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  • 2021/07/20

なぜ「クラウドネイティブ」が必須? 銀行に必要な“真のデジタル化”と協業戦略とは

連載:小俣修一のデジタルバンキング・マンスリーレポート

欧米だけでなく日本でも5月に「三菱UFJ銀行とドコモ」、6月に「住信SBIネット銀行とヤマダ電機」「みんなの銀行とピクシブ、パーソルテンプスタッフ」など銀行と顧客基盤を持つサービス企業との提携が報道されている。こうした「協業関係」はなぜ進み、どの点に勘所があるのか。6月のデジタルバンキング関連のニュースからトレンドを読み解いていきたい。

小俣 修一

小俣 修一

1979年、慶大大学院修了。 地域金融機関の企画部門に勤務後、コンパックコンピュータ、NTTソフトウェアを経て2005年アカマイ・テクノロジーズ社長、米国本社ヴァイスプレジデント、日本法人会長を歴任。16年ニッキン特別顧問、20年12月みんなの銀行社外取締役に就任。欧米のデジタル・バンキングの事情に精通。国内の金融機関からデジタル戦略をテーマに、数多くセミナー依頼を受ける。

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デジタルバンクの最新動向と日本の金融機関の打ち手とは
(Photo/Getty Images)

2021年6月の「デジタルバンキング」関連の海外ニュース

 さっそくだが、2021年6月の海外の「デジタルバンキング」関連ニュース(表1)で筆者が注目したものをみていこう。

 6月はBaaS(Banking as a Service)関連のニュースが多かった。欧米だけでなく日本でも5月の三菱UFJ銀行とドコモの提携報道に続き、6月21日に住信SBIネット銀行とヤマダ電機が「ヤマダNEOBANK」で提携、そして同日に、みんなの銀行が国内最大級のクリエイター向けSNSであるピクシブと、6月23日にはパーソナルテンプスタッフとのBaaSに関係する発表があった。

 ネット経済が実体を伴う経済活動である実物経済より大きな存在となり、コロナ禍を経て「顧客」側が明らかに経済の主導権を握るようになった。そして多くの識者が指摘しているように、金融サービスも「顧客」を中心に据えてデジタル変革を考えるべきなのである。つまり、顧客のニーズ・体験・カスタマージャーニーに焦点を合わせた新たな金融サービスを創り出す必要がある。

 世の中の金融を含めたあらゆるサービスの「システム的つながり」はオンプレミスからクラウドへシフトして、場所や時間、組織などをますます境界を意識しない世界へ拡げ始めている。「チャネルよりアクセス」を考えなければならなくなっているのだ。

 こうした環境下での「決済のデジタル化」は、支払や決済に伴うデータの活用などを通じてeコマースやシェアリング・エコノミー、「as a Service」などの発展を促し、経済のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支える存在になった。

 地域金融機関の現行システムは、どれだけ「ネット経済でのバリューチェーンにも対応した金融サービス」が提供できるのだろうか? 前回に引き続き「BaaS(Banking as a Service)」と「埋込型金融サービス(Embedded Finance)」の話題について、さらに踏み込んで解説する。


表1:2021年6月に筆者が注目した「デジタルバンキング」関連ニュース
日付 ニュース内容
6月2日 Bankable、Aion BankおよびVodenoとBaaSで3年の協業契約締結
Revolut、会計ソフトのClear booksがそのマーケットプレイスへ参加
6月3日 新韓銀行、安価で速い海外送金としてWise(TransferWise)を採用
ジャゴ銀行(Bank Jago)、クラウド・コアバンキングシステムにGCP とMAMBUを選択
Rapyd、BaaSによるグローバルな商取引での支払・送金戦略を公表
6月7日 HSBC、新しい開発者向けポータルでAPI suiteを公表
Morgan Stanley、クラウドの協業先としてマイクロソフトと契約
6月8日 Uno Bank・Tonik、フィリピンのデジタルバンク免許を取得
6月9日 支払い・銀行口座インフラ企業Galileo、Google Cloudの金融サービス事業責任者Derek White氏がCEO就任
6月10日 バーゼル委員会、銀行の仮想通貨保有規制として資本の積増し要求
6月11日 LINE BKインドネシア、現地KEBハナ銀行とデジタルバンク開業
6月14日 NetBank、フィリピンでBaaS-basedのデジタルバンクが開業
6月17日 IBM Cloud、金融向けエコシステム・パートナーを100社以上結集
Sunway、バンコック銀行と共にマレーシアのデジタルバンク銀行免許を申請
6月18日 MapleMark Bank、Raisinの預金マーケットプレイスへ米初の銀行として参入
6月20日 中国工商銀行・中国農業銀行、ATMでデジタル人民元との両替を開始
6月22日 Commonwealth Bank、エンジニア600名以上の大規模採用を加速
6月24日 SWIFT(国際銀行間通信協会)、国際送金の流れを強化するために新しい基盤を発表。大手6行が支持
(出典:筆者作成)


