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消費増税に対応したポイント還元策にキャッシュレス決済が盛り込まれたことで、キャッシュレス決済を行う消費者が増えている。ヤフーとLINEの統合でスマホ決済サービスの有力な事業者が誕生することも、キャッシュレス推進の追い風となるだろう。2020年はキャッシュレスが一気に進展するかもしれない。
ポイント還元策は予想通りの展開に
2019年10月の消費増税に際して、政府は景気対策としてポイント還元策を実施した。小規模店舗において、クレジットカードや電子マネー(Suica、楽天Edyなど)、QRコード決済(PayPay、LINE Pay)といったキャッシュレス決済を利用すると、代金の5%分がポイントとして還元される。
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この施策はキャッシュレス推進と中小企業対策を同時に進めるという意図があり、内容が複雑であることから、一部から効果を疑問視する声が上がっていた。
中小零細店舗の場合、キャッシュレス決済に対応していないところも多く、一部を除いて消費者も普段からあまり行き慣れていないので、同じ買い物をするのであれば、コンビニで還元を受けた方が良いとの判断に傾きがちだ(コンビニなど大手チェーンについては、還元率は5%ではなく2%に設定されているが、還元自体は受けることができる)。
キャッシュレス決済を行わないとポイントは還元されないので、(どの店舗で決済するのかはともかく)電子マネーやQRコード決済を普及させる効果はそれになりに大きいと考えられる。
関係者の大方の予想は、QRコード決済の利用者は増加するものの、サービスを利用するのはもっぱらコンビニなど大手チェーンになるというものだったが、現実はほぼ予想通りに推移している。
日本経済新聞社が11月に実施した調査によると、ポイント還元策に伴ってキャッシュレス決済を新しく始めたり、利用頻度を増やした人は約40%となっている。基本的にキャッシュレス決済が増えた格好だが、主な利用場所はコンビニとスーパーが8割以上を占めていた。
中小零細店舗を支援するという政府の政策目標とはかなりのズレがあるが、ポイント還元策がキャッシュレス促進の1つの材料になったのはほぼ間違いない。政府の還元策は2020年6月まで実施される予定だが、少なくともポイント還元期間中は、消費者は積極的にキャッシュレスを利用するだろうし、一度、利用に慣れてしまえば、わざわざ現金に戻す人は少ないはずだ。
ヤフーとLINEの経営統合でQRコード決済が急増する?
この動きをさらに後押しすると考えられているのがヤフーとLINEの統合である。ヤフーを運営するZホールディングス(ZHD)とLINEは2019年11月18日、経営統合する方針を明らかにした。
ヤフーはソフトバンクと共同で、QRコード決済サービスPayPayのサービスを提供しているが、PayPayは「100億円相当あげちゃうキャンペーン」など大胆な販促活動を行っている。ソフトバンクによると11月時点におけるPayPayの登録者数は2000万人を突破しており、8月との比較で2倍に拡大した。ここ3カ月は毎月平均300万人近くのペースで登録者が増えている。
一方、LINE Payは単純な登録ユーザー数こそ5000万人を突破しているが、本人確認が取れている利用者数は500万人となっており、PayPayに水をあけられている。
QRコード決済についてはしっかりとしたシェア調査が行われている段階ではないが、今のところPayPayが独走しているのはほぼ間違いなく、それにLINE Payが続くという図式になっている。スマホ決済における有力事業者が統合するので、今後のスマホ決済市場はヤフー・LINE連合が主導権を握る可能性が高い。
ヤフーは今後、PayPayについてポータルサイト「ヤフー」との連携を進め、ヤフーショッピングやヤフオクなどでの利用を促進していくだろう。LINEも8000万人という顧客基盤をフル活用して、利用者の獲得を強化する可能性が高い。さらに言えばヤフーとLINEの背後には、携帯電話事業者のソフトバンクが控えているので、その気になれば、ソフトバンクの販売網も駆使できるはずだ。
今後の日本における決済市場は、ソフトバンクグループが主導するQRコード決済がシェアを伸ばす形でキャッシュレス利用率が上昇すると考えられる。
では、ポイント還元策の実施やQRコード決済の普及で、一気に日本のキャッシュレス化が進むのかというと、それは微妙な状況である。
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