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- 2023/11/24 掲載
データセンター向け半導体市場の現状と今後、GAFAMも苦戦の省電力・データ急増の裏側
GAFAMが半導体製造に乗り出すのはなぜか
その中で確実に見通せるのが、膨大なデータを基に自律学習する生成AIの登場とアプリケーションの多様化による、データセンターでのデータ処理量の爆発的な増加である。処理を担うのは、言うまでもなくサーバ内の半導体だ。
こうした状況下、「GAFAM」に代表される巨大プラットフォーマーのとある動きが広く注目を集めている。それが、自身による半導体開発である。
巨大プラットフォーマーによる半導体の自社開発というと、GPUベンダーのチップの供給不足を背景とした、用途特化型AIチップの安定確保のみがその背景として注目されがちだ。
しかし、もう一つの背景として重要なのが、COP21でのパリ協定(2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組み)に基づく、二酸化炭素排出量の削減に向けた世界的な気運の高まりだ。
「増え続けるデータ処理量と消費電力が問題視され、従来からの自動車や航空セクターに加え、ITセクターにも二酸化炭素排出量の削減に向けた、より前向きな努力が求められるようになっています」と説明するのはPwC Intelligenceの祝出氏である。
GPU不足の解消が見込めない理由
無論、自社製造の理由はそう単純ではないはずだ。世界中で半導体不足が叫ばれる中、それがGAFAMの経営から機敏さを奪っていることは容易に想像がつく。
一方で、たとえばアップルは自然電力へのシフトを2018年に完了、グーグルは2030年までのカーボンフリーエネルギーへのシフトを目標に掲げるなど、社会的な責任を果たすための企業市民としての姿勢の明確化もある。
ともあれ、各種要因を背景に、個別機能に特化した半導体開発のスタートアップも相次いで誕生している。国内でもユニコーン企業であるAIベンチャーのPreferred Networksが、神戸大学と共同でAI向けの独自半導体を開発し、すでに提供を開始している。
「ハイパースケーラーの半導体製造を中心とした各社の動きを見ると、今後、GPU市場での寡占状態が崩れ、半導体の勢力図が用途別に書き換えられる可能性も決して小さくありません」(祝出氏)
ただし、直近を見れば、半導体を巡る状況はそう大きくは変わらなさそうだ。最たる原因が、半導体製造を担うTSMCなどのファウンドリーが現状において、世界的にごく限られることだ。GAFAMが半導体製造で頼る先も結局はそこだ。
「ファウンドリー各社は日本を含め、各国で工場の新設を積極化させています。とはいえ、本格稼働はしばらく先で、モノができない以上、GPU不足の解消はそう簡単には見込めません」(祝出氏) 【次ページ】電気を光に置き換えて電力問題を抜本解消
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