BaaSとデジタル基盤が果たすDX上の役割とは

 クリス・スキナー(Chris Skinner)氏は最近、デジタルバンキングを実現するためのデジタル基盤はアプリケーションやサービスをクラウドで提供する「Cloud-based(クラウドベースド)」ではなくインフラを含めクラウドを徹底的に活用する「Cloud-native(クラウドネイティブ)」でなければならないと指摘している。

 「どこでも店舗(branch anywhere)」やBaaSによる「埋込型金融サービス(embedded finance)」といった真のデジタル化にはクラウドネイティブが必要であるという要旨の発言だ(参照: Chris Skinner氏の2020年10月26日、2021年1月22日、6月15日のブログ)。

 先日、筆者はある会合でBaaSによる埋込型金融サービス(embedded finance)に関してこのChris Skinner氏の発言を体験することができた。前回説明したが、BaaSには利用企業となる「ブランド」と裏方となる「銀行免許保持行」があり、場合によって「イネーブラー」と呼ばれる金融サービス関連システム提供業者(BaaS基盤とAPIの提供業者)が介在している。

 この会合では欧州の「イネーブラー」と地域金融機関12行の間で「銀行免許保持行」に期待される条件について、質疑応答があった。

 日本では、フィンテック企業が参照系APIで各銀行と結び、PFMなどのアグリゲーション・サービスを提供し始めた時、NTTデータや日本IBMといった共同センター経由でAPI接続するという「新しいチャネルを増やす形」で解決をした地域金融機関が多かった。

 しかし、これでは「イネーブラー」の立場も狙う現行の共同センター運営者との競合が予想されるし、グローバルに展開する「イネーブラー」の求めるAPI要求へ金融機関自ら柔軟に応えることができず、特に海外の「イネーブラー」からは選択されにくいことが分かったのだ。つまり、インターネット・バンキング口座を想定した共同センター経由のAPI接続では、グローバルな「イネーブラー」とは良い関係を築けないということである。

 「イネーブラー」との協業によって、新たな役務収益や新たな地域概念を期待することはできるだろうが、「イネーブラー」経由では新たな顧客接点は期待できない。しかし、自らAPIを創り出す能力を持てば、独自の銀行業務処理といった観点でのAPI粒度とマイクロサービスの調整により戦略的なAPIを提供することで、自身のマーケットプレイスとかエコシステムも形成でき、自ら新たな顧客接点を創り出すことが可能となる。

 これからは、「イネーブラー」を通じた市場との幅広い付き合いと共に独自APIによる戦略的エコシステム構築が必要である。新たな「顧客接点」「役務収益」「地域概念」の構築には、「Cloud-native」なデジタル基盤とアジャイルな開発体制を自ら持ち、独自にAPIを開発・提示できる能力が要求されることが示された会合であった。

 今までの延長線として「現行システムに『API対応』という新たなチャネルを増やすことで、スマホ・アプリの対応や共同センター経由でのPFM対応も行うことができ、デジタル化対応は終えた」と考えている金融機関にとっては、パラダイムシフトの現実とデジタルバンキングの本質を知るショックな出来事だっただろうと思う。

 必要なのは、今までの延長線上に飾り付けた「デジタル風味」ではなく、真のデジタル化を理解し、そのDNAを持つリーダーにより率いられる行員によって、自ら最新の技術で銀行ビジネスそのものを再定義する「デジタル変革」なのだ。

銀行から見たBaaSのメリット
  顧客接点 役務収益 地域概念 備考
金融機関由来のBaaS 戦略的エコシステム形成
フィンテック由来のBaaS × 幅広いネットでのつながり
(出典:筆者作成)


分野別BaaS基盤マップ

画像
埋込型金融サービス(Embedded Finance)提供分野別BaaS基盤マップ
(7/26に最新版に更新)
(出典:筆者作成)

 今やペイメント/カード/銀行口座/融資/保険/証券といったそれぞれの分野への埋込型金融サービス(Embedded Finance)に特徴と戦略を持つフィンテック企業由来の「イネーブラー」が、筆者が認識しているだけで70社以上もグローバルに活躍し始めている。

 そして、BaaS市場では金融機関由来のBaaS基盤とフィンテック企業由来のBaaS基盤双方が、フィンテック企業との協業関係を付加価値としてBaaS基盤に取り込み、一般企業へ埋込型金融サービスを提供しようとしのぎを削っている(以下詳細)。

 日本でも、銀行から一般企業への個別のBaaS提供だけでなく、独自APIによるフィンテック企業との協業関係を付加価値として、自らのマーケットプレイスやエコシステムを形成し、一般企業への埋込型金融サービスを戦略的に提供する銀行が月を重ねるごとに明らかになってくるのだろう。

金融機関由来のBaaS基盤提供元例
Fidor Bank、Starling Bank、Solarisbank、The Bancorp、Green Dot、Cross River、BankMobile、Radius Bank、Hatch Bank、Westpac、Standard Chartered
フィンテック企業由来のBaaS基盤提供元例
Railsbank、Bankable、Dozens、Adyen、Stripe、Plaid、Token、Q2(旧Cambr)、Galileo、Marqeta、Synapse、Bond、Unit

【次ページ】スターリング銀行「協業関係」の歴史から学べることとは

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