIモデルのアプローチ」
導出された現状の問題点に対し、汎用的なAIモデルの適用による試行運用が行われた。汎用的なAIモデルの実証環境は次の通りとされた。- (1)AIモデルに読込可能な形式のデータを作成
- (2)AIにインプットするデータセットを用意
- (3)AIが支援先を自動で判定し結果を出力
- (4)出力結果を踏まえた職員による支援候補先の選定
こうした試行運用の結果、本件事業に協力した地域金融機関からは「スコアという客観的な数値でもって経営改善支援先を絞り込めることから、経営改善支援の候補先抽出にかかる業務負荷は軽減される」といった意見があった。また、「従来とは異なる目線での選定により、対象企業が拡大することから、経営改善支援の早期着手の観点においても望ましい」という意見が表出された。
本件事業での汎用的なAIモデルの試行運用は一定の成果を収めたことが確認されている。
金融庁の取り組み事業から得られる「示唆」をまとめると?
本件事業はあくまでAIの利活用を前提に、こうした要支援先の効果的な特定作業が実現可能かを検証することが目的とされた。ただし、本件現状把握作業を通じて、現在の地域金融機関における要支援先の特定作業がいかに非効率かつ属人的なスキルによって実現されていたかが、その作業ボリュームやプロセスとともに可視化されたことは、大きな収穫であったと言える。
つまり、必ずしもAIを活用することを前提とするのではなく、導出された問題点を1つひとつ潰していく自行庫内での検討作業そのものが、今後の地域金融機関にとって極めて有効な手続きとなるということだ。
こうした作業はいわゆるBPR(Business Process Re-engineering)そのものであり、要支援先の特定作業にとどまらず、本来は本店、営業店のあらゆる業務を対象に検証がなされるべきでもある。
その上で、現状評価作業を通じ、ツールとしてのAIあるいはRPAの導入効果を検証し、より適切なツールを対象プロセスに組み込むことが重要なのであり、決してAI導入を前提に業務を見直すことが目的ではないことに留意が必要である。
なお、本件事業で構築された汎用的なAIモデルは、金融庁への利用申請を行うことで地域金融機関における実務での利用が可能である。
PR
PR
PR