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- 2019/08/14 掲載
楽天証券 楠 雄治社長:フィンテックの本質が「UXの進化」にあると言える理由
FinTech Journal創刊記念インタビュー
フィンテックとはUXの進化。火をつけたのはスマートフォン
金融とITの融合は、フィンテックと言うまでもなく、ネット証券である我々にとっては当然のことです。もう20年前からこの2つを融合させ、従来、対面だったところから全部オンラインに載せ、お客さまを獲得してサービスを提供する、という事業モデルを行ってきました。ただ金融の領域は、お客さまの立場に立ったサービスや利便性の提供を後回しにしてきた部分があったと思います。最近でいうと、UX(User Experience、ユーザーエクスペリエンス)がそうです。
金融というのはなぜか個人投資家であるお客さまに対して、上から目線でサービスを提供するという側面があったのも事実です。
そうしたところへ、技術の発展によって、「もっと良いサービスが提供できる」「ビジネスモデルを変えるサービスも作れる」と、新規参入組がUXを洗練させた形で参入してきた構図こそが昨今のフィンテックブームであると私は見ています。
特に、スマートフォンはこの5年から10年にかけての進化が著しく、フィンテックの隆盛もスマホが大きなきっかけになっています。1人1台を手元に持つようになって、これを前提に、新しいカテゴリー、革新的なアプローチのビジネスやサービスが出てきました。
原則を守ってさえいれば、実は金融業界には自由がある?
金融業界は規制に縛られてきたために進化できなかったという意見もありますが、私はそれほどではないと考えています。というのも、金融庁は、実はすごく時代に敏感な省庁で、新しい動きをどんどん取り込んでいます。たとえば、顧客に出す文書の電子化などは2000年代の前半にはもう解決しています。
ただ日本の場合は、明文化されていないグレーゾーンが結構多く、そこをあれこれ確認しながら慎重に進めなくてはいけない点はあります。
やはり実務になると法令を非常に細かく解釈しなければならず、そのグレーゾーンの幅広さというのは、ある意味ネックかもしれません。
もちろん、証券業で最優先に考えるべきことは投資家保護です。投資家も含めた個人のお客さまに迷惑をかけてはいけない、というのは正しいことだと思います。
もう一つは、システム障害に関して、非常に厳しいという点もあります。この点について、日本はたぶん、世界一厳しく目を光らせていると思います。
しかし、こうした投資家保護やシステム障害といった基本的な原則をきちんと守っていれば、実はかなり自由なことができる業界でもあるのです。
もちろん、グレーゾーンはしっかり確認してクリアにした上で、常に新しいことに挑戦してみる。企業がそういった攻めの体制を取れるかどうかで、がんじがらめと感じるか、いろいろなことができると感じるかという決定的な違いが出てくるのではないでしょうか。
【次ページ】金融庁の報告書でiDeCo・NISAへの申し込みは約2倍増
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