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2020年も、金融関連で多くの法改正が行われる予定で、フィンテックに関わるものも少なくない。フィンテックに携わる者は、どの法令を注視するべきなのか。ここでは、2020年1月にFintech協会が主催した「2020年Fintech業界展望」記者向け勉強会で行われた、堀天子氏(Fintech協会 理事 / 森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士)による講演「2020年に注目すべきFintech法改正」の内容を紹介する。
監修:森・濱田松本法律事務所 堀 天子 執筆:吉澤 亨史
監修:森・濱田松本法律事務所 堀 天子 執筆:吉澤 亨史
決済法制の見直し(資金決済法の改正)
「2020年に注目すべきフィンテック法改正」として堀氏が一番に挙げたのは、決済法制の見直し(資金決済法の改正)であった。
これは、金融審議会で設置された「金融制度スタディ・グループ」により2019年12月に公表された報告によるもので、早くも2020年の春に通常国会へ法案として提出される予定。
金融庁は毎年法改正を行っており、通常国会で成立すれば翌年に施行されるため、非常にスピーディに進んでいく。
2020年施行の決済法制見直しで重要な点として、資金移動業者に関する改正を挙げた。
現行法では、まずは銀行以外の事業者を送金を担うことができるようにしたが、最初はスモールスタートということで100万円以下の少額の送金のみ扱えるようになっている。これが送金額に応じた規制に変更される。
具体的には、類型ごとに分けることになる。
第1類型は、高額送金まで取り扱うことができる事業者(認可制)。第2類型は現行規制を前提に事業を行う事業者(登録制)で、ここは基本的に変わらない。第3類型は、少額の送金を取り扱う事業者(登録制)であり、一部規制緩和が行われる。
第1類型は、上限がなく送金ができるものの、利用者資金の滞留が原則禁止されるという条件がつく。
送金後すぐに引き出されることが必要で、資金移動業者が銀行のように預金ができるわけではないことが大前提となる。
ただし、複数国間のクロスボーダーやBtoBなどの取引で高額送金ができるようになるのは、非常に画期的であり、デジタルバンキングの文脈においても大事であるとした。
決済法制ではこのほか、前払式支払手段について「IC型」や「サーバー型」に該当する第三者型の前払式支払手段のうち、譲渡可能なチャージ残高に上限を設定することや、不自然な取引を禁じた体制整備を求めている。
また、無権限取引の対応として、利用者に対する情報提供事項に個社の対応方針を追加する必要がある。
収納代行についても、割り勘アプリのような送金と変わらない業態については、資金移動業の対象であると明確化される。ただし、取引の安全性を保証するなど仲介を担う「エスクローサービス」などについては、引き続き制度整備の対象外としている。
資金決済法の改正、実務への影響は?
堀氏は決済法制の改正による実務への影響として、「高額送金分野に資金移動業者の参入が可能になることは非常に大きなポイント」であると指摘した。
現在は消費者向けの送金サービスがほとんである既存の資金移動業者(銀行以外の為替取引をサービスとして扱う事業者)が、今後ビジネス向けの送金サービスをメニューに追加することが可能になるという。
法人間決済が可能になることは「ウエルカムな改正」であるとした。ただし、資金の滞留ができないため、銀行などと連携したサービスが基本になると思われる。
第2類型、第3類型は現行のままとなるが、資産保全方法の緩和や選択の増加が期待される。
収納代行や支払代行サービスについては、規制の見直しによって考え方が一部変わる部分があるため、サービスの点検が必要であるとした。
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