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中国のデジタル人民元や、米国連邦準備理事会、日本銀行などで中央銀行デジタル通貨(CBDC)の機運が高まる中、民間が開発を担うデジタル通貨も注目を集めている。3メガバンクなど70社以上からなるデジタル通貨フォーラムが2021年11月に公開した「二層構造デジタル通貨プラットフォーム」に関するホワイトペーパーは、日本発のデジタル通貨「DCJPY」が他のデジタルプラットフォームと多方面でつながり、さまざまな経済活動やビジネスが自らのニーズに合わせてデジタル通貨の機能を取り込むという展望が示されている。デジタル通貨DCJPYとホワイトペーパーで示されている「二層構造デジタル通貨プラットフォーム」について解説する。
デジタル通貨DCJPYとは何か?
「DCJPY(ディーシージェイピーワイ)」(仮称)は、発行や送金、償却を担う「共通領域」とアプリ・サービスを展開できる「付加領域」の二層構造を持つデジタル通貨である。
DCJPYは円と完全に連動する、円建てのステーブルコインとして設計され、当面は銀行を発行主体に想定しており、DCJPYを利用する場合は、デジタル通貨を利用するためのアカウント(口座)を開設し、この口座でデジタル通貨を保有したり、利用することになる。
DCJPYは当面、民間銀行が債務として発行することを前提とする。かかる債務の位置づけは「預金」で、利用できる場所は日本国内が想定されている。
DCJPYは日本におけるデジタル通貨の実用性を検討する団体「デジタル通貨フォーラム(3メガバンクや小売、運輸、情報通信など広範な分野にわたる70社以上の企業や銀行、自治体、団体、オブザーバーとしての関係省庁・中央銀行などが参加)」が開発を担い、デジタル通貨が持つ機能や法的性質やシステムの構成、提供する価値などの検討を進め、その実用化に向けて取り組んでいる。
「共通領域」「付加領域」 DCJPYを構成する2つの領域
デジタル通貨DCJPYでは、利用者は民間銀行に保有する預金口座から預金を引き落とす。それと同額のDCJPYを利用者がデジタル通貨プラットフォーム上に開設した口座に記帳して発行される。
また、同通貨の発行や送金、償却するためには「共通領域」「付加領域」と呼ばれる2つの領域が設定され、双方を連携させる仕組みとなるのが「二層構造デジタル通貨プラットフォーム」だ。
DCJPYは、共通領域では直接移転が指図され、付加領域では移転の指図を受け、その指図が自動的に共通領域に伝達されるという方法がある。これにより、ある利用者の口座から別の利用者の口座に残高が移転する形で送金される。
共通領域とは、DCJPYの残高を記録する元帳の管理やそれを付随する業務を実施する機能を有する。また、民間銀行がデジタル通貨を発行する際、各銀行のシステムと連携する仕組みを提供する領域となる。
一方、付加領域とは、さまざまなニーズに応じたプログラムの書き込みを可能とする領域だ。たとえば、DCJPYをモノの流れとリンクさせた形で支払決済に用いることも可能だという。
二層構造デジタル通貨プラットフォームを導入することで、モノやサービス、デジタル資産などの移転と連動するDCJPYの移転について、契約の自動化によるスマートコントラクトで実現可能になる。また、共通領域と付加領域と連動させると、異なる付加領域間でもデジタル通貨を容易に移転できるという。
たとえば、電力売買プラットフォームといった専用のプラットフォームを介した発電者と需要家におけるP2P(Peer to Peer)取引や、ST(Security Token)取引などの複数の経済圏が存在する場合が想定される。
従来は、それぞれの取引ごとに銀行間送金などの手段で支払う必要があった。デジタル通貨フォーラムが構想するプラットフォームでは、たとえば、電力売買による入手したDCJPYをSTの購入に利用できるなど、プラットフォーム内で柔軟に利用可能になるという。
こうしたプラットフォームを構築する上では、共通領域での残高と付加価値領域での残高がリアルタイムに連動することが重要だ。それを実現する有望な技術としては、ブロックチェーンや分散台帳技術(以下、DLT)が挙げられる。
【次ページ】デジタル通貨DCJPYのユーザーインタフェース例