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- 2023/06/19 掲載
政府が対処すべき“政治家に不人気な”重要課題、少子化対策も「現状 無責任」のワケ
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
“将来の労働人口”見通しが増加した裏側
国立社会保障・人口問題研究所による将来人口推計が4月26日に公表された。2017年発表の旧推計と比べて大きな違いは、若年者の人口が増えていることだ。具体的な数字で見ると、次のとおりだ。2040年における15~64歳人口は、旧推計では5977.7万人であったが、新推計では6213.3万人になった。約236万人の増加だ。増加率は、3.94%になる。冒頭の図1には、この数字が示してある。
出生率の見通しは下方修正されているので、これは外国人の増加によるものと考えて良いだろう。しかし、変化は、さほど大きなものとは言えない。以下の図2には、年齢別の人口構成を示す。
2040年を見ると、15~64歳人口が全人口に占める比率は、旧推計で53.9%であったものが、55.1%になっている。上昇していることは間違いないが、事態の本質を変えるような変化とは言えない。「誤差の範囲内」と言っても良いだろう。今後の出生率が想定より低くなれば、より大きな違いが生じるだろう。
今後日本が長期的に直面する問題、つまり労働年齢人口の減少と高齢者人口の増加という問題は、基本的に変わらない。
高齢化が進む「2つの要因」
高齢化が進む要因は2つある。1つは出生率の低下で、もう1つは平均寿命の延長だ。平均寿命の延長は望ましいことだが、出生率の低下は望ましくない。こうしたことから、出生率の引き上げが必要と考えられている。岸田内閣は、「異次元の少子化対策」を掲げている。これが、6月策定の「骨太方針」(経済財政運営と改革の基本方針)において、内閣の主要な大きな政策として位置付けられる。
しかし、これによって出生率が反転する保証はまったくない。実際、児童手当は民主党政権のときに拡充されたが、それによって出生率が上昇したとは言えない。今回も同様の結果に終わる可能性が高い。
そもそも、なぜ出生率が低下したかは、長らく議論されてきた問題だが、原因がはっきりしない。原因がよく分からない以上、政策の具体的な内容も決められない。今回も、出生率低下に関する詳細の分析が行われることはなく、ばらまき政策だけが先行して進められた。
高齢化がもたらす大問題
高齢化がもたらす第1の問題は、労働力不足だ。これに対処するため、女性と高齢者の就業率を引き上げる必要があり、そのための政策が行われている。こうした方向は評価したいが、4月24日の本欄で指摘したとおり、問題が多い。高齢者雇用については、企業に雇用を義務付けるだけで問題が解決できるわけではない。高齢者の生産性を上げつつ雇用を継続することが必要だ。そのためには、後述のデジタル化が重要な役割を果たすだろう。
また日本は、これまで外国人労働者に対して消極的な態度を取ってきた。技能研修制度も形骸化しており、適切に機能したとは考え難い。
これについて、外国人の受け入れに向けて特定技能の制度が大きく変わるのだ。 【次ページ】特定技能の「変更点」と「問題点2つ」
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