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  • 2019/08/21 掲載

楽天証券はどこへ向かうのか? 楠社長に聞いた「フルデジタル」化への取り組み

FinTech Journal創刊記念インタビュー

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ITエンジニア出身という楽天証券 代表取締役社長 楠 雄治 氏は「ネット証券を開始してからの20年は波乱万丈だった」と振り返る。ネット証券では日々の売買、すなわちトレーディングビジネスが主軸であったために、常にマーケットの波に左右されてきたからだ。しかし今、投資の世界では、“サテライトマネー”から“コアマネー”へのマインドシフトが起こっているのだという。その詳細とともに、同氏が描く楽天証券の未来像、未来に向けた取り組みについても聞いた。
聞き手・構成:編集部 山田 竜司
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楽天証券 代表取締役社長 楠 雄治 氏


マーケットの波に振られてきたネット証券の20年

 ネット証券の世界に限定して話をします。我々は1999年の6月にサービスを開始して、今年ちょうど20年です。この20年は波乱万丈でした。

 楽天証券は、1999年10月1日の株式委託手数料自由化、そこを目指して立ち上がった企業の1つです。そこに“ITバブル”の風が吹いて、年末にかけて非常に盛り上がり、素晴らしいスタートを切ることができました。

 ところが、2000年に入ってITバブルが崩壊しました。お客さまがなかなか入ってきづらくなって、ネット証券会社はどこも非常に苦労していました。

 そうした中でなぜ救われたのかというと、当時の小泉政権、竹中金融担当大臣による“りそなショック”対応です。経営難にあえいでいたりそな銀行に公的資金が投入され、救済されました。あの一件で、日本は経営難になった金融機関を救済するのだという安心感が広がり、マーケットが復活。ネット証券も次々黒字転換し、よみがえりました。

 しかし、今度は同じ小泉政権の下で郵政選挙が行われ、ライブドア事件をピークにして、また下がっていきます。これが2006年の1月です。

 そこへ2008年、リーマンショックがあってさらに悪くなり、2011年東日本大震災が起こってさらに悪くなり、2012年11月12月に安倍政権が誕生するまでは、正直どん底でした。

 ある程度口座は増えてはいたのですが業績は非常に悪く、これは本当に赤字転落してしまうのではないかと気をもんだものです。ですから、マーケットの波に左右されてきたわけです。

 それはひとえに、ネット証券というものが、株やFXなどの売買によるトレーディングビジネスに依存してきたという点があります。日本では、個人の証券取引というと短期売買を志向する傾向にあり、マーケットが悪くなると引いていくというのが大半でした。

 しかし、ここ数年は、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などといった制度が整い、個人のお客さまの中にも、ネット証券で資産形成のために長期で投資していこうという機運が生まれてきました。

 さらにそうしたニーズに合わせ、我々も投資信託関連のサービスを拡充したり、IFA(金融商品仲介業)と提携したサービスをもとにアドバイザリーチャネルを立ち上げたりして、個人のお客さまの資産形成をサポートする体制を整えてきました。2017年には、いよいよ投資の裾野を広げたいという思いで、「ポイント投資」をスタートしました。


“コアマネー”シフトを生み出したポイント投資

 ポイント投資とは、楽天スーパーポイントのようなポイントをそのまま投資に使えるというものです。これが画期的だったのは、マーケットを気にして投資する方々だけではなく、一般のお客さまにアプローチできた点です。

 楽天でいろいろな買い物をして獲得したポイントがそのまま使えて、資産を増やせる可能性もある。今まで使っていたインターネットサービスの延長線上、まさに生活の文脈の中ですっと入ってきていただけたように思います。

 これは、非常に大きなことで、従来ネット証券で主流だったトレーディングビジネス、すなわち一攫千金を狙うような資金(=サテライトマネー)を取り扱うビジネスから、将来に備えて銀行に預けていたような安定的な資金(=コアマネー)の一部を長期投資へ回すような動きを促したのではないかと感じています。

【次ページ】楽天証券はこれからどこへ向かうのか
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